【完結】召喚失敗された彼がしあわせになるまで

鯖猫ちかこ

文字の大きさ
161 / 161

161

しおりを挟む
「……お、おれ、子供産まないよ」
「うん?」
「魔法で出来るって言われたけど、やっぱりその……おかしいと思うし、魔法で子供作るなんてそんな」
「だからシャノンの言ったことは話半分でいいと言っただろう」

 からかわれたんだよ、と笑う。
 ……そんな魔法はないってこと?と訊くと、あるけどこういう使われ方はしないという。
 無から命を作るのはやはり推奨されるものではない、子の育ちにくい女性とか、所謂不妊治療とかで使われるものらしい。
 ……安心したのと同時に、少しもやっともしてしまう。
 そうか、ないのか。そりゃそうか。

「他には?」
「え」
「受けてくれない理由は他にある?」
「う、受けない訳じゃ」

 嬉しい、結婚とかまだ先のことだと思ってたし、自分がそんな、こんなプロポーズみたいなことされるなんて思ったことなかったし、それがジルで、めちゃくちゃ嬉しい。
 ただやっぱり、はい!と即答出来る程何も考えてない訳ではない。
 色々やってくれてるジルからしたらおれなんて何も考えてないに等しいだろうけど。

「大事にするよ」
「ん」
「ユキ以外誰も愛さないし」
「う」
「妾も作らない、他のひとの子もいらない」
「あっ」
「……お願い、頷いて」
「んうう」
「すきだよ、ユキ、愛してる」
「……っ」

 優しく優しく囁いて、何度も何度も唇を落とす。
 おれの手を取って、指をなぞって、指輪に触れる。
 懇願して、甘い声で名前を呼んで、でも少し、余裕のない焦った瞳をしてみつめる。
 ……そんな顔を彼にさせることが出来るのはおれだけだ。

 ごくんと息を呑んで、おれでいいの、と訊くと、ユキがいいんだと碧い瞳が揺れる。

「……おれ、こんな髪だし瞳も黒いし、認めてくれないひともいる……多いかもしれない」
「文句は言わせないよ」
「はは、無理だよ……でも、アランの時にこの髪を見せて、別に叩かれてもいいかなって思ったけど……おれじゃなくてジルが周りに何か言われるのが嫌だよ」
「そんな奴とは金輪際関わらないから大丈夫だ」
「無理でしょ……うん、でも、おれ」
「……」
「……ジルとずっと一緒にいたいから、その約束がほしい」
「ユキ……」
「これ、大事にするから、だから、ジルも」
「ああ……うん、ユキを一生大事にする」

 子供みたいにおれを強く抱き締めて、良かった、と呟く。
 少し震えた指先に、ジルも緊張したんだ、と思うともう堪らなくて、胸がきゅうっと苦しくなった。

「……ハルヒに訊いたんだ、ユキ達の世界ではどう結婚の話をするのかと」
「えっ遥陽に」
「指輪を渡すと聞いたんだが……あってたかな」
「……うん、嬉しい」

 遥陽の心中を考えると複雑だ、それでも嘘を吐いたりせず正直に言うのが遥陽らしい。

「……明日、皆に報告しても?」
「ん、いいよ、うわー、色々変わっちゃうかな?」
「ユキは今まで通りで構わない、ただたまに、その、人前で挨拶くらいしてもらうかも」
「あー、式典の時みたいな……それくらいならまあ……ついでに黒髪をアピールして、実はこの国を護ってるのはおれだとでも言っておくか……」
「いいと思うよ」
「いや突っ込んでよ」

 ふふ、と笑って、ジルをぎゅっと抱き締めてベッドに倒れるように横になる。
 見つめ合って笑って、髪を撫でて、唇を重ねる。
 擽ったいくらいの、平凡でしあわせな時間だった。


 この世界に来て色々あった、色々考えた。
 こわかったし、しぬかと思ったし、自分の力のなさに絶望したし、でも優しくしてくれるひと達に自分はしあわせだとも思った。
 キャロルやロザリー様、そしてアランはかわいそうだと思うし、不幸だとも思うし、でもキャロルは愛されていて、アランもこれからたくさん愛される。おれたちも、シャノン様もきっと大事にしてくれる。

 向こうの世界に置いてきたものもたまに思い出す。これから先も、恋しく思うことはきっとある。
 家族にもう会えないけど、それだけがもう心残りだけど、それでも選んだ道でおれは歩いていく。遥陽とジルの手を取って。

 皆が助けてくれて、おれは特に何もしてない、最後の最後を選んだだけ。
 ジルがおれを見つけてくれて、最後に選んでくれただけ。
 これから先、どうなるかなんてわからない。保証もない。

 でもこの瞬間、確かにおれが世界でいちばんしあわせだったと思う。
 そしてこれから先もしあわせでいる為に、ジルと一緒にいたい。
 おれのいちばんのしあわせは、ジルといることだから。

「おやすみ」

 ジルの宝石のような碧い瞳に自分が映るのを確認して、瞳を閉じる。
 ジルの胸に頭を寄せて、撫でてもらうあたたかさを噛み締めながら眠りに落ちた。

 これからも増えていくしあわせを祈って。
しおりを挟む
感想 23

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(23件)

フェネギ
2025.05.10 フェネギ

一生懸命に異世界生活に馴染もうと頑張るユキくん(とハルヒくん)の足跡を、楽しく拝見させて頂いています♪

ただ、ちょっと気になる部分がありまして…。
・王妃→王に嫁いだ女性(臣下の娘や他国の王公貴族の娘)
・女王→王位を持つ女性(概ね元王女)。その婿は王ではなく、王配(女王の配偶者)となる。イギリスのエリザベス女王とフィリップ王配殿下がこれに当たります。

なので、ママンは女王でく王妃です…。

横槍失礼しました、ご参加までに。。。
今後も楽しくイチャ甘異世界(時々厳しい落とし穴アリ)を堪能させて頂きます!!

2025.05.11 鯖猫ちかこ

お読みいただきありがとうございます!

王族貴族細かい…!
ちょっと今確認まで手が回らないので(ちょいちょいその表記になってるかと思うので…)落ち着いたらこっそり直そうと思います( ;ᯅ; )

ご指摘ありがとうございます、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです!
ありがとうございます(* ˊ꒳ˋ*)

解除
いか
2024.09.28 いか

おもしろくて毎日少しずつ日課のように読んでます…!
最高!!ありがとうございます!!
…あと、、、えちなところ、の描写が丁寧ですごくどっきどきで読みましたあ…うええぇ…たまらん好きです〜〜(  ߹꒳​߹ )

2024.09.28 鯖猫ちかこ

面白いと言って頂けて嬉しいです!
えっちな描写もすききらい分かれると思うので、どきどきしていただけて良かったです~!嬉しい( *´꒳`* )
完結してますので是非お暇潰しにでもして頂けたら幸いです!
ありがとうございます( *´꒳`* )

解除
ホープ
2024.01.19 ホープ

はぁ……………

ちかこ様の成分は可愛さと優しさで出来ている…………ウットリ

2024.01.20 鯖猫ちかこ

また読んで頂きまして…お暇潰しにでもして頂けたら幸いです!
かわいくて優しいお話もだいすきなのでそう言って頂けて嬉しいです!
ありがとうございます( *´꒳`*)

解除

あなたにおすすめの小説

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。