月が導く異世界道中extra

あずみ 圭

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extra49 ツィーゲエピソード ~かつて身寄りなく血に酔っていた妹~

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 巴が何やら考え込んでいる。
 緊張を纏って直立不動でその様子を窺っているのは、彼女に拾われた形で人生の再出発を果たした元冒険者ライム=ラテ。
 実力は雲上彼方、立場も直属の上司、己が弱みも把握されている。
 生殺与奪の権利すら握られているライムにとって巴の沈黙は中々に恐ろしい。
 例えその八割が鑑賞する時代劇の順番決めや名シーンの反芻であったとしても、だ。
 幸か不幸か、今回の沈黙は残りの二割の内、ツィーゲやライムにも関係する事案によるものだったが。

「……やはり漆器、木地師の娘は一度連れていくべきじゃろうなぁ」

 ポツリと、そして唐突に。
 巴が口を開いた。
 しかしライムは沈黙を保つ。
 理由は言葉が自分に向けられたものでない事、そして内容が殆ど理解できなかったから。
 今は口を挟む時ではないと、彼なりに未だ短い付き合いながら精一杯の配慮を見せたのだ。

「若には、後で……万一露見した時には上手にやるとして……しかしそうなると妹の方も取り込んだ方が手間が省けるというモノか?」

 不穏な内容が混じったが、ライムは沈黙を保つ。
 沈黙は金、上司の上司であるクズノハ商会の若き代表の言葉らしい。
 ライムからすると巴以上に得体の知れない存在であり、巴と澪を束ねるモノ。
 最早この職場で全力を尽くすのみと覚悟を決めている彼でも、真と巴の板挟みになるような立場は正直勘弁願いたいと思っている。

「密偵も増やさねば用をなさぬし……ここは一石三鳥を狙うが吉かの、どうじゃライム?」

「仲間が増えるのは有難えですが、誰でもという訳にも」

「ふむ」

「ですが姐さんが見込んだのなら、鍛え方次第かと。こんな俺でも一応まだ生きてますし」

「じゃな」

「はっ」

 そうとは知らされずとも、ライムは時に亜空に、時に荒野の奥地に拉致されてはトア達への指南よりも幾分か厳しい鍛錬を施されている。
 個人の実力としてはクズノハ商会を除けばツィーゲ最強のまま、むしろ以前より独走状態にある。
 残念な事に確認する機会に恵まれず、ライム自身はスランプであるとすら考えているのが現状だ。
 故の自虐もやり取りに含まれていた。

「……」

「姐さん?」

 普段と少し異なる視線をこちらに向けた巴にライムはその意図を尋ねる。

「……いや。四鳥、五鳥と叶う事もあるかもしれぬと思ったまでじゃ」

「?」

「これより数日ツィーゲのクズノハ商会店舗に詰めよ。ある姉妹が漆器という品を見に来るでな。それまでは店の仕事と覚えながら休んでおれば良い」

「え!?」

「心身ともゆるりと休ませよ」

 上司からの優しさ溢れる言葉が何故かライムの不安を掻き立たせる。

「……そ、その後一体何が待ってるんで?」

「まずは、はい、じゃろ? ん?」

 凄絶な笑みが巴の顔に浮かぶ。
 しまった、油断した、とライムの心は後悔に覆われた。

「失礼しました! 心身休めつつ商会勤務に精進します!」

「良し。なに、ちと厳しい社会見学になるかもしれんでな。念には念を押すだけの事よ」

「ちと厳しい、ですか」

 これまでの様々な修業が脳裏を駆け抜けていく。
 そして確信する。
 一番きついのが来るのだと。

「うむ。しかし縁とは面白きものよな。喜べよライム。上手く事が運べばお主に部下が付く事になる。さすれば広大なツィーゲでも的さえ絞れば精緻な情報収集が可能になろうさ」

「へ、へい」

「街中ではあるが充分な武装の上待機しておけよ。ふふふふ、良い風を感じるのう」

「……」

「ライムよ」

「はっ」

「狂ってくれるなよ?」

「!! はっ!!」

 死ぬでも逃げるでもなく、狂うな。
 ライムはかつてない試練の予感に滝の様な汗を流す事しかできなかった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 森鬼最強と胸を張っていたのも今は昔。
 モンドはその価値観の大半を破壊されながらも亜空で更なる成長を続けてきた。 
 TMブートキャンプを経て幾つもの殻を破って見事なパワーアップをした、のだが。

