生者の証明

桃色うさぎ

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 竹刀袋から、一本の太刀を取出して木原の方へ放った。
 それを受けとめながら、木原はただただ無表情にその太刀をぼうっと見つめていた。 
 上総は袋から短刀を取出した。
 それは祖父が自殺した時に使ったものだった。  
 ”切腹で死ぬ” 何もこんな死に方しなくてもいいかもしれない。
 でも、上総は、あの日からこのカタチで死ぬことに固執していた。
 今、自分の罪をあがなうには、このカタチでなければいけないと心底信じていた。
 今なら分る。
 祖父が腹を切ったのは、昔流に乗っ取っただけではなく、痛みをより感じるこの方法に、自分達家族への謝罪が込められていたのではなかったんだろうか。 
 そして自分自身への戒めではなかったのか。 
 
 木原をここに連れてきたのは、こんな事を頼めるのは彼しか思い浮かばなかったのもある。
 ・・・それと、やっぱり上総は最後の時、木原に側にいて欲しかった。
 その絶対的な力を、安堵感を与えて欲しかった。

「いいね、君は何も罪の意識を感じることなんてない。
 君は俺の苦痛をとり去る為に俺を助けるために、これからのコトをするんだ。
 俺のポケットの遺書にちゃんとそう書いてある。
 君が俺を見届けてくれ。
 君の手で俺を終りにするんだ。」

 そしてくるりと上総は木原から背中を向けて制服の上着を脱いだ。
 その上にも、はらはらと雪が降り落ちる。

 まるではじめから白い服だったかのようだ。
 などと考えながら、さらに腹を出すためにボタンを外す。
 一瞬、祖父の乱れた着衣が頭を掠める。
 それを振り払いながら俺は短刀に手をかけた。

 刹那。

 ものすごい衝撃を頬に感じた。
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