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昼休みの出来事
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――――夏。
私立春園学園、入学式から数カ月が経ち、新入生のクラス内でもグループ分けが完全に決まり、人間関係も固まりつつあった。
その頃になれば学園生活もほとんどがルーティン化していた。
毎日同じ顔と顔を合わせ、同じような生活を送ることに生徒たちも完全に慣れていた。
そんな頃だ、事件が起こったのは。
それはある日の昼休みのことだった。
「神尾拓。神尾拓はいますか!?」
1年A組の扉が勢いよく開け放たれ、そんな声が響いた。
「………………」
教室内にいた全ての生徒たちが沈黙する。
それもそのはず。
その人物は悪役令嬢としてこの数カ月で知らぬもののいない存在となった御神本舞華、その人だったのだから。
さらにその場の人間を混乱させたのは、その可憐な口から発せられた人名だ。
神尾拓……彼と御神本舞華にどんな関連性があるのか。
クラスも違う……どころかそのクラスが配置されているのは二階と三階で階数も違う。どちらも部活動は行っていないし、神尾拓は人見知りではないが自分から積極的に人に話しかける性格ではないのはこのクラスの者全てが知っていることだった。
だからこの状況が理解できない……そんな心境だった。
「あ、あの……神尾君に何か御用……ですか?」
そんな中でも御神本舞華に声をかける勇気ある者がいた。
「あなたは?」
御神本がその少女を威圧感のある表情で見つめる。
「このクラスの学級委員の田中美洋です。お嬢様」
御神本の疑問に答えたのは彼女の後ろに控えていた従者の少女だった。
「そう。……あなたに用はないわ。神尾拓はどこ?」
御神本はもう彼女には興味がないといった顔で告げた。
「だ、だから! 神尾君に何の用かって聞いてるの!」
御神本に田中は気丈にも言い返した。
そんな彼女を御神本は冷酷な眼差しで見つめていた。
数秒睨みあいのような状況が続き……御神本が口を開こうとしたその時、
「神尾ならいないぞ。昼休みはいつもどこかに消えるからな」
言ったのは神尾拓の前の席に座る男子生徒だった。
あだ名はチャラ男。
別にチャラくはないのだがその見た目から入学三日目にはそのあだ名が定着してしまった可哀想な男子だ。
前の席ということもあり、彼は神尾拓と比較的親しくなっていた。
その彼が言った昼休みに消えるというのは本当の事だった。
誰も神尾拓がどこにいるのか知らないのだ。
ちなみにチャラ男自身は便所メシでもしていると思っていた。
「…………そう」
御神本舞華はつまらなそうに呟いて、
「ならこんなところに用はないわ」
そう言って教室から離れていった。
残された生徒たちは呆然と見送っていた。
「お騒がせして申し訳ありませんでした」
従者の女子生徒が入り口から全員に向かって頭を下げ御神本舞華を追いかけていった。
私立春園学園、入学式から数カ月が経ち、新入生のクラス内でもグループ分けが完全に決まり、人間関係も固まりつつあった。
その頃になれば学園生活もほとんどがルーティン化していた。
毎日同じ顔と顔を合わせ、同じような生活を送ることに生徒たちも完全に慣れていた。
そんな頃だ、事件が起こったのは。
それはある日の昼休みのことだった。
「神尾拓。神尾拓はいますか!?」
1年A組の扉が勢いよく開け放たれ、そんな声が響いた。
「………………」
教室内にいた全ての生徒たちが沈黙する。
それもそのはず。
その人物は悪役令嬢としてこの数カ月で知らぬもののいない存在となった御神本舞華、その人だったのだから。
さらにその場の人間を混乱させたのは、その可憐な口から発せられた人名だ。
神尾拓……彼と御神本舞華にどんな関連性があるのか。
クラスも違う……どころかそのクラスが配置されているのは二階と三階で階数も違う。どちらも部活動は行っていないし、神尾拓は人見知りではないが自分から積極的に人に話しかける性格ではないのはこのクラスの者全てが知っていることだった。
だからこの状況が理解できない……そんな心境だった。
「あ、あの……神尾君に何か御用……ですか?」
そんな中でも御神本舞華に声をかける勇気ある者がいた。
「あなたは?」
御神本がその少女を威圧感のある表情で見つめる。
「このクラスの学級委員の田中美洋です。お嬢様」
御神本の疑問に答えたのは彼女の後ろに控えていた従者の少女だった。
「そう。……あなたに用はないわ。神尾拓はどこ?」
御神本はもう彼女には興味がないといった顔で告げた。
「だ、だから! 神尾君に何の用かって聞いてるの!」
御神本に田中は気丈にも言い返した。
そんな彼女を御神本は冷酷な眼差しで見つめていた。
数秒睨みあいのような状況が続き……御神本が口を開こうとしたその時、
「神尾ならいないぞ。昼休みはいつもどこかに消えるからな」
言ったのは神尾拓の前の席に座る男子生徒だった。
あだ名はチャラ男。
別にチャラくはないのだがその見た目から入学三日目にはそのあだ名が定着してしまった可哀想な男子だ。
前の席ということもあり、彼は神尾拓と比較的親しくなっていた。
その彼が言った昼休みに消えるというのは本当の事だった。
誰も神尾拓がどこにいるのか知らないのだ。
ちなみにチャラ男自身は便所メシでもしていると思っていた。
「…………そう」
御神本舞華はつまらなそうに呟いて、
「ならこんなところに用はないわ」
そう言って教室から離れていった。
残された生徒たちは呆然と見送っていた。
「お騒がせして申し訳ありませんでした」
従者の女子生徒が入り口から全員に向かって頭を下げ御神本舞華を追いかけていった。
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