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「つまりその魔女の呪いってこと?」
「まあ突き詰めるとそうですね」
「でも魔女が王族を呪ってたら、自分の子孫も呪っちゃってない?」
「それだけ赦されないことだったんですよ」
「……でもそれだけで……それだけってレベルじゃないけど、でもここまで続く程の呪いになるものなの?」
「そこが複雑になるところですね」
「?」
「自分のルーツに何も思わないひともいれば、知ってしまって自分を呪うひともいるのですよ」
口を閉じたジルのかわりに、セルジュさんが答えてくれる。
魔女の呪いと、その子孫が自分の血にかけた呪いが混じってるってことかな、なるほどそれは複雑だ。そのせいで強く、更に解呪しにくいものになったのだろうか。
「確かにどうしようもなさそう……」
「……だから、今のハルヒ様とユキ様のいる状況が奇跡のように感じるのですよ」
これ以上ないくらいに、とセルジュさんがおれの手を握る。
これからも宜しくお願い致します、と言われて、悪い気はしないけど、プレッシャーも感じる。あ、手、汗ばんできたかもしれない。
「……あまりお役に立てなくて申し訳ないです」
「いえ!わからないことばっかりだったから……その、少しは前進したかなって!」
ほら、セルジュさんに訊くまでジルは教えてくれなかった訳だし!
どうにかする考えなんて何も思い浮かばないし、本当にどうしようもないことなんだろう。
でも知らなければその先には進めない。
だから今日知れて良かったのだ。
「……では今日はここまでにしましょうか」
「あ……うん、えと、ごめんなさい、わざわざ付き合わせちゃって」
「数分のことですので……次はいつお会い出来るかわからないですものね」
ユキ様とお話が出来て良かったですと眉を下げた顔で微笑み、それではまた、とセルジュさんが馬車を降りていった。
その背中を見ながら、さて、次はこの黙りこくったジルをどうしてくれようか、と考える。
モーリスさんが、もう出ますよ、と声を掛けてくれて頷く。
暫くすると、その通り馬車が動き出したのを感じて、それからジルにどん、とわざとらしく体当たりしてみた。
「ゆ、ユキ」
慌てたような声がおかしい。
いつも落ち着いた優しい声だから、そういう声は貴重で、素が見えるようで結構すきだったりする。
「……呪いの話言いたくなかった?」
「……言わなかったのは……悪いとは思ってる」
「怒ってないよ」
「……」
瞳を合わさず、ジルの手を握る。
長い指に自分の指を絡めて、ぴくりと動くその手をじっと見ていた。
おっきな手。骨っぽくて、血管が浮いていて、手入れをされているかのような、綺麗な手。この手がすきだ。撫でられるのも、触られることも。
「言い難いよね、わかるよ」
しかもおれに話したって解決する訳でもない。
身内……と言っていいかわからないけど、王族の始まりがそんな人でなしのようなことしてたなんて、言いたくないよね。
「ほんとに、怒ってない」
掴んだ手を頬に持っていく。
元気のないジルは貴重で、そういう顔だって見たいけど、でもやっぱりいつものジルが恋しくもなる。
指先に唇を寄せると、ユキ、とまた名前を呼ばれた。
「ん、なあに」
「……顔が見たい」
「うん」
懇願するような声に、素直に頷いて顔を上げる。
思わず笑ってしまう。あのいつも自信のありそうな顔が、少し情けない、心配そうな顔をしていたから。
そんなにおれに引かれるのが嫌なのかな。なんでだろ、そんな顔見てると、逆に優しい気持ちになっちゃうんだ。
「大丈夫だよ」
「……」
「ちゃんとわかってるよ」
「……嫌われるかもしれないと思うのがこんなにこわいだなんて知らなかった」
「こわいよそりゃ、嫌われるのやだもん」
「……ユキに、嫌われたりこわがられたくないんだ」
「うん」
ぎゅうっとジルに抱き着くと、少し間を置いて、ジルの腕もおれを抱き締め返してくる。
悔しいけど、このすっぽり覆われるくらいが落ち着く。
どきどきして苦しくなるけど、それと同じくらい落ち着いちゃう。
全身でジルの体温を、においを感じられるから。
……どうにかしたいな。
セルジュさんは無理だとはっきり言ったし、おれだって、この力でどうにか出来るだなんて思ってない。
でも解呪出来るならしたい。
キャロルが苦しむのは嫌だ、しぬのもいやだ。
ジルだってキャロルの後で呪われる可能性もある。
それだっていやだ。だれが呪われたっていやだ。それがすきなひとなら尚更。
ここでホラーなら魔女のお墓参りとか行くところだ。
幽霊とかじゃなくて魔女にお墓なんてあるのか知らないし、ホラーなら結局解決出来てなくて呪いは続くんだけど。
おれなんかがどうにか出来るレベルなら、とっくの昔にどうにかなってる。
そんなのはわかってる、わかってるんだ、本当に。
無理だとどれだけ言われたって、思ったって、それでもいやなもんはいやだし、どうにかしたいと思うのは仕方ないじゃないか。
だってすきになってしまった。この綺麗なひとに、もうこれ以上苦しんでもらいたくなんて、ない。
「まあ突き詰めるとそうですね」
「でも魔女が王族を呪ってたら、自分の子孫も呪っちゃってない?」
「それだけ赦されないことだったんですよ」
「……でもそれだけで……それだけってレベルじゃないけど、でもここまで続く程の呪いになるものなの?」
「そこが複雑になるところですね」
「?」
「自分のルーツに何も思わないひともいれば、知ってしまって自分を呪うひともいるのですよ」
口を閉じたジルのかわりに、セルジュさんが答えてくれる。
魔女の呪いと、その子孫が自分の血にかけた呪いが混じってるってことかな、なるほどそれは複雑だ。そのせいで強く、更に解呪しにくいものになったのだろうか。
「確かにどうしようもなさそう……」
「……だから、今のハルヒ様とユキ様のいる状況が奇跡のように感じるのですよ」
これ以上ないくらいに、とセルジュさんがおれの手を握る。
これからも宜しくお願い致します、と言われて、悪い気はしないけど、プレッシャーも感じる。あ、手、汗ばんできたかもしれない。
「……あまりお役に立てなくて申し訳ないです」
「いえ!わからないことばっかりだったから……その、少しは前進したかなって!」
ほら、セルジュさんに訊くまでジルは教えてくれなかった訳だし!
