穏やかに生きたい悪役令息なのに、過保護な義兄たちが構いすぎてくる~イヴは悪役に向いてない~

鯖猫ちかこ

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 再度首を傾げたおれに、第一王子が揃ってわからないか、と苦笑した。

「そういう話、その、竜騎士団ではあんまり、しなくて」

 レオンさまはアル兄さまとしないのですかと振ると、そういう話はしないなあ、とあっさり返ってきた。

「別に伏せてる訳じゃあないと思うが、わざわざ他人に話すことでもないだろう」
「……もっとアル兄さまとそういうの、話してれば良かったかな、竜のこと以外は自分には関係ないって自分で線引きしてたのかも」

 聞いたらだめな話かな、鬱陶しいかなって。
 だってこんなことになるとは思わなかったし。ゲームでは学園での恋愛ばかりで、戦争だの竜騎士団だのはそういう世界だという説明程度のものだった。
 今はもうゲームの中ではないとわかっていても、恋愛ゲームから外れるような物騒な展開になると思わなかったのだ。
 遠征の話だって、訊いたって詳しくは教えてもらえないだろうなって思ってたし、聞いたところでどうせわからないんだろうなって思ってた。
 竜騎士団に入って、普通の団員とは違うことしかしてないけど、それで満足してたんだろうな、所詮ごっこ遊びだったのかもしれない。
 この世界で生きていくならって考えていたようで、それでもまだ覚悟はなかったのかもしれない。
 心のどこかで、でも自分の人生じゃないしって、滅茶苦茶にする訳ではないけど、なんだか借り物のような、そんな風に考えていたのだろう。

「いえ、そういった能力を持っている者がいると知っていれば、きっと上手く隠れられてるのだと安心させられるかと思いまして……」
「……ああ、」

 他国の王子にまでお気を遣わせてしまい申し訳ないです。
 でもそうか、それなら確かに上手く隠れられてるのだろう。
 別にその通りの能力じゃなくたって、母さまの飛ばす鳥にも相手の竜にも見つけられないくらい上手く。
 それならいいんだ、皆が無事なら。多少怪我をしていたってレオンが助けてくれる。
 義弟がおとなしく捕まるまで、耐えてくれたら。

「少し安心出来たか」
「うん……はい、多分……」

 おれの手を取ったレオンが、指先をぎゅうと握り込んで訊いた。
 震えは多少、ましになったと思う。早くアルベールを見つけて、皆を見つけて安心したい、無事で良かったって言いたい。
 大丈夫だ、おれがまだここにいるということは、きっと間違えてないということ。きっと。

「そろそろ着いたようねえ」

 そう呟いた母さまの声に慌ててレオンの手を跳ねた。
 母さまがすぐ横にいるというのに、流石にくっつき過ぎだ。
 小さな頃に世話になったのを母さまも知っているとはいえ、今はアルベールの婚約者な訳で、その兄の婚約者とべたべたしているのは誤解を生む。誤解じゃないんだけど。

 もうそろそろ合図も上がるでしょう、と第一王子が口にすると、ジャンがもう少し進んだ方がいいんじゃないか、と口を挟む。
 それに対し、第一王子は首を横に振って、いえ、貴方たちは合図で上の方へ飛んでもらいたいので近付かなくてもいい、と話した。

「上に……?マリアに乗って、ということでしょうか」
「そうですね、そこまで高くなくていいです、相手を見張れる範囲で」
「一緒に捕まえにいったほうがよくないですか、ひとりと一匹ではなく数人はいるのでしょう」
「殆どが能力を持ちませんし、こちらも把握しています、要は愚弟を止めればいいだけなので」

 森を燃やします、と続けられて、思わずなんで、と突っ込んでしまった。
 アンリなんて口が開きっぱなしだ。

「もやっ、燃やすって、殺す……殺すってことですか?えっでもさっきのひとたちも近くに来ているんですよね、さっき母さまも着いたみたいって」
「ええ、取り敢えずは愚弟を止めたいので」
「止める……?」
「どれだけ魔力が残ってるかわかりませんからね、少しでもまた減らしておきたい、流石に竜と戦えませんから」

 それにしてもあまりにも強引では、とアンリがあわあわと止めに入ると、大丈夫ですよ、と第一王子は少し笑った。
 実際には燃やしませんから、と。

「……燃やさない?」
「あくまでも愚弟の魔力消費が目当てです」

 幻覚か、と口にしたジャンに、そうです、と頷いた。
 全部が幻覚とはいきませんが、と続ける。

「火を扱える能力を持つ者が臣下にいます、少しの火なら山火事の延焼も抑えられるので被害は一部で済む筈」

 第一王子が話すには、まずは合図で周りを火の海にする、とのこと。
 義弟も火を扱う臣下は知っている、敢えて彼を見せることで、多少の本物の火と幻覚で焦らせて能力を消費させたいと。
 ある程度のところで彼を捕まえることが出来れば被害は最小限に抑えられるのではないかと言う。
 そんなに上手くいくかな、と思っていると、その弱った辺りで貴方たちの力を借りたいのです、と第一王子が頭を下げた。

「出来る限りはこちらで処理をさせて頂きたい、でもどうしても竜だけは、私たち人間の手に余ります」
「マリアに封じさせたいということ」
「そうなりますね……」

 またマリアを怪我させてしまうのは忍びないけれど、操られた竜はきっとおれとの会話は難しい。
 力には力を。竜には竜を。結局マリアに頼るしかないのだ。
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