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「回復薬!?ゲームじゃん!」
「だよねえ!こういう話、優希にしか通じないからさあ!」
「かっけー!」
「ちょっとした怪我くらいならすぐ治るんだよ」
「すっげー!」
思わず盛り上がってしまった。
だって回復薬とか!RPGだよ!
まあ魔法だとか魔力だとか美男美女揃いの国ってだけでもうおれたちからしたらゲームの世界なんだけど。
でもゲームアイテムって感じで、やっぱりテンション上がっちゃう。
「一緒に行けないなら、なにか出来たらなって思って」
「遥陽……」
へへ、と照れたように言う遥陽はやっぱり天使。
優しくてかわいくて文句なしの天使。
「いつ行くのかとか知らないんだけどさ……モーリスさんなにか聞いてる?」
「まあ近々とは」
「……近々?」
「ええ」
「待っておれ聞いてない」
「ジル様の方のスケジュールで組んでますからね」
「そりゃそうだけど」
いつも大体明後日行くぞ!とか急なんだよな。
特に準備するものなんてないけど、もうちょっと心構えとかさせてほしい。
この回復薬だって、遥陽が気を利かせなければ貰えなかったんだぞ……
確かにおれは暇だけどさあ。
「僕、こういうことしか出来ないけど。気を付けてね」
「十分だよ!おれこそ何も出来ないけど……でも!この国毎護れるように頑張るから!」
「……うん」
ちゃんと帰る場所がある。
それがどれだけ心強いか。
ジルが、遥陽が、おれの無事を祈ってくれるのが、とても。
◇◇◇
その日の夜、ジルにすぐ確認をした。
遥陽が知ってるってことは、誰かが遥陽に話をした訳で、その誰かにはジルが話をしたってこと。
モーリスさんも近々だと答えたということは、ある程度は話が固まってるのだ。
「ああ、本決まりになってからユキに話そうと思ってた」
「もっと早く言ってよ~!」
「昨日言いそびれて」
「う」
言葉に詰まる。
それは……まあおれのせいですね
だって、暇はたくさんあるのに、早く魔力をモノにしなきゃって焦ってしまって。薬を貰ったら早く試そうと思うし、外を廻れるとなると、早く出掛けよう!ってなっちゃう。
自分がこの力を上手く使いこなせないことへの焦燥感と、早くしなきゃ、何かあってからでは遅いという気持ち。焦るってもんです。
「まずは近場で悪いけど」
「いいよお、我儘言ってるのはおれだし」
「でもユキはこの国を護る為だろう?我儘じゃないよ」
いや、我儘なんです。
だってジルがデートみたいなんて言ったから。
……そんなことを意識してしまうのです。
「頬が緩んでる、今日は楽しかった?」
「えっと……楽しかったっていうか……キャロルはやっぱりかわいいし……大変だったけど」
「うん」
「遥陽の力の使い方も見たよ、呪い……をどうにかしようとしてんの。ぱあって光が……ああいう感じなんだなって」
「そう」
「ちゃんとモーリスさんも居たからね!」
言い訳のような、でもそれはジルの言い付けでもあって、ちゃんとその通りにしたからね、と言うおれに、ジルはふわっと笑って頬を撫でる。
優しい手つきに瞳を細めてしまう。
ご褒美のようなもの。これが欲しくて、飼い猫のように喉を鳴らして近付いてしまうのだ。
「気持ちい……」
「ユキは撫でられるのすきだね」
「うん……もっと」
普通なら、前なら、子供扱いするな、とか、ばかにしてるのか、ってなっちゃってた筈なんだけど。
ジルにはもう慣れてしまった、慣らされてしまった。
いつの間にか、撫でて貰えないとなると物足りないし、寂しさを感じるし、今となっては、もう撫でられるのが当たり前になってしまった。
デメリットとしては他のひとからでも受け入れてしまいやすくなったことだろうか。
「これされながら寝るのが気持ちいい」
「撫でながら寝るのが?」
「うん、ジルは大変だと思うけど」
「そんなことはないよ、俺だってユキにこうするのが楽しいし……でも」
「ん?」
「今日はやけに素直だね?なにがあった?」
「何も……ないけど」
そう。
何かあった訳でもないし、この間みたいに香油を使われた訳でもない。
ただ実感したというか。
遥陽の、優希がしあわせでいてくれたらいいなという気持ちとか、おれがひとりで我儘を言ってるだけの現状とか。
どうせ我儘言うなら、変に言い訳とか、何か理由をつけるんじゃなくて、純粋に求めてしまった方が楽なんじゃないかって。
だからほら、素直になってみたら嬉しいことが増えた。
「何もないならいいよ、俺だって素直でかわいいユキは大歓迎だ」
「んふふ」
「?」
「そう言ってくれるだろうなって思ってた」
擽ったい。それに完全に慣れるのには大分掛かってしまうと思うんだけど。
でも嬉しい。
ジルは横になるおれに、今度行く街がどんな所かを話してくれた。
どういう気温で、どういう人柄が多い土地で、おいしい食べものはどんなもので、どういうところが名所で、どういうところがいいところか。
物語を紡ぐような穏やかな声にうとうとして、それでもジルの話が聴きたくて、たまに頬を摘むおれに、ジルが笑ってその手を下ろす。
そしてまたその頬を、髪を柔らかく撫でてくれる。
こんなしあわせがずっと続けばいいのに。
しあわせでしあわせで、こわいくらいあったかい時間が、ずっと。
「だよねえ!こういう話、優希にしか通じないからさあ!」
「かっけー!」
「ちょっとした怪我くらいならすぐ治るんだよ」
「すっげー!」
思わず盛り上がってしまった。
だって回復薬とか!RPGだよ!
