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噛んでください、そう言う声は小さくて、でも震えてはいなかった。
その後に続いた、玲司さんの番にして、は消えるような声だったけれど。
「……ありがと、だいじにするね」
「んう……」
「これだけ濡れてれば大丈夫だと思うけど」
「う、あっ……は、」
指を抜いて、自身を宛てがう。
こんなに心臓が煩くなるなんていつぶりだろう、初めてかもしれない。
力を抜いて、なんて言う必要もなく、きつさは感じるけれど、それでも抵抗なく俺のモノを呑み込んでいく。
腰に回された腕が少し上がって、肩の辺りできゅっと服を掴む。荒い息と甘い声が漏れて、れいじさん、と名前を呼ばれるものだから、俺も凜、と呼ぶと、真っ赤になったかおで瞳を細くした。
首を横にして、噛んで下さい、と無防備な項を見せる。
甘い空気の中、そこがまた異常な程甘ったるいにおいを放つ。
ほんの少し首輪の跡が残っている。それに気付いた時、そういえばこの部屋に入った時にはもう既に外されていたんだよなあと思い至って、また胸がぎゅっとなる。
こわい、不安だと言いながらも、本当は無理にでも噛まれることを期待していたのかもしれない。
噛んでしまうのは簡単だけれど、ごめんね、俺はちゃんと、凜の心も欲しかったから。嫌々なんてごめんだ、俺だってちゃんと愛されてるって知りたかった。知って欲しかった。
これは契約だけど、俺のものにするだけじゃない。
凜を俺のものにすると同時に、俺も凜のものになるということ。
「……痛いかもしんないけど」
「い、いたくて、もいい、です」
凜の首筋に触れると、びく、と肩が揺れる。反射的なものだ、これは拒否じゃない。
白くて細い、折れてしまいそうな首。近付く程に頭がくらくらしそうなにおい。噛みたい、噛みたい、噛みたい。
本能に負けたくない、そう思っていたのに、凜となら、それでいいと思ってしまう。
噛んだら、もう凜は逃げられない、俺から。噛んだら。噛んだらもう、俺だけの番。
「……ッう、」
肉を噛み、皮膚を破る感触は気持ちのいいものではなかった。
凜の痛そうな声が漏れて、じわっと鉄の味がする。
劇的な変化は感じられなかった。ただ、やっと俺のものに出来たという満足感で満たされたような、そんなもの。
口を離すとくっきりとした歯型と、滲んだ血が薄ら浮いてくる。それを舐めとるとまた凜の肩が跳ねた。
「……痛い?いや、痛いか、ごめん」
「だ、だいじょ、ぶです、おわり、おわりですか?もう、ぼく、番ですか……?」
「そう。もう俺の番。どう、何か変わった?」
「……わかん、ない、です、でも」
「でも」
「……れいじさんのこと、いっぱいほしいって、思っちゃっ、て……っあ」
「……そんなかわいいこと言うから」
凜のナカがきゅうとうねる。
番になったからといってヒートが治まる訳ではない。この熱は簡単に消えるものではない。
堪らない気持ちになる。これからは、この誘うような甘いかおりは俺にしか向けられない。俺だけを誘うものになる。俺だけを欲しくて、変化する。
この子の人生を貰ってしまった。
俺の行動ひとつで、この子の感情は揺れる。笑わせるのも泣かせるのも困らせるのもかなしませるのも、こわい、不安だと、……しあわせだと思わせるのは俺だと思うと、責任重大で、もっともっと優しくしないとと心に誓う。
凜ちゃん甘やかし月間は永久継続だ。
頬を撫でて、こちらにかおが向いたところで唇を重ねる。
血の味がする、と小さく呟いた凜につい笑ってしまった。
「ごめん」
「……いえ……う、嬉しい、です」
「そうか」
「ずっと、一緒にいれる」
「……うん」
「絶対、もう、れいじさんがやだっていっても、離れないんですからね……」