「アレは、一体なんなんだ?」

 そのキャンプの中でモンドは森鬼としては根本的に持ってはならないだろう感情を抱いた。
 いやモンドだけではない。
 アクアや、それにエリスでさえ。無論この亜空に共に入った他の森鬼も全て。
 同じモノを感じたのだと確信している。
 森を管理し、植物を支配する森鬼にとって縁遠い筈のその感情とは。

 植物への畏怖、である。

 例えば千年を超える時を生きた巨樹を目前にして、多くの種族は大小あれど畏れや敬意、神秘を覚える。
 だが森鬼の場合はそこに誇らしさを覚え己が種族の偉大さを再確認するのみ。
 長寿と伝承される知識を持ってそれだけ森を正しく支配してきた結果だと考えるからだ。
 森鬼が関わってこずにそこまでに至った樹を見れば、これからは自分たちがしっかり管理してやろうと考える。
 そこに畏怖は微塵もない。
 貴重な薬草や果樹、花を見ても反応は特に変わるはずなどない。
 ないのだが……。

 最初の衝撃はバナナという黄色の果実だった。
 至上の美味、モンドもその表現に賛成だ。
 亜空には他にも美味なるものは数多くある。
 しかし食欲と性欲と睡眠欲を全て同時に満たす(※森鬼のみによる共通見解)食物は他にはない。
 ちなみに真に異常なまでのバナナ愛好を不思議がられ味の感想を求められた時にそう答えたら、彼はとてもわかりやすくドン引きした。
 その他の種族は軒並み苦笑いを浮かべていた。
 極めて簡潔で明瞭で良い回答だったと自負していただけに森鬼たちは首を傾げたものだ。

「しかも俺達だけでは増やし方も育て方もまったくわからなかった」

 そう。
 亜空で出会ったバナナには種に当たるものがない。
 まあ現代日本を生きていた真にとって身近な、つまるところ品種改良を施されまくった後の品種が何故か自生していたのだ。
 真に言わせればそもそも最初からおかしな状況である。
 F1品種など得られた種から育てても同じものが出来ない、出来にくい作物など現代には溢れる程存在しているのだから。

 結局真の記憶から幾つかの手法が試され、一番結実までの成功率が高い接ぎ木に似た方法が採用されようとしているのが現状だ。
 もうそのまま植えてみたら、と真が完熟したバナナを畝に突き刺したケースもあったが、何故かこれは成功した。
 そして何故かこの一例以外は一度も成功しなかった。
 しかし森鬼の中に真という存在への畏怖が生まれたのは多分あの時からだったんじゃないかとモンドは考えている。
 
「一応解決はしそうだからそこは喜ばしいんだが。アレ……樹園。あれだきゃあ意味がわからん」

 モンドが見つめる先には黒い森が広がっている。
 樹園と彼が呼んだものは森に入ってしばらくの所にある奇妙な一帯を指す言葉だ。
 黒い森とその周辺を含めて信じ難いほど豊富な植生が広がっている。
 今日これから巴からモンドと数人の同行者を伴って再びかの地を「訪問」すると聞かされている。
 探索ではない。彼女は訪問といった。
 ブートキャンプでの一幕、初見で樹園を訪れた時、モンドはそこで見た巨樹に紛れもない畏怖を覚えた。
 あり得ないと頭では考えながら、心の奥には拭い去れない畏れが未だに確かに存在している。
 
「頭がおかしくなりそうな光景だった」

 枝ごとに異なる葉野菜を茂らせている樹。
 葉野菜ならず根菜を実らせている樹。
 多種多様な果実を、花を枝に纏う樹。

 明らかに異様な光景だった。
 それらは全て明らかな巨樹ばかり。
 森鬼とは違い初見ではなさそうだった巴や澪、真は初めてここを見た時どう思ったのだろうか。
 いま改めて考えるとモンドもそんな事を考える余裕はある。
 当時はそれどころではなかった。
 巨樹のインパクトには劣るが、樹園は異様な巨樹群を筆頭に森の奥に向けて放射状に広がり、そこにはあらゆる樹があった。

 柿の樹、枇杷の樹、林檎の樹……。
 このくらいまではまだモンドも見た事のない果樹だな、で興味を惹かれる程度。
 苺の樹、西瓜の樹、白菜の樹、大根の樹……。
 この辺りからモンドは首を傾げた。
 こいつらって樹に実るもんだっけか、と。
 そう、樹園にはあらゆる植物が樹として存在していた。
 無論、バナナもだ。
 多様な品種のバナナを一本の、大人が何人も囲んでようやく手が回る巨木が実らせていた。 

