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そのまま見つめていると、自分の中の後ろめたい思いや疚しいものを見透かされそうで、視線を逸らして、それだけだとすぐに意図は読まれてしまうだろうと、ジルの肩口に頭を乗せる。
空気で冷えた生地がひんやりする。
首元にすり、と頬を寄せると、ジルの息を呑む音がわかった。
変わった男だよな、と思う。
おれなんかがこうやって甘えることに喜んでくれるんだから。
あんなに綺麗なひともかわいいひとも溢れてる世界だっていうのに。
「……つれてきてくれて、ありがと」
「俺がユキと一緒に見たかったんだ」
「ん、おれもジルと見れてよかった」
こんなところに連れてこられるなんてそれはもう、まるきりデートそのものだ。
数分しかここにいないのに、それでも満足した。
夜景になんて興味はないけど、そこに、思い出の地に、連れてきてくれることが嬉しいのだ。
「……でもお腹空いちゃった」
「ふふ、そうだね、昼も食べられてないからね」
戻ろうか、とまたおれを抱き抱えるものだから、自分で歩ける、と言うのだけど、こうしたいんだと言われると嫌だとは言えない。
いや、本当にこれはどうかと思うんだけど、ふらつくとはいえ全然歩けると思うんだけど、でも今のジルに無理に強く言えなかった。
もしかしたら、おれと小さな頃の自分を重ねてるのかもしれない。
こうやって、ロザリー様に抱き抱えられて話をしたのかもしれない。
……そうじゃないのかもしれない。本当のことはジルとロザリー様にしかわからない。
でもジルがそうしたがってる以上、今日くらいはその通りにしてもいいかもしれないと思ったんだ。
おれはもうジルに甘やかされ慣れてしまったけど、ジルがロザリー様の愛に触れることはそんなになかったのかもしれない、それを感じられるなら、存分に噛み締めて貰えばいい。
あの薔薇で、この幻想的な景色で、ロザリー様の愛を感じればいいんだ。
◇◇◇
本来なら日帰りで帰れる距離だろう。
でも今日はこの街に泊まり、明日の朝帰るとのことだった。
街のひとたちがこうやって宴会をしてくれることも、一緒にきた従者のひとたちを休ませることもあってだと思う。
「大丈夫?何か取ってこようか」
「……いいよ、王子様をパシリに使うのは……」
「パシリ?」
「そこは気にしなくていい」
フードで顔を隠したまま、端っこでフォークを咥えるおれに、そわそわとジルが世話を焼こうとしてくる。
普通逆では、と思うのだけど、やたらとジルはおれに構おうとするので、そこは未だに居心地が悪い。
元々おれは遥陽に世話を焼く方で、自分がされる側に回ると落ち着かないのだ。
「あの……おにいちゃん、よね?」
「えっ……ああ、うん、そうだよ」
急に声を掛けられてびっくりした。
すぐ横に、小さなと女の子と男の子が揃って立っていたから。
「おかお、みえないから」
「かみさま!」
「神様じゃないよ……」
「ううん、ママが、おにいちゃんはあたしたちをまもってくれるかみさまだって、ね」
「うん!」
「はは……」
「あのね」
「うん?」
「かみさまがきたから、まえよりへいわなんだって」
ありがとうございます、と果物の載ったお皿を差し出してくる。
迷っていると、それをジルが受け取って微笑む。
ふたりはにこーっと笑顔になって、いっぱいたべてね!と駆けて行った。
大人が遠慮をしてかおれたちに挨拶くらいしかしてこないなか、純粋な好意を向けられて、むくむくとやる気が溢れる。
こどもにだって打算はある。
あるけれど、あの無垢な笑顔はそうやって出されたものではない。だから守りたくなるのだ。
「前より平和、かあ……」
おれたちが来るより前のことは知らない。
ロザリー様が亡くなってから、おれたちがこの世界に来るまで。そんなに悪い世界には見えないんだけどな。
ロザリー様が亡くなってからも少しは効力とか残ってるものなのだろうか。
わかんないことだらけだな。
……もし……もし、おれがいなくなったらどうなるんだろう。
次に同じような力を持つひとが現れるのだろうか。
セルジュさんは、ロザリー様と同じような力のおれにびっくりしていた。
だから珍しいんだろうな、と思っていた。
おれの力も、遥陽の力もとても珍しいもの。
おれたちが来なければ、キャロルの呪いも、怪我や病気も治せなくて、この国は戦争や魔獣の被害にあってたのかな、と思うと、少しひやっとした。
もしかしたら、ここで知り合った誰かが被害にあってたかもしれない、キャロルはずっとずっと苦しんでいたかもしれない。
そんなひとたちからしたら、まあ神様みたいなものなのかな、勿論全能ではないけど。
ずっと神様扱いは疲れるけど、こうやってたまに言われるくらいなら受け入れてもいいのかもしれない。
自分たちにない力に縋りたいことってあるもんな。
「おいしい」
「ユキは果物がすきだね」
「この国の果物って全部びっくりするくらい甘くておいしいんだもん」
「良かった」
「ジルの力のお陰かな」
「……育てた人達の愛が篭ってるんだよ」
ジルの口にもひとつ突っ込んだ。
うん甘い、と笑って、そのままおれの指を舐めるものだから、慌ててその指を引っ込める。
場所を考えろ!いや食べさせたおれも悪いんだけど!
