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「ああいう咄嗟のセリフは上手いな。」
ぼそっと木原が言う。まあね、と上総は笑った。
「ああいうのは得意なんだよ。
しゃべって相手を煙に巻く。信頼させる、油断させる。
・・・ま、君には通じなかったけれどね。」
そういってまた笑った。木原は何も答えなかった。
ただ彼は、黙って上総の後を、手を引かれるままについていく。
ふと上総はあらためて薄明かりの街灯の下で木原を見た。
私服の彼は、いつもよりやわらいかい雰囲気に見える。
長袖のシャツの上に柔らかい青色のセーターを着込んでいる。そしてジーパン。
それだけじゃちょっと山には、きついかも。
呼び出される前に、風呂でも入っていたのだろうか。
髪が洗いたての臭いを運んでくる。
入り込んでくる雪が髪を静かに静かに再び濡らしている。
いつもエネルギーの塊のようになってつき進んで来る彼は、今同一人物とは思えない程、大人しげに上総に手を握られていた。
木原の視線に気付いたのか、上総は顔をあげた。
「何を見ている。」
「・・・・どうして俺についてきたの木原君。」
「お前が来いと言ったからだ。」
「そうだけれども、これが他の人だったら?」
「知るか。今は、お前が来いといったから来た。
・・それだけだ。」
そう、それだけなんだ。上総はくりかえした。
やっぱり君、僕のことそんな風に思っているんだよね。
ふいに手を引かれた。
「おい、何を考えている。」
「いや・・・。ちょっと歩くけれど、すぐ着くからね。
もう少し僕に付き合ってくれるかな、木原君。」
その時、上総が振向いたのなら思わず足を止めてしまっただろう。そこには、非常に切ないともとれるような視線を投げかけている木原の顔があったから。
雪が静かに降っている。
音を消して無音の世界を作り、山をただただ白く塗りつぶしている。
吐く息が白い。それにしても音がない。みな吸い込まれる。
みな、雪に吸い込まれていく。
そんな中を、ギュッギュッと、手を繋いで進んで行く。
ただただ無音の世界に入り込んで行くようだった。
ぼそっと木原が言う。まあね、と上総は笑った。
「ああいうのは得意なんだよ。
しゃべって相手を煙に巻く。信頼させる、油断させる。
・・・ま、君には通じなかったけれどね。」
そういってまた笑った。木原は何も答えなかった。
ただ彼は、黙って上総の後を、手を引かれるままについていく。
ふと上総はあらためて薄明かりの街灯の下で木原を見た。
私服の彼は、いつもよりやわらいかい雰囲気に見える。
長袖のシャツの上に柔らかい青色のセーターを着込んでいる。そしてジーパン。
それだけじゃちょっと山には、きついかも。
呼び出される前に、風呂でも入っていたのだろうか。
髪が洗いたての臭いを運んでくる。
入り込んでくる雪が髪を静かに静かに再び濡らしている。
いつもエネルギーの塊のようになってつき進んで来る彼は、今同一人物とは思えない程、大人しげに上総に手を握られていた。
木原の視線に気付いたのか、上総は顔をあげた。
「何を見ている。」
「・・・・どうして俺についてきたの木原君。」
「お前が来いと言ったからだ。」
「そうだけれども、これが他の人だったら?」
「知るか。今は、お前が来いといったから来た。
・・それだけだ。」
そう、それだけなんだ。上総はくりかえした。
やっぱり君、僕のことそんな風に思っているんだよね。
ふいに手を引かれた。
「おい、何を考えている。」
「いや・・・。ちょっと歩くけれど、すぐ着くからね。
もう少し僕に付き合ってくれるかな、木原君。」
その時、上総が振向いたのなら思わず足を止めてしまっただろう。そこには、非常に切ないともとれるような視線を投げかけている木原の顔があったから。
雪が静かに降っている。
音を消して無音の世界を作り、山をただただ白く塗りつぶしている。
吐く息が白い。それにしても音がない。みな吸い込まれる。
みな、雪に吸い込まれていく。
そんな中を、ギュッギュッと、手を繋いで進んで行く。
ただただ無音の世界に入り込んで行くようだった。
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