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第三章 清廉なるティタニエラ
第一話 気まぐれベルの案内②
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光の道の終点は、地上の物々しい要塞とは似ても似つかない、本当に小さな教会にも満たない集会所のような建物だった。
その建物を一歩出て、大聖堂デミエル・ダリアを見上げ、総司もリシアも息を漏らすほかなかった。
遠目に見た時とは比較にならない迫力、大聖堂というよりは城、城塞、それとも小規模な「都市」か。天に届きそうな尖塔がいくつもいくつも上に伸びており、中央に近づくに連れてどんどん高さを増している。灰色の壁が迫ってくるような錯覚を受け、圧倒される。大聖堂の前に広がる広々とした庭園は、非の打ちどころがないほど鮮やかに手入れが行き届いており、総司が見たこともない花が咲き乱れ、行きかう人々の目を楽しませる。広場からは大聖堂のあちらこちらへ続く通路があり、それらを支える柱は見当たらない。魔法の力で固定されているのだ。それは魔法で操作可能だということを意味しており、有事の際には全ての入口を切り離すことが出来るのだろう。
広場を行きかう人々の格好は、地上にいた民や門番たちとは全く違う。聖職者然とした服装が多く、子供たちの格好も小綺麗で、まるで別世界だ。燦然と輝く大聖堂の元で、穏やかに優雅に暮らす人々。カイオディウムという国の大きな格差が、地上数百メートルを隔てて厳然と存在する。
「でけぇ……近くで見ると別格だ……」
「ちょっとデカすぎるけどね、実際。多少は魔法と機械の補助があるけどさぁ、目的地に行くまで一苦労なんだよ。礼拝の間以外の場所に一人で入ったら絶対迷うね。出口もわかんなくなること間違いなし」
『上』に上がってみてもやはり、ベルの格好はあまりにも浮世離れしていて、非常にアンバランスだった。ルディラントの守護者サリアも、少々露出度の高い服装ではあったが、彼女の服装はどこか神秘的で、軽妙な印象を相手に与えない戦装束だった。ベルも聖騎士団の一員ということで、戦う者として魔法的な防御に頼るタイプなのだろうが、それにしてもその服装はまさに、総司の記憶にある「改造された女子高生の制服」。学校でも比較的見た目が良くて、スクールカースト的な地位分類で言えば上の方に位置する女子たちが好んで来ていたような服装である。本人のヒトをからかうような態度も相まって、リスティリアではかなり異質な印象を受ける。
「そういえばさっきの質問だけど。あたしは近衛騎士の一人だね。枢機卿猊下直属の部下って感じ?」
リシアが目を丸くした。
「本当に!?」
「あ。失礼な反応ですなぁ、そうは見えないわけ?」
「……失敬。そんなつもりでは」
「あはは!」
リシアの生真面目なリアクションを受けて、ベルは楽しそうに笑った。
「ウソウソ、全然良いって。よく言われるし。枢機卿はお説教ばっかり。別に仕事はしてんだから良いじゃんって思ってんだけど」
近衛騎士、という呼び名は、総司も初めて聞いた。カイオディウム独自のものであり、レブレーベントにはない役職だ。枢機卿直属の部下、という単語だけでも、リシアに聞いたカイオディウムの情勢と併せて考えればその地位の高さはうかがい知れる。
総司と同じか、もしかしたら年下と言う年齢で、そんな立場にいるベル・スティンゴルドという人物。並大抵の存在ではない。
「てっぺんが見えねえな……」
もう一度大聖堂を――――大聖堂なのだと言い切ってしまっていいのか、甚だ疑問の浮かぶ建造物ではあるが――――見上げ、総司が呆れを含む声で言った。この建造物は、これ一つで小規模な都市を形成していると言っていいのだろう。聖職者の居住区も、日用品が揃う店も、信徒には最も重要とされる礼拝の間も、全てが揃っているのだ。その在り方は、これまで訪れた王都とは似ても似つかない異質なもの。もしもこの中から、近衛騎士であるベルですらその存在を知らないオリジンを探すとなれば、それは王都シルヴェンスを走り回って小さな宝一つを見つけ出すのとほぼ同等の難易度となる。しかも、総司とリシアはカイオディウムが持つオリジンの形も知らないのだ。
ベルからオリジンの情報が得られないのだとすれば、あとは王族を頼ることになる。カイオディウムの体制を考えれば、オリジンを王家が掌握しているとは考えにくいが、その形や名前ならば知っている可能性はある。