まあ魔法だとか魔力だとか美男美女揃いの国ってだけでもうおれたちからしたらゲームの世界なんだけど。
でもゲームアイテムって感じで、やっぱりテンション上がっちゃう。
「一緒に行けないなら、なにか出来たらなって思って」
「遥陽……」
へへ、と照れたように言う遥陽はやっぱり天使。
優しくてかわいくて文句なしの天使。
「いつ行くのかとか知らないんだけどさ……モーリスさんなにか聞いてる?」
「まあ近々とは」
「……近々?」
「ええ」
「待っておれ聞いてない」
「ジル様の方のスケジュールで組んでますからね」
「そりゃそうだけど」
いつも大体明後日行くぞ!とか急なんだよな。
特に準備するものなんてないけど、もうちょっと心構えとかさせてほしい。
この回復薬だって、遥陽が気を利かせなければ貰えなかったんだぞ……
確かにおれは暇だけどさあ。
「僕、こういうことしか出来ないけど。気を付けてね」
「十分だよ!おれこそ何も出来ないけど……でも!この国毎護れるように頑張るから!」
「……うん」
ちゃんと帰る場所がある。
それがどれだけ心強いか。
ジルが、遥陽が、おれの無事を祈ってくれるのが、とても。
◇◇◇
その日の夜、ジルにすぐ確認をした。
遥陽が知ってるってことは、誰かが遥陽に話をした訳で、その誰かにはジルが話をしたってこと。
モーリスさんも近々だと答えたということは、ある程度は話が固まってるのだ。
「ああ、本決まりになってからユキに話そうと思ってた」
「もっと早く言ってよ~!」
「昨日言いそびれて」
「う」
言葉に詰まる。
それは……まあおれのせいですね
だって、暇はたくさんあるのに、早く魔力をモノにしなきゃって焦ってしまって。薬を貰ったら早く試そうと思うし、外を廻れるとなると、早く出掛けよう!ってなっちゃう。
自分がこの力を上手く使いこなせないことへの焦燥感と、早くしなきゃ、何かあってからでは遅いという気持ち。焦るってもんです。
「まずは近場で悪いけど」
「いいよお、我儘言ってるのはおれだし」
「でもユキはこの国を護る為だろう?我儘じゃないよ」
いや、我儘なんです。
だってジルがデートみたいなんて言ったから。
……そんなことを意識してしまうのです。
「頬が緩んでる、今日は楽しかった?」
「えっと……楽しかったっていうか……キャロルはやっぱりかわいいし……大変だったけど」
「うん」
「遥陽の力の使い方も見たよ、呪い……をどうにかしようとしてんの。ぱあって光が……ああいう感じなんだなって」
「そう」
「ちゃんとモーリスさんも居たからね!」
言い訳のような、でもそれはジルの言い付けでもあって、ちゃんとその通りにしたからね、と言うおれに、ジルはふわっと笑って頬を撫でる。
優しい手つきに瞳を細めてしまう。
ご褒美のようなもの。これが欲しくて、飼い猫のように喉を鳴らして近付いてしまうのだ。
「気持ちい……」
「ユキは撫でられるのすきだね」
「うん……もっと」
普通なら、前なら、子供扱いするな、とか、ばかにしてるのか、ってなっちゃってた筈なんだけど。
ジルにはもう慣れてしまった、慣らされてしまった。
いつの間にか、撫でて貰えないとなると物足りないし、寂しさを感じるし、今となっては、もう撫でられるのが当たり前になってしまった。
デメリットとしては他のひとからでも受け入れてしまいやすくなったことだろうか。
「これされながら寝るのが気持ちいい」
「撫でながら寝るのが?」
「うん、ジルは大変だと思うけど」
「そんなことはないよ、俺だってユキにこうするのが楽しいし……でも」
「ん?」
「今日はやけに素直だね?なにがあった?」
「何も……ないけど」
そう。
何かあった訳でもないし、この間みたいに香油を使われた訳でもない。
ただ実感したというか。
遥陽の、優希がしあわせでいてくれたらいいなという気持ちとか、おれがひとりで我儘を言ってるだけの現状とか。
どうせ我儘言うなら、変に言い訳とか、何か理由をつけるんじゃなくて、純粋に求めてしまった方が楽なんじゃないかって。
だからほら、素直になってみたら嬉しいことが増えた。
「何もないならいいよ、俺だって素直でかわいいユキは大歓迎だ」
「んふふ」
「?」
「そう言ってくれるだろうなって思ってた」
擽ったい。それに完全に慣れるのには大分掛かってしまうと思うんだけど。
でも嬉しい。
ジルは横になるおれに、今度行く街がどんな所かを話してくれた。
どういう気温で、どういう人柄が多い土地で、おいしい食べものはどんなもので、どういうところが名所で、どういうところがいいところか。
物語を紡ぐような穏やかな声にうとうとして、それでもジルの話が聴きたくて、たまに頬を摘むおれに、ジルが笑ってその手を下ろす。
そしてまたその頬を、髪を柔らかく撫でてくれる。
こんなしあわせがずっと続けばいいのに。
しあわせでしあわせで、こわいくらいあったかい時間が、ずっと。
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