 常識とは、知識とは、一体。
 モンドはキャパオーバーを自覚しながら樹園を見学し、そしてその夜。
 森鬼は樹園の植物たちによって全滅させられた。
 巴から今夜はここで一泊するだけで良い。
 言われた時は久々に楽なミッションだと彼らは思った。
 豊富に食べ物があり、魔物の気配も薄い、ただ驚愕の植生があるだけの森だ。
 これは酷いの連続だったブートキャンプでも、流石にこの位はと警戒の中にわずかばかりの安堵が混じったとて無理もない。
 
「ああ、植物が動物だなんて誰が考える。あり得んよ」

 真たちと共にいた時には大人しかった樹々は、夕暮れを過ぎて森鬼だけとなった時に本性を露わにした。
 文字通りの意味で、一体の植生すべてが動物となった。
 即ち、動くモノである。
 たわわに実った白菜は一気に開いて散り散りに前方に発射され刃の如き鋭さで森鬼を切り裂いた。
 人参は素直に撃ち出され突き刺さった。
 どこからか投げ込まれるカボチャとスイカは重量ある鉄球そのもの、武器を折り、ついでに骨も砕いた。
 足元の蔦、葛は触手系の魔物など子どもに見える再生力と速度を持って自由を奪い体を強力に締め付けてくる。

 まるで極上の香水のような甘く優しい香りが鼻先を撫でたかと思えば、植物たちの奇襲に晒されている現状にあってなお、その香りを求めて歩き出したくなる暴力的な欲求が生じる。
 モンドは何とか耐えたが多くの森鬼は抵抗を止め、その香りに誘われて森の奥に歩を進めてしまった。
 また違う香り、こちらは砂糖菓子の様な濃厚な甘いそれを認識した途端に足から力が抜け、意識を強引に引っこ抜かれるような強烈な眠気を生み出した。
 一帯でバタバタと倒れていく同族の仲間を確認しながら、モンドはそこも自傷の痛みと状態異常治癒の魔術をもって凌ぐ。

 だが戦力という意味ではこの時点で既に総崩れ、部隊単位なら全滅判定であった。
 狙撃、斬撃、拘束、魔術の様な匂い。
 モンドにトドメを与えたのは最後の匂いだった。
 ただし甘くなどない。
 強烈に臭い、何かの匂いだ。
 刺激を頭が理解した瞬間、モンドは白目を剥いて卒倒、意識を失った。
 どれほど我慢しても森鬼は呼吸を必要とする、人に属する種族。
 防壁や結界で何とか防げる前の三つと違い、匂いは全く防げなかったのだからこれは仕方のない結末でもある。

 翌朝全員救出はされたものの、ここからの数日をもって森鬼は植物への恐怖と畏怖を体と心に叩き込まれた。
 ある意味で彼らのアイデンティティでもあった植物への優越意識を完膚なきまでに破壊され、同時にその植物たちにある程度の命令は出来るのであろう亜空のトップ勢との間の上下関係を完全に理解させられた。

「キャンプ以降は立ち入りを禁止されてたが……駄目だな、認めるほかない。俺はあそこの樹々に畏怖畏敬の念を紛れもなく抱いている。恐ろしいような昂るような……こんな感情をどう説明できるか検討もつかん」

 まるでエルフのような在り様。
 これでは退化ではないかともモンドも思う。
 しかし、ならば己の力は退化しているかといえば、むしろ樹刑も含めて全ての能力が向上していた。
 進化や退化でもなく亜空への適応。
 これが最適解だろう。

「ん? 来たか」

 モンドは見慣れた霧の塊に待ち人の来訪を察した。
 膝をついて上司を出迎える。
 相変わらずよくわからない衣装に身を包んだ亜空トップスリーの一人、巴だ。
 まあ連中は全員よくわからない恰好してるけどな、という心の声はしまっておく。
 キャンプの成果の一つである。

「む、待たせたかの?」

「いいや、俺が早く来すぎていただけ、です」

 顔を挙げて応じるモンド。
 まだ敬語の教育は半ば、巴も彼のその辺りはまだ咎めない。

「そちらが同行者か、ですか」

 モンドが見覚えがあるのは共に何度か死線をくぐったライムというヒューマンだけ。
 残り二人もヒューマンの女の様だが、こちらは初見だ。
 ひと目で二人とも雑魚だと看破できるほど、弱い。
 真のようにわからない、ではない。
 明らかに弱かった。
 ブートキャンプを乗り越えた森鬼なら彼女たち二人を始末するのに十秒も要らない、とモンドは断言できる。

