リスティリア救世譚

ともざわ きよあき

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第一章  眩きレブレーベント

第三話 再会は慟哭から③

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 神殿内部は、まるで迷宮のような複雑な造りとなっていた。最初は総司も、王族が自分たちの安全を確保するために入り組んだ造りにしたのだろうと思っていたが、リシアはそれを焦った様子で否定した。
「以前に一度だけ来たことがある。だから入り方も知っていたんだが、内部が全く違う。一体どういうからくりかは知らないが、ここはもう、私や宰相閣下が知るシルヴェリア神殿ではない」
「おいおい……ってことは、“レヴァンクロス”がある場所への道順も、全然か」
「すまない……正直、違いすぎていて、方向すら合っているものかどうか……」
「あぁ、いや、良いんだ。責めてるわけじゃない。まあどうせ、そんなことだろうと思ったんだよ」
 総司がにやりと笑った。
「一筋縄じゃあいかないんだ、あいつが関わるからには。何度苦しめられたことか」
 エントランスから、様々な方向へ伸びる階段の一つを選び、二人で上がっていく。
「気になったことがあるんだ」
「ん?」
「ここは昔、王族が住んでいた場所だったって言ってただろ?」
「ああ、その通りだ」
「にしては……城はこうして隠されてるし、周りは湖だし……今のシルヴェンスとは似ても似つかないっていうか……ここも含めて、王都っぽくないよな」
「……そうだな」
 リシアは頷いて、
「数世代前の話で、私も歴史上のことしか知らないが……かつて、リスティリア全てが何者かに脅かされる、そういう大事件があった」
「ああ、それはなんか、読んだ気がする。確か―――」
「“カイオディウム事変”。1000年も昔に巻き起こったその事件の最中、現在の大国は全て戦争状態にあった。その発端にも収束にも諸説あるが、確かなことは、あらゆるリスティリアの民が“何かと戦っていた”ということだ。カイオディウムが中心となって起きた事件だが、かの国にも記録はさほど残されていない……という、話だ」
「実際のところはわからないってことね」
「何しろ大昔のことだからな。だが、この神殿がこれほど厳重に隠されているのはそういうわけだ。そして城下町だが――――水の底に沈んでいるよ。この神殿に入る手段だけを残し、かつての王族が沈めたのだ」
「……何があったんだろうな、千年前に」
「さて……今を生きる命に、それを知る者がどれほいるかな。神獣の類しかいないだろうが……」
 総司が読んだ文献はわずかだったが、カイオディウム事変というキーワードは、どこか大事な――――この先も関わってくる、重要なものに思えた。
 その理由を思い出すのに、時間は掛からなかった。まだ読んでいなかったが、アレインが総司に「読んでおくといい」と言って渡してきた本のタイトルに、その事件の名が刻まれていたのだ。
 こんなところで出て来るなら、何とかさわりだけでも読んでおくべきだったか、と少し後悔する。
 二人は迷宮と化した神殿を進む。総司は自然と、どちらへ進むべきかを選び、その道は恐らく正しかった。何かに導かれるように、彼は迷うことなく分かれ道を進んだ。
 しかし、おかしい――――ビスティーク宰相は、確かにこの地を「魔獣の巣窟」と呼んだ。
 ここに至るまでに戦いはあったが、内部には全くその気配がない。流石に二人とも違和感を覚え始めていた。
 道に迷う気配がないのは、総司が導かれているからだ。この奥にあるであろう“レヴァンクロス”という秘宝は、間違いなく女神に関連するもの。女神の騎士である彼がそれに導かれるのは不思議なことではない。
 この不気味なまでの静けさは、魔獣ではここに辿り着けなかったというだけのことなのか。
 確信が持てないまま、二人は――――重い巨大な扉を押し開き、神殿の最深部、その一歩手前にまで辿り着いた。
 その瞬間、完全に不意を衝かれる。
 神殿の不気味な静けさもあって、総司は一切警戒を解いていなかった。何が待ち構えているのかと神経を研ぎ澄まして、周囲の物音、魔法の気配、一つも見落とすまいとしていた。
 それでも、やはり彼女を上回ることは出来なかった。
 天井の高い、眩いばかりの光に包まれた部屋に踏み込んだ瞬間、リシアの気配がふわりと消えた。
「リシア!?」
 総司が慌てて手を伸ばすが、もう彼女はいなかった。
 代わりに総司の手を取ったのは――――
「はい、お待たせ。久しぶりね、総司」
 女神レヴァンチェスカだった。
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