「ま、後で時間があれば案内してあげるよ。まずはあたしのお遣いが先。王サマに会わなきゃね」
その建物を一歩出て、大聖堂デミエル・ダリアを見上げ、総司もリシアも息を漏らすほかなかった。
遠目に見た時とは比較にならない迫力、大聖堂というよりは城、城塞、それとも小規模な「都市」か。天に届きそうな尖塔がいくつもいくつも上に伸びており、中央に近づくに連れてどんどん高さを増している。灰色の壁が迫ってくるような錯覚を受け、圧倒される。大聖堂の前に広がる広々とした庭園は、非の打ちどころがないほど鮮やかに手入れが行き届いており、総司が見たこともない花が咲き乱れ、行きかう人々の目を楽しませる。広場からは大聖堂のあちらこちらへ続く通路があり、それらを支える柱は見当たらない。魔法の力で固定されているのだ。それは魔法で操作可能だということを意味しており、有事の際には全ての入口を切り離すことが出来るのだろう。
広場を行きかう人々の格好は、地上にいた民や門番たちとは全く違う。聖職者然とした服装が多く、子供たちの格好も小綺麗で、まるで別世界だ。燦然と輝く大聖堂の元で、穏やかに優雅に暮らす人々。カイオディウムという国の大きな格差が、地上数百メートルを隔てて厳然と存在する。
「でけぇ……近くで見ると別格だ……」
「ちょっとデカすぎるけどね、実際。多少は魔法と機械の補助があるけどさぁ、目的地に行くまで一苦労なんだよ。礼拝の間以外の場所に一人で入ったら絶対迷うね。出口もわかんなくなること間違いなし」
『上』に上がってみてもやはり、ベルの格好はあまりにも浮世離れしていて、非常にアンバランスだった。ルディラントの守護者サリアも、少々露出度の高い服装ではあったが、彼女の服装はどこか神秘的で、軽妙な印象を相手に与えない戦装束だった。ベルも聖騎士団の一員ということで、戦う者として魔法的な防御に頼るタイプなのだろうが、それにしてもその服装はまさに、総司の記憶にある「改造された女子高生の制服」。学校でも比較的見た目が良くて、スクールカースト的な地位分類で言えば上の方に位置する女子たちが好んで来ていたような服装である。本人のヒトをからかうような態度も相まって、リスティリアではかなり異質な印象を受ける。
「そういえばさっきの質問だけど。あたしは近衛騎士の一人だね。枢機卿猊下直属の部下って感じ?」
リシアが目を丸くした。
「本当に!?」
「あ。失礼な反応ですなぁ、そうは見えないわけ?」
「……失敬。そんなつもりでは」
「あはは!」
リシアの生真面目なリアクションを受けて、ベルは楽しそうに笑った。
「ウソウソ、全然良いって。よく言われるし。枢機卿はお説教ばっかり。別に仕事はしてんだから良いじゃんって思ってんだけど」
近衛騎士、という呼び名は、総司も初めて聞いた。カイオディウム独自のものであり、レブレーベントにはない役職だ。枢機卿直属の部下、という単語だけでも、リシアに聞いたカイオディウムの情勢と併せて考えればその地位の高さはうかがい知れる。
総司と同じか、もしかしたら年下と言う年齢で、そんな立場にいるベル・スティンゴルドという人物。並大抵の存在ではない。
「てっぺんが見えねえな……」
もう一度大聖堂を――――大聖堂なのだと言い切ってしまっていいのか、甚だ疑問の浮かぶ建造物ではあるが――――見上げ、総司が呆れを含む声で言った。この建造物は、これ一つで小規模な都市を形成していると言っていいのだろう。聖職者の居住区も、日用品が揃う店も、信徒には最も重要とされる礼拝の間も、全てが揃っているのだ。その在り方は、これまで訪れた王都とは似ても似つかない異質なもの。もしもこの中から、近衛騎士であるベルですらその存在を知らないオリジンを探すとなれば、それは王都シルヴェンスを走り回って小さな宝一つを見つけ出すのとほぼ同等の難易度となる。しかも、総司とリシアはカイオディウムが持つオリジンの形も知らないのだ。
ベルからオリジンの情報が得られないのだとすれば、あとは王族を頼ることになる。カイオディウムの体制を考えれば、オリジンを王家が掌握しているとは考えにくいが、その形や名前ならば知っている可能性はある。
「ま、後で時間があれば案内してあげるよ。まずはあたしのお遣いが先。王サマに会わなきゃね」
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