「うむ。ライム、は良いとして、残る二人はツィーゲの我々の協力者(予定)のキャロとキーマじゃ」

「かっこよてい、っすか。あー、ええと。クズノハ商会に仕えている森鬼のモンド、です」

 それ口にするかね、と考えつつ軽く頭を下げてモンドが名乗る。
 ライムとはお互い目で挨拶するだけに留めた。

「ええと、ヒューマンのキャロです、木の細工を仕事にしています」

「同じくヒューマンでキーマです。飲食店で給仕をしてます」

 森鬼、と種族名を告げて彼が自己紹介した為か、巴と共に現れたキャロとキーマもヒューマンと種族から自己紹介を行う。
 商会に仕える、という妙なニュアンスにキーマが微かに疑問を持つも追及はしない。
 何故なら転移という貴重な体験を今まさに味わった所だからだ。
 周囲の確認の為か、視線がそこら中に乱舞している最中であった。
 もちろん、亜空という半ば異世界に招かれたとは微塵も考えていない。

「木の細工? おい、もしかして……ごっ!?」

「客人におい、とは何事じゃど阿呆」

 巴の拳がモンドの脳天に落ちた。
 エリスと同じ推測に至ったモンドの怒りは一撃がもたらした鈍い痛みに追い出される結果に終わった。

「すご、全く見えなかった……」

 キーマの唖然とした一言。

「ところで、巴様。ここがクズノハ商会の工房のそば、なんでしょうか?」

 どこかそわそわした口調なのは姉のキャロだ。
 クズノハ商会でベレンから漆器の試作品を見せられた彼女は、黒と朱を纏って変貌したソレにあっという間に魅せられた。
 興味があるなら少しウチの事をお見せしようか、と誘いをかけてきた巴に対し職人馬鹿モードに入ったキャロがどう即答したかは想像に難くない。
 妹のキーマもそれに巻き込まれるように転移の術でクズノハ商会ゆかりのどこかに転移してきた、という訳だ。

「まあ、そう急くなキャロ。お前には一度見てもらいたい樹があってな。何事も順番が肝要よ」

「あのー、改めてなんですけど私もいた方が良いんでしょうか」

 キーマの方が自分とは関わりなさそうな話題に質問する。

「無論。妹として姉の仕事は気になるんじゃろ? ベレンからそう聞いとるが?」

「ええ、まあ」

 確かに姉一人で何をされるかと気になっているのは事実。
 だが何故か。
 キーマには予感があった。
 ここに長居、というかクズノハ商会に深く関わるのは色々まずいのではないかと。

「それにキーマといったか。給仕としては中々の身のこなしをしとる」

「っ」

 暗殺者の生業、裏家業まで見抜かれたのかとキーマの背を冷や汗が伝う。

「こんな荒野の奥では役に立たん盗賊見習い程度のもんじゃが、なに若いんじゃ、色々と経験するのは毒にはならんぞ」

「……それは、ありがとうございます」

「うむ、気にするでない」

 役に立たん、見習い程度と評されて心にざわめきを生み出されたキーマだが、巴との実力差は確かに理解している。
 表情には出さず、礼を述べておくに留めた。
 それに情報を一つ引き出せたのも大きかった。
 どうやらここは荒野の奥地。
 どのベースが最寄かはわからないが、巴の気分を損ねれば生きて帰れないのは確実だ。
 キーマの嗅覚は正しく機能し、選択肢を誤る事はなかった。

「さて、では木地師の娘に見てもらうかの。ウチのもんでは手に余る樹をな」

「巴様、僭越ながら」

「なんじゃモンド」

「この二人を本気で樹園に入れるおつもりですか?」

「ああ」

「無事に済むとはとても。不甲斐ない話ですが俺も自分の身すら守れるか怪しい場所です」

「ちと若と話してみて思いついた事がある。試み、というやつじゃな。この姉妹については儂が守るゆえ心配は無用じゃ。無論、お主とライムも命は守ってやるから安心せい」

「……わかりました」

「命は、守ってやるがな。精一杯の武装と警戒はしておけよモンド、それにライムもな」

 すると散歩に出かける様な気安さで巴は姉妹を連れだって歩き出す。

『はっ!!』

 いよいよ始まるのだ、とライムとモンドの覚悟の声が重なった。
 魔物すら寄り付かぬ森へ、一行は歩を進めていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 野菜が樹に実っている。
 見た事のない果物が、今の季節には出回らない筈の果実がそれぞれ甘い完熟の芳香を放っている。
 キャロとキーマの姉妹もまた異様な光景に絶句した。
 ライムとモンドは時折挨拶代わりとでも言わんばかりにそれらから襲い掛かられ、必死でいなしている。
 無力な姉妹は何故か危険に見舞われる事なく純粋にこの秘境の有様に驚いていられた。

