1 / 8
悪役令嬢 御神本舞華
しおりを挟む
私立春園学園。
この学園には有名人がいる。
学園に通う一人の女子生徒、その名も御神本舞華。
なぜ彼女が有名なのか。
百人が百人振り向くような美少女だから?
確かに美少女だ。テレビでもめったに見かけないようなレベルの。白磁のような穢れを知らぬ透き通った白い肌、背中まで届く艶やかな黒髪は陽の光を反射してキラキラと輝いて見える。そしてまるで宝石のような煌めきをもつ双眸。美少女というのはこの少女のためにあるのではないかとさえ思えるほどのその容姿。
だが……それはほんの一因に過ぎない。
それでは彼女の家が由緒正しい名家であり、現代でも世界有数の企業であり、その一族の一人娘であるからだろうか……?
それさえも一因にしかならない。
そんな、ひとつでもあれば十分に超勝ち組認定されるような属性が霞んで見えるほどの圧倒的な属性が彼女にはあった。
学園だけではない、彼女はその属性を持って周辺地域で知らぬ者はいないほどの知名度を得たのだ。
それは上であげた属性……それらを全て消し去ってしまうほどの圧倒的なものだった。
…………悪い意味で。
○ ○ ○
春園学園、その正門前。
始業十五分前。
いつもきっちりその時間にそれはやってくる。
生徒十人は並んで通れる正門、そこに収まらないほどの長さをもつ漫画でしか見たことがないような真っ黒なリムジン。
校門前に停車したリムジンの運転席から燕尾服を着た初老の白髪の男性が降りてきて下駄箱までレッドカーペットを敷き詰める。
そして、後部座席のドアを開け頭を下げる。
そこから降り立つ美貌の少女。
そう、彼女が御神本舞華その人である。
あとに続くように彼女の荷物を持ち、もう一人の少女が降りてきた。
こちらも美少女ではあるのだが触れれば切られる……正にそんな雰囲気を持つ少女だ。
彼女は御神本舞華の従妹であり、従者でもある。
構内で御神本舞華の世話をするのは彼女なのだ。
どんな権力を使ったのか、二人は今までの人生で別のクラスになったことが無いらしい。
二人がリムジンから降り、下駄箱に向かう。
運転手の男性はリムジンのドアを閉め、彼女の歩く方向に頭を下げ続ける。
毎朝の光景だった。
「……靴が汚れてしまったわね」
上履きに履き替える前に御神本舞華が呟いた。
「ねえ、貴方」
すぐ近くで朝練が終わり、上履きに履き替えようとしていたサッカー部のエースで女子からの人気も高い青空君に声をかけた。
「な、なんでしょう……か?」
青空君は怯えたように返事を返した。
「靴が汚れてしまったの」
と、穏やかに告げる御神本舞華。
「じゃ、じゃあ何か拭くものを……」
青空君はポケットやカバンの中をまさぐった。
「…………こ、これでいいかな?」
部活用のカバンからスポーツタオルを取り出した。
「ふふふ、貴方の汗臭いそれでは私の靴がさらに汚れてしまうわ」
御神本舞華は可笑しそうに口元を隠し笑った。
「え、え~……っと…………」
青空君は困惑する。
そんな彼に笑顔を引っ込めた彼女は言い放った。
「そこに寝転びなさい」
そこに、その顔に冗談の色は無かった。
本気の声音だった。
「………………はい」
青空君は抵抗することなくうつ伏せに寝転がった。
「はぁ~……朝から憂鬱ね」
寝転がった青空君の背中、その制服で靴の裏の汚れを拭った御神本舞華は陰鬱そうに呟いたのだった。
そう、彼女……御神本舞華は悪役令嬢だったのだ。
全ての良い属性を消し去るほどの。
この学園には有名人がいる。
学園に通う一人の女子生徒、その名も御神本舞華。
なぜ彼女が有名なのか。
百人が百人振り向くような美少女だから?
確かに美少女だ。テレビでもめったに見かけないようなレベルの。白磁のような穢れを知らぬ透き通った白い肌、背中まで届く艶やかな黒髪は陽の光を反射してキラキラと輝いて見える。そしてまるで宝石のような煌めきをもつ双眸。美少女というのはこの少女のためにあるのではないかとさえ思えるほどのその容姿。
だが……それはほんの一因に過ぎない。
それでは彼女の家が由緒正しい名家であり、現代でも世界有数の企業であり、その一族の一人娘であるからだろうか……?
それさえも一因にしかならない。
そんな、ひとつでもあれば十分に超勝ち組認定されるような属性が霞んで見えるほどの圧倒的な属性が彼女にはあった。
学園だけではない、彼女はその属性を持って周辺地域で知らぬ者はいないほどの知名度を得たのだ。
それは上であげた属性……それらを全て消し去ってしまうほどの圧倒的なものだった。
…………悪い意味で。
○ ○ ○
春園学園、その正門前。
始業十五分前。
いつもきっちりその時間にそれはやってくる。
生徒十人は並んで通れる正門、そこに収まらないほどの長さをもつ漫画でしか見たことがないような真っ黒なリムジン。
校門前に停車したリムジンの運転席から燕尾服を着た初老の白髪の男性が降りてきて下駄箱までレッドカーペットを敷き詰める。
そして、後部座席のドアを開け頭を下げる。
そこから降り立つ美貌の少女。
そう、彼女が御神本舞華その人である。
あとに続くように彼女の荷物を持ち、もう一人の少女が降りてきた。
こちらも美少女ではあるのだが触れれば切られる……正にそんな雰囲気を持つ少女だ。
彼女は御神本舞華の従妹であり、従者でもある。
構内で御神本舞華の世話をするのは彼女なのだ。
どんな権力を使ったのか、二人は今までの人生で別のクラスになったことが無いらしい。
二人がリムジンから降り、下駄箱に向かう。
運転手の男性はリムジンのドアを閉め、彼女の歩く方向に頭を下げ続ける。
毎朝の光景だった。
「……靴が汚れてしまったわね」
上履きに履き替える前に御神本舞華が呟いた。
「ねえ、貴方」
すぐ近くで朝練が終わり、上履きに履き替えようとしていたサッカー部のエースで女子からの人気も高い青空君に声をかけた。
「な、なんでしょう……か?」
青空君は怯えたように返事を返した。
「靴が汚れてしまったの」
と、穏やかに告げる御神本舞華。
「じゃ、じゃあ何か拭くものを……」
青空君はポケットやカバンの中をまさぐった。
「…………こ、これでいいかな?」
部活用のカバンからスポーツタオルを取り出した。
「ふふふ、貴方の汗臭いそれでは私の靴がさらに汚れてしまうわ」
御神本舞華は可笑しそうに口元を隠し笑った。
「え、え~……っと…………」
青空君は困惑する。
そんな彼に笑顔を引っ込めた彼女は言い放った。
「そこに寝転びなさい」
そこに、その顔に冗談の色は無かった。
本気の声音だった。
「………………はい」
青空君は抵抗することなくうつ伏せに寝転がった。
「はぁ~……朝から憂鬱ね」
寝転がった青空君の背中、その制服で靴の裏の汚れを拭った御神本舞華は陰鬱そうに呟いたのだった。
そう、彼女……御神本舞華は悪役令嬢だったのだ。
全ての良い属性を消し去るほどの。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる