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「……お、おれ、子供産まないよ」
「うん?」
「魔法で出来るって言われたけど、やっぱりその……おかしいと思うし、魔法で子供作るなんてそんな」
「だからシャノンの言ったことは話半分でいいと言っただろう」
からかわれたんだよ、と笑う。
……そんな魔法はないってこと?と訊くと、あるけどこういう使われ方はしないという。
無から命を作るのはやはり推奨されるものではない、子の育ちにくい女性とか、所謂不妊治療とかで使われるものらしい。
……安心したのと同時に、少しもやっともしてしまう。
そうか、ないのか。そりゃそうか。
「他には?」
「え」
「受けてくれない理由は他にある?」
「う、受けない訳じゃ」
嬉しい、結婚とかまだ先のことだと思ってたし、自分がそんな、こんなプロポーズみたいなことされるなんて思ったことなかったし、それがジルで、めちゃくちゃ嬉しい。
ただやっぱり、はい!と即答出来る程何も考えてない訳ではない。
色々やってくれてるジルからしたらおれなんて何も考えてないに等しいだろうけど。
「大事にするよ」
「ん」
「ユキ以外誰も愛さないし」
「う」
「妾も作らない、他のひとの子もいらない」
「あっ」
「……お願い、頷いて」
「んうう」
「すきだよ、ユキ、愛してる」
「……っ」
優しく優しく囁いて、何度も何度も唇を落とす。
おれの手を取って、指をなぞって、指輪に触れる。
懇願して、甘い声で名前を呼んで、でも少し、余裕のない焦った瞳をしてみつめる。
……そんな顔を彼にさせることが出来るのはおれだけだ。
ごくんと息を呑んで、おれでいいの、と訊くと、ユキがいいんだと碧い瞳が揺れる。
「……おれ、こんな髪だし瞳も黒いし、認めてくれないひともいる……多いかもしれない」
「文句は言わせないよ」
「はは、無理だよ……でも、アランの時にこの髪を見せて、別に叩かれてもいいかなって思ったけど……おれじゃなくてジルが周りに何か言われるのが嫌だよ」
「そんな奴とは金輪際関わらないから大丈夫だ」
「無理でしょ……うん、でも、おれ」
「……」
「……ジルとずっと一緒にいたいから、その約束がほしい」
「ユキ……」
「これ、大事にするから、だから、ジルも」
「ああ……うん、ユキを一生大事にする」
子供みたいにおれを強く抱き締めて、良かった、と呟く。
少し震えた指先に、ジルも緊張したんだ、と思うともう堪らなくて、胸がきゅうっと苦しくなった。
「……ハルヒに訊いたんだ、ユキ達の世界ではどう結婚の話をするのかと」
「えっ遥陽に」
「指輪を渡すと聞いたんだが……あってたかな」
「……うん、嬉しい」
遥陽の心中を考えると複雑だ、それでも嘘を吐いたりせず正直に言うのが遥陽らしい。
「……明日、皆に報告しても?」
「ん、いいよ、うわー、色々変わっちゃうかな?」
「ユキは今まで通りで構わない、ただたまに、その、人前で挨拶くらいしてもらうかも」
「あー、式典の時みたいな……それくらいならまあ……ついでに黒髪をアピールして、実はこの国を護ってるのはおれだとでも言っておくか……」
「いいと思うよ」
「いや突っ込んでよ」
ふふ、と笑って、ジルをぎゅっと抱き締めてベッドに倒れるように横になる。
見つめ合って笑って、髪を撫でて、唇を重ねる。
擽ったいくらいの、平凡でしあわせな時間だった。
この世界に来て色々あった、色々考えた。
こわかったし、しぬかと思ったし、自分の力のなさに絶望したし、でも優しくしてくれるひと達に自分はしあわせだとも思った。
キャロルやロザリー様、そしてアランはかわいそうだと思うし、不幸だとも思うし、でもキャロルは愛されていて、アランもこれからたくさん愛される。おれたちも、シャノン様もきっと大事にしてくれる。
向こうの世界に置いてきたものもたまに思い出す。これから先も、恋しく思うことはきっとある。
家族にもう会えないけど、それだけがもう心残りだけど、それでも選んだ道でおれは歩いていく。遥陽とジルの手を取って。
皆が助けてくれて、おれは特に何もしてない、最後の最後を選んだだけ。
ジルがおれを見つけてくれて、最後に選んでくれただけ。
これから先、どうなるかなんてわからない。保証もない。
でもこの瞬間、確かにおれが世界でいちばんしあわせだったと思う。
そしてこれから先もしあわせでいる為に、ジルと一緒にいたい。
おれのいちばんのしあわせは、ジルといることだから。
「おやすみ」
ジルの宝石のような碧い瞳に自分が映るのを確認して、瞳を閉じる。
ジルの胸に頭を寄せて、撫でてもらうあたたかさを噛み締めながら眠りに落ちた。
これからも増えていくしあわせを祈って。
「うん?」
「魔法で出来るって言われたけど、やっぱりその……おかしいと思うし、魔法で子供作るなんてそんな」
「だからシャノンの言ったことは話半分でいいと言っただろう」
からかわれたんだよ、と笑う。
……そんな魔法はないってこと?と訊くと、あるけどこういう使われ方はしないという。
無から命を作るのはやはり推奨されるものではない、子の育ちにくい女性とか、所謂不妊治療とかで使われるものらしい。
……安心したのと同時に、少しもやっともしてしまう。
そうか、ないのか。そりゃそうか。
「他には?」
「え」
「受けてくれない理由は他にある?」
「う、受けない訳じゃ」
嬉しい、結婚とかまだ先のことだと思ってたし、自分がそんな、こんなプロポーズみたいなことされるなんて思ったことなかったし、それがジルで、めちゃくちゃ嬉しい。
ただやっぱり、はい!と即答出来る程何も考えてない訳ではない。
色々やってくれてるジルからしたらおれなんて何も考えてないに等しいだろうけど。
「大事にするよ」
「ん」
「ユキ以外誰も愛さないし」
「う」
「妾も作らない、他のひとの子もいらない」
「あっ」
「……お願い、頷いて」
「んうう」
「すきだよ、ユキ、愛してる」
「……っ」
優しく優しく囁いて、何度も何度も唇を落とす。
おれの手を取って、指をなぞって、指輪に触れる。
懇願して、甘い声で名前を呼んで、でも少し、余裕のない焦った瞳をしてみつめる。
……そんな顔を彼にさせることが出来るのはおれだけだ。
ごくんと息を呑んで、おれでいいの、と訊くと、ユキがいいんだと碧い瞳が揺れる。
「……おれ、こんな髪だし瞳も黒いし、認めてくれないひともいる……多いかもしれない」
「文句は言わせないよ」
「はは、無理だよ……でも、アランの時にこの髪を見せて、別に叩かれてもいいかなって思ったけど……おれじゃなくてジルが周りに何か言われるのが嫌だよ」
「そんな奴とは金輪際関わらないから大丈夫だ」
「無理でしょ……うん、でも、おれ」
「……」
「……ジルとずっと一緒にいたいから、その約束がほしい」
「ユキ……」
「これ、大事にするから、だから、ジルも」
「ああ……うん、ユキを一生大事にする」
子供みたいにおれを強く抱き締めて、良かった、と呟く。
少し震えた指先に、ジルも緊張したんだ、と思うともう堪らなくて、胸がきゅうっと苦しくなった。
「……ハルヒに訊いたんだ、ユキ達の世界ではどう結婚の話をするのかと」
「えっ遥陽に」
「指輪を渡すと聞いたんだが……あってたかな」
「……うん、嬉しい」
遥陽の心中を考えると複雑だ、それでも嘘を吐いたりせず正直に言うのが遥陽らしい。
「……明日、皆に報告しても?」
「ん、いいよ、うわー、色々変わっちゃうかな?」
「ユキは今まで通りで構わない、ただたまに、その、人前で挨拶くらいしてもらうかも」
「あー、式典の時みたいな……それくらいならまあ……ついでに黒髪をアピールして、実はこの国を護ってるのはおれだとでも言っておくか……」
「いいと思うよ」
「いや突っ込んでよ」
ふふ、と笑って、ジルをぎゅっと抱き締めてベッドに倒れるように横になる。
見つめ合って笑って、髪を撫でて、唇を重ねる。
擽ったいくらいの、平凡でしあわせな時間だった。
この世界に来て色々あった、色々考えた。
こわかったし、しぬかと思ったし、自分の力のなさに絶望したし、でも優しくしてくれるひと達に自分はしあわせだとも思った。
キャロルやロザリー様、そしてアランはかわいそうだと思うし、不幸だとも思うし、でもキャロルは愛されていて、アランもこれからたくさん愛される。おれたちも、シャノン様もきっと大事にしてくれる。
向こうの世界に置いてきたものもたまに思い出す。これから先も、恋しく思うことはきっとある。
家族にもう会えないけど、それだけがもう心残りだけど、それでも選んだ道でおれは歩いていく。遥陽とジルの手を取って。
皆が助けてくれて、おれは特に何もしてない、最後の最後を選んだだけ。
ジルがおれを見つけてくれて、最後に選んでくれただけ。
これから先、どうなるかなんてわからない。保証もない。
でもこの瞬間、確かにおれが世界でいちばんしあわせだったと思う。
そしてこれから先もしあわせでいる為に、ジルと一緒にいたい。
おれのいちばんのしあわせは、ジルといることだから。
「おやすみ」
ジルの宝石のような碧い瞳に自分が映るのを確認して、瞳を閉じる。
ジルの胸に頭を寄せて、撫でてもらうあたたかさを噛み締めながら眠りに落ちた。
これからも増えていくしあわせを祈って。
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ご指摘ありがとうございます、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです!
ありがとうございます(* ˊ꒳ˋ*)
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最高!!ありがとうございます!!
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面白いと言って頂けて嬉しいです!
えっちな描写もすききらい分かれると思うので、どきどきしていただけて良かったです~!嬉しい( *´꒳`* )
完結してますので是非お暇潰しにでもして頂けたら幸いです!
ありがとうございます( *´꒳`* )
はぁ……………
ちかこ様の成分は可愛さと優しさで出来ている…………ウットリ
また読んで頂きまして…お暇潰しにでもして頂けたら幸いです!
かわいくて優しいお話もだいすきなのでそう言って頂けて嬉しいです!
ありがとうございます( *´꒳`*)