「おいおいモンドよ、どうなってんだよ、こりゃ! お前植物の支配者なんだろ!?」

「何事にも例外は、あるっ!! 足元! 葛の蔦が仕掛けてくるぞ!」

「うおおっ!? ここまで動く植物の魔物なんざ聞いた事ねえぞ!」

「ああ俺もないよ! 匂いにも気をつけろよライム。下手に呼吸すると一撃でもってかれる!」

「するだろ、呼吸! 死ぬわ! くっそ毒ガスみたいなもんか、あり得ねえ!」

 主の使いの者じゃ、邪魔するぞー。
 そんな言葉で黒い森に入った巴と姉妹とライムとモンド。
 見事なまでに巨樹群に着くまで襲われたのはライムとモンドのみ。
 
「この女好きで男嫌いの植物どもが!」

 法則でもあるのかと考えたライムの結論は、この森は女尊男卑。
 残念ながら冷静さはとうに失われているようだった。

「ここにおられる樹々にそんな邪な思いなどない! 巴様が死なない程度に俺たちだけ遊んでやれとでも話を通してあるんだ、きっと!」

「はっはっは! いくら巴の姐さんでも樹と話せるわきゃねえだろうが! 専門家のお前でも出来ねえんだろ、それ!」

 巴なら樹とでも話せる。
 男嫌いだから男だけ狙う樹々。
 どっちも大分壊れてきている。
 いっぱいいっぱいだ。

「あの、巴様」

「なんじゃキャロ」

「なんだか甘い香りがします。これは、何でしょう。凄く気になる不思議な香りなんですけど……」

「いや違うでしょお姉ちゃん!? 物凄く強い二人が全力で戦いながらもう今にも押し切られそうなこのナイトメア植物カーニバルに何か言う事があるでしょ!? 甘い匂いなんてそっこら中からフルーツフルーツフルーツなのがするじゃん!?」

 姉は既に何らかの精神攻撃を受けているのか、とキーマはキャロの顔を目をのぞき込む。
 植物が動物の如く襲い掛かってくる異様な現状。
 何故か巴と自分たちだけは襲われないという異様な現状。
 荒野の奥で何が起きようと不思議ではない。
 それはツィーゲの冒険者の間では常識ではある。
 しかし今の姉の反応は明らかにおかしい。
 
「ううん、果物の匂いじゃなくて、もっと違う甘さで……砂糖菓子みたいな……」

「うっそ。この状況でどうして職人馬鹿になってるワケ!?」

「ふむ、上手く推測がはまってくれた、と見てよさそうか。世はまこと奇妙なり、じゃな」

 そして巴は何度も頷いては感慨深く呟く。
 
(いやいやいやいや! この状況で今私たちが対象になってないからって安全だと思える訳ないでしょ!? それに甘い匂いとか意味不明な事。ライムは何故か冒険者を引退した筈なのに前よりかなり強くなってるのにあの始末。しかも森鬼とかって亜人のモンド? あれもライムと同じ位強いよね? これなに、悪夢なの? だったらもう覚めてくれて良いんですけど!?)

 キーマは自分の表情が引き攣っているのが自覚できた。
 とても平静になど振る舞えない。
 盗賊見習い程度、と巴に評されたキーマだったが今彼女の庇護を失ってここの植物に襲われたら何もできずに死ぬ確信が彼女にはあった。