どうにかする考えなんて何も思い浮かばないし、本当にどうしようもないことなんだろう。
でも知らなければその先には進めない。
だから今日知れて良かったのだ。
「……では今日はここまでにしましょうか」
「あ……うん、えと、ごめんなさい、わざわざ付き合わせちゃって」
「数分のことですので……次はいつお会い出来るかわからないですものね」
ユキ様とお話が出来て良かったですと眉を下げた顔で微笑み、それではまた、とセルジュさんが馬車を降りていった。
その背中を見ながら、さて、次はこの黙りこくったジルをどうしてくれようか、と考える。
モーリスさんが、もう出ますよ、と声を掛けてくれて頷く。
暫くすると、その通り馬車が動き出したのを感じて、それからジルにどん、とわざとらしく体当たりしてみた。
「ゆ、ユキ」
慌てたような声がおかしい。
いつも落ち着いた優しい声だから、そういう声は貴重で、素が見えるようで結構すきだったりする。
「……呪いの話言いたくなかった?」
「……言わなかったのは……悪いとは思ってる」
「怒ってないよ」
「……」
瞳を合わさず、ジルの手を握る。
長い指に自分の指を絡めて、ぴくりと動くその手をじっと見ていた。
おっきな手。骨っぽくて、血管が浮いていて、手入れをされているかのような、綺麗な手。この手がすきだ。撫でられるのも、触られることも。
「言い難いよね、わかるよ」
しかもおれに話したって解決する訳でもない。
身内……と言っていいかわからないけど、王族の始まりがそんな人でなしのようなことしてたなんて、言いたくないよね。
「ほんとに、怒ってない」
掴んだ手を頬に持っていく。
元気のないジルは貴重で、そういう顔だって見たいけど、でもやっぱりいつものジルが恋しくもなる。
指先に唇を寄せると、ユキ、とまた名前を呼ばれた。
「ん、なあに」
「……顔が見たい」
「うん」
懇願するような声に、素直に頷いて顔を上げる。
思わず笑ってしまう。あのいつも自信のありそうな顔が、少し情けない、心配そうな顔をしていたから。
そんなにおれに引かれるのが嫌なのかな。なんでだろ、そんな顔見てると、逆に優しい気持ちになっちゃうんだ。
「大丈夫だよ」
「……」
「ちゃんとわかってるよ」
「……嫌われるかもしれないと思うのがこんなにこわいだなんて知らなかった」
「こわいよそりゃ、嫌われるのやだもん」
「……ユキに、嫌われたりこわがられたくないんだ」
「うん」
ぎゅうっとジルに抱き着くと、少し間を置いて、ジルの腕もおれを抱き締め返してくる。
悔しいけど、このすっぽり覆われるくらいが落ち着く。
どきどきして苦しくなるけど、それと同じくらい落ち着いちゃう。
全身でジルの体温を、においを感じられるから。
……どうにかしたいな。
セルジュさんは無理だとはっきり言ったし、おれだって、この力でどうにか出来るだなんて思ってない。
でも解呪出来るならしたい。
キャロルが苦しむのは嫌だ、しぬのもいやだ。
ジルだってキャロルの後で呪われる可能性もある。
それだっていやだ。だれが呪われたっていやだ。それがすきなひとなら尚更。
ここでホラーなら魔女のお墓参りとか行くところだ。
幽霊とかじゃなくて魔女にお墓なんてあるのか知らないし、ホラーなら結局解決出来てなくて呪いは続くんだけど。
おれなんかがどうにか出来るレベルなら、とっくの昔にどうにかなってる。
そんなのはわかってる、わかってるんだ、本当に。
無理だとどれだけ言われたって、思ったって、それでもいやなもんはいやだし、どうにかしたいと思うのは仕方ないじゃないか。
だってすきになってしまった。この綺麗なひとに、もうこれ以上苦しんでもらいたくなんて、ない。
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