【完結】召喚失敗された彼がしあわせになるまで

159*

　ジルの腰こそ動かないけれど、髪を触り、頬を撫で、目許から口許までなぞり、首筋に唇が寄せられる。
　少しの痛みと、それすらも腰に響くくらいの甘い痺れ。

「痕、綺麗になくなったね」
「んっ、ん……」
「もういいの？」
「……あ、アラン、に、見られちゃっ、から……」
「すっかり子育てが染みちゃって」
「そんなんじゃ……」
「いや、ユキがあの子たちの面倒を見てくれて嬉しいよ」
「ん……」

　素直な子に育ちそうだ、というジルに同意していいかわからないけど。
　今のこの、捻くれる暇がない程皆が構ってくれる状況なら、変なところに寄り道することもなさそうだ。
　まっすぐ平和に、楽しくしあわせに生きてくれたらいい。

「痕をつけて欲しいと言われた時は嬉しかったんだけどな、今はあんまりつけちゃだめなのか」
「け、怪我、だと、おもっ……思われて、る、からっ……」
「じゃあ違う方法でユキに想いを伝えないといけないのかあ」
「……えっ」

　ちゅっと軽くキスをして、瞳をあわせて、結婚しようか、なんて、なんともないように言う。
　唐突な言葉に、は、と気の抜けた声が出る。
　え、今なんて言った、流していいことだったか、と確認する前に、またジルが動き出す。
　質問なんて出来ない程、頭が真っ白になるような感覚。

「んッあ、あ、まっ、いいってゆってなっ……ぅあ」
「いいって言うまで待つって今は言ってないよ」
「あっう、い、いじわるっ……あ、あっ、や」
「ユキにそう言われるの悪くないと思ってしまうんだよね……」
「ふぁ、っう、あっ、あ、や、あ、もっ、またあっ……」
「奥？」
「んっ、おくっ……奥、がいっ……んうう！」
「ん、じゃあもうちょっと我慢、して」
「はう、ぅ、あ、うう」

　ぎゅうとジルを抱き締める。
　強請るように腰に足を巻き付けてしまうのを止められなかった。
　もうちょっと我慢って言われたけど、我慢出来なさそう。
　ぴったりくっついた、少し湿った肌があったかくて気持ちいい。

「んぅ……っ」
「……今軽くイった？」
「……って、ないっ」
「じゃあ大丈夫だね」
「……っあ！ん！っあ、はやっ、あ、ッう」

　下らない見栄に、それを多分わかっていて、抽挿が激しくなる。
　躰全体が揺すられて、ずれないようにジルにしがみつくので精一杯だった。

「だめっ、あ、も、や、らめ、も、ほんと、にっ……」
「ん」
「いっ、いい？あ、ぁう、ん、ッは、んん、くぅ……っ」
「いいよ」
「っあ──……あ、あ、んう……っ」

　ジルの許しを待って、それから奥を少し強く突かれた瞬間、びくびくと躰が震えて、ナカを締め付けて達した。
　ジルを足で押さえつけたまま。

「……っ、ふ、んぅ……っ」
「ユキ、足」
「ちょ、っと、待っ……んうう」

　びく、びく、となりながら、少しも動くことが出来ない。
　こんなに気持ちいいのが長いなんて、おれの躰はおかしくなってしまったんだろうか。

「まっ、まっれ……うご、うごく、から、ちょっと……んあ、まっ、れ、っ」
「ん、大丈夫、ゆっくりでいいよ」
「んうう……！」

　少しずつ、足を解いて、それからやっとジルが動くことが出来る。
　ゆっくりゆっくり引き抜かれて、それにすら甘ったるい声が出てしまう。
　恥ずかしくて口を押さえると、その押さえた手にキスをされる。そのきざな仕草にもきゅんとしてしまう。
　こんなに大事にされて、今更もう、ジル以外を選ぶことなんて出来ないんだろうな……

「……なんか、さみしい」
「え」
「おなか……」
「ユキ」
「あっ」

　お腹を撫でながら、思わずそんなことを言ってしまった自分に引く。とんだすけべ発言じゃねーか。
　違う違う、さっきまででかいのが入っていたからその喪失感っていうか、事後のちょっと余韻のせいで頭がおめでたくなってるっていうか、お腹の中があったかい分、なくなったものがわかりやすいというか……

「……ううう、わ、忘れて」
「こんなかわいいこと忘れないよ」

　頭に唇を落とすと、じゃあ少し良い子で待ってて、と言われる。
　今日も躰が動かない。この事後の躰を綺麗にしてくれるということだろう。
　そんなのいいから傍にいてほしいけど、今日は……おれが足でしっかり掴まえていたお陰でナカに出されている。
　これはどうにかしないといけない。
　……ということはまたあの恥ずかしい時間があるということ。
　あああ、いっそ気を飛ばしてしまいたかった。

　枕に顔を埋めてじたばたしてると、すぐにジルは戻ってきて、思ってたより元気そうだな、と笑った。
　うう、笑顔がきらきら輝いて見えちゃう。格好いい、すきだ。

「あ……ぅ、」
「熱くない？」
「ない……きもちい」

　あったかいタオルがべたべたの躰を綺麗にしていく。
　抵抗のあった行為も……いやまだ抵抗あるけど。身分ってもの考えろよって思っちゃうし。
　でも前よりはその、受け入れられるようにはなってきた。
　そうしたい程おれがすきってことでしょ、それなら受け入れない方が失礼かなとも思うし。
　実際優しく優しく、壊れ物を扱うように丁寧に大事にされるのは悪い気分ではない。