空気で冷えた生地がひんやりする。
首元にすり、と頬を寄せると、ジルの息を呑む音がわかった。
変わった男だよな、と思う。
おれなんかがこうやって甘えることに喜んでくれるんだから。
あんなに綺麗なひともかわいいひとも溢れてる世界だっていうのに。
「……つれてきてくれて、ありがと」
「俺がユキと一緒に見たかったんだ」
「ん、おれもジルと見れてよかった」
こんなところに連れてこられるなんてそれはもう、まるきりデートそのものだ。
数分しかここにいないのに、それでも満足した。
夜景になんて興味はないけど、そこに、思い出の地に、連れてきてくれることが嬉しいのだ。
「……でもお腹空いちゃった」
「ふふ、そうだね、昼も食べられてないからね」
戻ろうか、とまたおれを抱き抱えるものだから、自分で歩ける、と言うのだけど、こうしたいんだと言われると嫌だとは言えない。
いや、本当にこれはどうかと思うんだけど、ふらつくとはいえ全然歩けると思うんだけど、でも今のジルに無理に強く言えなかった。
もしかしたら、おれと小さな頃の自分を重ねてるのかもしれない。
こうやって、ロザリー様に抱き抱えられて話をしたのかもしれない。
……そうじゃないのかもしれない。本当のことはジルとロザリー様にしかわからない。
でもジルがそうしたがってる以上、今日くらいはその通りにしてもいいかもしれないと思ったんだ。
おれはもうジルに甘やかされ慣れてしまったけど、ジルがロザリー様の愛に触れることはそんなになかったのかもしれない、それを感じられるなら、存分に噛み締めて貰えばいい。
あの薔薇で、この幻想的な景色で、ロザリー様の愛を感じればいいんだ。
◇◇◇
本来なら日帰りで帰れる距離だろう。
でも今日はこの街に泊まり、明日の朝帰るとのことだった。
街のひとたちがこうやって宴会をしてくれることも、一緒にきた従者のひとたちを休ませることもあってだと思う。
「大丈夫?何か取ってこようか」
「……いいよ、王子様をパシリに使うのは……」
「パシリ?」
「そこは気にしなくていい」
フードで顔を隠したまま、端っこでフォークを咥えるおれに、そわそわとジルが世話を焼こうとしてくる。
普通逆では、と思うのだけど、やたらとジルはおれに構おうとするので、そこは未だに居心地が悪い。
元々おれは遥陽に世話を焼く方で、自分がされる側に回ると落ち着かないのだ。
「あの……おにいちゃん、よね?」
「えっ……ああ、うん、そうだよ」
急に声を掛けられてびっくりした。
すぐ横に、小さなと女の子と男の子が揃って立っていたから。
「おかお、みえないから」
「かみさま!」
「神様じゃないよ……」
「ううん、ママが、おにいちゃんはあたしたちをまもってくれるかみさまだって、ね」
「うん!」
「はは……」
「あのね」
「うん?」
「かみさまがきたから、まえよりへいわなんだって」
ありがとうございます、と果物の載ったお皿を差し出してくる。
迷っていると、それをジルが受け取って微笑む。
ふたりはにこーっと笑顔になって、いっぱいたべてね!と駆けて行った。
大人が遠慮をしてかおれたちに挨拶くらいしかしてこないなか、純粋な好意を向けられて、むくむくとやる気が溢れる。
こどもにだって打算はある。
あるけれど、あの無垢な笑顔はそうやって出されたものではない。だから守りたくなるのだ。
「前より平和、かあ……」
おれたちが来るより前のことは知らない。
ロザリー様が亡くなってから、おれたちがこの世界に来るまで。そんなに悪い世界には見えないんだけどな。
ロザリー様が亡くなってからも少しは効力とか残ってるものなのだろうか。
わかんないことだらけだな。
……もし……もし、おれがいなくなったらどうなるんだろう。
次に同じような力を持つひとが現れるのだろうか。
セルジュさんは、ロザリー様と同じような力のおれにびっくりしていた。
だから珍しいんだろうな、と思っていた。
おれの力も、遥陽の力もとても珍しいもの。
おれたちが来なければ、キャロルの呪いも、怪我や病気も治せなくて、この国は戦争や魔獣の被害にあってたのかな、と思うと、少しひやっとした。
もしかしたら、ここで知り合った誰かが被害にあってたかもしれない、キャロルはずっとずっと苦しんでいたかもしれない。
そんなひとたちからしたら、まあ神様みたいなものなのかな、勿論全能ではないけど。
ずっと神様扱いは疲れるけど、こうやってたまに言われるくらいなら受け入れてもいいのかもしれない。
自分たちにない力に縋りたいことってあるもんな。
「おいしい」
「ユキは果物がすきだね」
「この国の果物って全部びっくりするくらい甘くておいしいんだもん」
「良かった」
「ジルの力のお陰かな」
「……育てた人達の愛が篭ってるんだよ」
ジルの口にもひとつ突っ込んだ。
うん甘い、と笑って、そのままおれの指を舐めるものだから、慌ててその指を引っ込める。
場所を考えろ!いや食べさせたおれも悪いんだけど!
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