「キャロよ、その匂い、どこからくるかわかるか?」

「はい、何故か」

「では行ってみようではないか」

「良いんですか? 理由はわからないんですけど呼ばれているような気も実は……」

「良い良い。ほれキーマ、お主もついてこい。なに、お前は襲われはせんよ……多分」

「今多分って言いましたね!? 行きます! すぐに行きますからちゃんと守ってくださいね!?」

 一方でライムとモンドは必死に猛攻を凌ぎながら巴らの後を追う。
 そう、何とか凌げている。
 この事実と先の会話がモンドには引っ掛かっていた。

「砂糖菓子みたいな甘い匂い、だと……。おかしいじゃねえかよ、あの匂いは気力だけじゃ抵抗できねえ強烈な眠気を伴ってただろうが。それに匂いの攻撃が未だに無い」

「匂いの攻撃とか意味わからねえ事言ってないで姐さんの後追うぞ! 見失ったら最悪だ!」

「まさか本当にここの樹々と会話を? いやそんな様子は前もなかった。それとも何らかの意思疎通は出来るとでもいうのか?」

「モンド! 考えてて助かる局面じゃねえだろうよ! 今はどっちもやるか体を動かせい!!」

「だとすれば別の、あの言葉? 主の使い、か? 主? つまりあいつが……何かを……」

 動きの鈍ったモンドにライムが発破をかけながら二人もまた巴たちの後を必死についていく。
 さほども奥に進まぬうちに先行するキャロの足は止まり、一本の樹を見上げた。
 ライムの目には樹を見上げるキャロの姿とそれを満足気に見守る巴の姿が映る。
 ここまでの事はどうやら自分の上司の思惑の内の事なのだとライムは危機的状況ながら安堵した。

「この樹が香りの元だと思います」

「うむ、おそらく正解じゃな。砂糖菓子の様な甘い香り、じゃったか?」

「ええ、今もしてます」

「若は綿菓子の様な、と仰っておったが。そうか、この樹か」

「巴様?」

「果たして樹と人の間でそんなものが成り立つのか、とも思いはしたが。何より事実を認めて積み上げていかねばならん。はて、契約と呼ぶかそれとも加護と呼ぶべきか。儂の見立てじゃと後者じゃが」

 巴は上位竜で似たような事をしている個体を思い浮かべながら思索する。
 結果としてその考えは正しかった。
 
「キャロ。その樹は漆器を作る際の木地、あの器を作るのに適した樹の一つで桂という」

「カツラ……」

「他にもそういった適性を持つ樹は数あるが、お前と最も相性が良いのはきっとそのカツラの樹なんじゃろう」

「相性ですか」

「どれ、損など無い筈じゃ。樹の肌に触れてみよ」

 巴の言葉に操られる様にキャロは桂の樹に一歩近づき、手で幹に触れる。
 ビクリと一瞬彼女の身体が震え、妹が反射的に姉に駆け寄ろうとするが巴がそれを制する。
 指先で触れていたキャロはやがて手のひら全体で幹に触れ、カツラは歓迎するかの様に丸っこい黄金と見紛う黄色の葉を揺らした。

 ゆっくりと。
 カツラからキャロに、キャロからカツラに何かが循環するのを巴は感じた。
 そして巴の笑みが一層深まる。
 してやったり、と言わんばかりの顔だ。

「私に使わせてくれるんだね。うん、頑張るよ。貴方に相応しい技量を、私は身に付けてみせるから」

 キャロの決意を待っていたのだろう。
 言葉の言い終わりを待って、カツラの樹からキャロの胴回り程の太さの枝が一つ落ちてきた。
 樹のサイズから見れば大した事はなさそうだが、かなりの大きさだ。
 
「なるほど、当面はその材を扱える様になれとそういう事かの」

「……はい」

「儂としてはお主がツィーゲで技量を高め木地をクズノハ商会に卸してくれる事を望むが、受けてもらえるか?」

「勿論です。またいつか折を見てここに連れて来ていただけたら言う事はありません」

 キャロは何故か迷いなく答えた。

「構わぬとも。併せて木の細工師として、そしてあの街におけるウチの商会の協力者として活躍を望むが?」

「それも、構いません」

「ちょ、お姉ちゃん!?」

「……私はこんなにも自分の技を、存在を、認めてもらった事などありませんでした。この樹に加護を与えられた人としてクズノハ商会への協力は惜しみません」

「巴様っ! 姉に何をしたんですか!」

 キーマが姉の変貌を何らかの洗脳ではないかと察して敵意と非難を巴に向ける。

「落ち着け妹。何の不思議もない単純な話じゃ。孤児になり、施設で育ったお前たちは運悪く裏の顔を持つ者に引き取られ、そ奴の稼業に役立つ技術を叩き込まれた」

「!?」

(なんで、知って……!?)

「姉は細工師、妹のお前は給仕として一人前の仕事は一応しておるようじゃが。裏家業の才ではどうやらお前の方が姉より数段優れた素養を持っていたようじゃな」

「……」

「お前は現状にさした不安も不満もなかったかもしれぬ。だが最近の姉、キャロの方はどちらかと言えば細工師として生計を立てたいとすら考えておったよ」

「そんな話は、姉から聞いていません。一言も!」

「軽々しくは言えぬわな。じゃが、お主らの師匠、そもそも引き取ったその男も、どうやら裏稼業に疲れていた様子。姉の方はその男の表の振る舞いにより共感し、妹のお前は逆に裏家業を遂行する様子に好意を持った。そういう事じゃよ」

「巴……貴女は一体何をどこまで」

 ずけずけと知る者などごく限られた秘密を暴露し解説していく巴の様子に、キーマは戦慄を覚えた。
 直接戦闘能力で劣るのはわかる。

 しかし情報収集能力や、それを用いた情報戦においてはクズノハ商会に負ける訳はない、筈だった。
 それがこの様だ。
 はったりやカマをかけられている、という様子でもない。
 巴は、明らかにキーマとキャロの生い立ちもこれまでの過去も全て知っていて話している。
 理由も手法もまるで見当がつかない。
 キーマは頭ではなく、魂で、本能で、自分ではどうにもならない存在がいる事を悟った。

「はて、どこまで知っておるのかの。主らがなぜ孤児になったかも……ん、知りたいか?」

「……」

 知っているのだろうか。
 いや、この女なら知っていても不思議はないのかもしれない。
 自分たちですら知らない出生から孤児院に投げ込まれるまでの経緯さえ。

 体が冷たい。
 内側から急速に冷やされていくような覚えのない感覚。
 巴の問いに対して、キーマは何一つ言葉を発する事が出来なかった。

「ま、よかろ。つまるところな、陽の当たる所で細々とでも生きていきたかった姉にとって、それでも自分の未熟な技術も自覚しておる身にとって、この場で得られた確信は何物にも代え難い経験であり財産になったんじゃな」

「……確信?」

「うむ。木地師、いや正確には細工師か。その道を歩き続けた結果、やがて自分がヒトカドのモノになるという確信じゃ。故にキャロは生きる道を定めた。ただそれだけの事よ。ま、そうなるようにいくらか仕組みはしたが」

 記憶の全貌と願望を把握した上でのあれこれ。
 魔術による洗脳や魅了の類とは確かに異なるが反則技である点はさして違いはないかもしれない。

「……ふざけないでよ。私とお姉ちゃんはこれからもツィーゲの裏で」

「キャロはもう、金で殺しは請け負わんよ。お前を想って手を貸す事はあるかもしれぬが、そんな性根で仕事に入れば遠からずどうなるか位は「向いとる」妹には理解できるじゃろ。やめておけ」

「何で私からお姉ちゃんを奪うの。認めない、こんなのは絶対に……」

 キーマの瞳に危険な暗い意思が宿らんとしていた。
 根本的な勘違いに気付かぬままに。
 別に巴は姉妹を引き離そうとしている訳ではない。
 むしろついでではあるが、もしもヒューマンでも条件が揃った者が亜空の樹と上手くやっていく事が出来たなら。
 妹もまとめて力尽くで取り込むつもりでいるのだ。
 そう、つまり今現在も絶賛進行中。

「嫌かの?」

「許さない、例え誰だろうと」

「そうかそうか! ならお前もこちらに来れば解決じゃな!」

「いつか必ず……へ?」

 暗い意志、一時停止。

「大体。大本のレンブラントのとこが半休止、待機を命じとるのに冒険者の小物だろうと個人で依頼を引き受けては荒野で殺す、なんて真似しとったらその内あの執事に消されるのは決まっとるしな。お先真っ暗よ」

「っ」

 このところのストレス発散さえ知られている事実。
 キーマは表情を歪める。
 防戦一方、打つ手がない。

「お主は実に運が良いぞ、キーマ。そこで桂の樹と何やら意思疎通して頷いとる姉の縁で人生大逆転じゃ!」

「姉が木地師として若に目をつけてもらっていた事、そして己の名に深く深く感謝すると良い」

「なま、名前?」

 唐突に楽しそうに笑い始めた巴は話をさくさくと進めていく。
 だが名前に感謝とはどういう事か、思わずキーマは聞き返した。

「応とも! 若曰く、実にすぱいしーで美味そうな名前、らしいぞ?」

 真とキーマに面識などない。
 ただ単に定時連絡でふとキーマという単語を聞いた真がカレーを連想しただけである。
 彼に罪は多分無い。

「……は?」

 暗い意志、霧散。

「やー亜空の者にやらせるのも良いんじゃが、結構果てしない道のりが予想できるだけに手数を打っておきたい案件があってな?」

 もう話がどう転んでどっちに進みだしているのかキーマにはまるで理解できない。
 なのに性質が悪い事にこの話題は自分の、多分人生そのものに関わる事で。
 しかも自力でどうにか抗う事ができるレベルではない、決定事項を伝えられている気がぷんぷんするのだ。

(スパイシーで美味しそうな名前の私にさせたい、果てしない道のりで手数が必要な事って何? まったく予想できない!!)

「キーマよ、お前は今まで通り給仕として働きつつ、ライムの手下としてウチの密偵二号になってもらう。血が見たくなったら荒事もさせてやるとも」 

「え、意外と普通。むしろ好条件っぽい」

 あくまで生殺与奪権を握られた割には、とつくがキーマはつい思ったままを口にした。

「そして今日からお前にはカレーライスを再現すべく奮闘してもらう」

「かれー?」

「カレーライスじゃ!」

 全く聞き覚えの無い物の名前を聞かされ、なす術の無いキーマ。

「えっと、私それ知らないんですけど」

「料理じゃよ。味はこれから教えてやるとも。なあに、同じヒューマンなら味覚の感覚も似ておるし何度かやれば美味い事頭と舌がリンクするじゃろ」

「待って、ちょっと怖い」

「あれが再現できればきっと若もお喜びになる。なあにライスは良い、カレーのとこだけばっちり頼むぞキーマカレー、いやキーマ」

「あ、いや、いやで、あぎぎぎっ、ふお、んぎーー!」

「大丈夫、絶対に味を頭に刻み込んでやろう。給仕なら料理にもそれなりに詳しかろ? ふっふっふっふ、はーはっは!」

 間違っている。
 給仕は確かにそれなりに料理の知識はあるが味からレシピを逆算するスキルなど基本的には無い。
 それも未知の味、となれば完全に料理人の領分だ。

「ししししし、ぬぬぬうぬぬぅ」

 巴の笑い声とキーマの弱弱しい叫びが森に響く。
 どさっと。
 巴からほど近い場所で重いものが落ちる音がした。
 二つ。
 先ほどまでライムだったものとモンドだったものだ。
 奮闘虚しくギリギリで駄目だった模様。
 ライムに鍛錬の成果を多少なりとも実感させてやろうという試みまでは上手くいかなかったようだ。
 後はモンドに樹園の樹々が持ち得る特性と、亜空における真の存在がどういう類のものかを実体験で教えようという目論見も半ばまでしか叶わなかった。

「……うーむ、流石に一石で全部を狙うのは無理があったか。不合格。モンドとライムは鍛え直しじゃなあ」

 ともあれ。
 その日、亜空でとある姉と妹の運命が変わった。
 姉は以後、カツラの性を名乗る様になり。
 妹はこれよりしばらく後、給仕としてだけではなく料理人としての修業も始めた。

 不思議な事に姉妹はどちらも冒険者として飛躍的に力をつけ始め、主に植物系素材を狙う異色のコンビとして名を高めていく。
 細工師でありながら強力な睡眠の固有スキルに目覚めた樹術師の姉と、スパイスの知識ならツィーゲで右に出る者はいないとまで称賛される無影にして料理人の妹。

 やがてツィーゲに漆器とカレーをもたらす事になる偉大な姉妹の長き道のりはこうして始まった。

「いきなり無理して桂を加工した渾身の漆器を世に出したのは私の最大のうっかりでした。まさかクズノハさんの桂で作った漆器があんな効果を発揮するなんて……ライムさんやモンドさんにも随分叱られました」

 とは姉の言。

「どいつもこいつも簡単に天才とか言ってくれんじゃないわよ。ライスに合うカレーに辿り着くのに一体どれだけ苦労したと思ってんの。そもそもカレーってなんなのってとこから始めてんのよ、こっちは。あべこべなの、全部! クズノハ商会の皆と協力して、やっと、やっと奇跡的に出来た第一号はどこからともなく現れた澪さんが一口で完食しちゃうし。あの奇跡を再現するのにあれからまたどのくらい試行したと……ううっダメ、思い出しただけで色々逆流してくる!」

 とは妹の言。
 さて。
 この一件で結局一番利益を得たであろう巴だが、実はそれだけではない。
 この後ライムを相手にしてやらかした色々、そして姉妹をごくごく短期ながら亜空に拉致った事も漆器やカレーから足がつき真に露見。
 一番大好きな暴れん坊なんとかを一時封印されるという本人曰く過酷な罰を受ける事になったのだった。

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