「俺も離さないよ」
ずっと鼻を啜りながら言う凜の涙を拭う。
甘ったるくて普段なら言えない台詞も、凜相手なら、凜相手だからこそ吐いてしまう。
伝えなきゃ伝わらない、というよりも、この臆病な子を不安にさせたくないから。
遠回しではなく、毎回ストレートに投げなきゃ、ひねくれたまま受け取られる可能性がある。いつか凜が素直に受け取れる日が来るまでは、俺はそれをわからせないといけない。
「……っ、ナカきっつ」
「ごめ、なさ……」
「気持ちいいってことだよ、凜は?気持ちいい?」
訊くのもどうかと思う。
自然と腰が揺れて、吐息を漏らしてる子に。
「ん……っあ、う、は、いっ」
「いっぱい気持ちよくなっていいからね」
「んう、う、さっきからずっと、きもちい、ですっ……」
だらだらと涎を垂らしてるような凜のモノに触れると、あっ、と一声だけ上げて、凜の頭が俺の鎖骨に当たった。
ヒート中は本当に、ほんの少しの刺激で達してしまう。
普段からは考えられない程。
何回何十回と達して出して、それはあてられたアルファだって。
こどもは出来ないし、居なくていいけれど、それはそれとして、凜のナカに出してしまう。
何度も話したし、こどもがいなくても凜がいればいいと言うのは本当に俺の本音だ、だから本当はこどもがほしいんじゃないかと思われたくないんだけど、それとは別に、凜のナカに出したい、征服欲。俺のものだと主張したいのだ。
その後に続いた、玲司さんの番にして、は消えるような声だったけれど。
「……ありがと、だいじにするね」
「んう……」
「これだけ濡れてれば大丈夫だと思うけど」
「う、あっ……は、」
指を抜いて、自身を宛てがう。
こんなに心臓が煩くなるなんていつぶりだろう、初めてかもしれない。
力を抜いて、なんて言う必要もなく、きつさは感じるけれど、それでも抵抗なく俺のモノを呑み込んでいく。
腰に回された腕が少し上がって、肩の辺りできゅっと服を掴む。荒い息と甘い声が漏れて、れいじさん、と名前を呼ばれるものだから、俺も凜、と呼ぶと、真っ赤になったかおで瞳を細くした。
首を横にして、噛んで下さい、と無防備な項を見せる。
甘い空気の中、そこがまた異常な程甘ったるいにおいを放つ。
ほんの少し首輪の跡が残っている。それに気付いた時、そういえばこの部屋に入った時にはもう既に外されていたんだよなあと思い至って、また胸がぎゅっとなる。
こわい、不安だと言いながらも、本当は無理にでも噛まれることを期待していたのかもしれない。
噛んでしまうのは簡単だけれど、ごめんね、俺はちゃんと、凜の心も欲しかったから。嫌々なんてごめんだ、俺だってちゃんと愛されてるって知りたかった。知って欲しかった。
これは契約だけど、俺のものにするだけじゃない。
凜を俺のものにすると同時に、俺も凜のものになるということ。
「……痛いかもしんないけど」
「い、いたくて、もいい、です」
凜の首筋に触れると、びく、と肩が揺れる。反射的なものだ、これは拒否じゃない。
白くて細い、折れてしまいそうな首。近付く程に頭がくらくらしそうなにおい。噛みたい、噛みたい、噛みたい。
本能に負けたくない、そう思っていたのに、凜となら、それでいいと思ってしまう。
噛んだら、もう凜は逃げられない、俺から。噛んだら。噛んだらもう、俺だけの番。
「……ッう、」
肉を噛み、皮膚を破る感触は気持ちのいいものではなかった。
凜の痛そうな声が漏れて、じわっと鉄の味がする。
劇的な変化は感じられなかった。ただ、やっと俺のものに出来たという満足感で満たされたような、そんなもの。
口を離すとくっきりとした歯型と、滲んだ血が薄ら浮いてくる。それを舐めとるとまた凜の肩が跳ねた。
「……痛い?いや、痛いか、ごめん」
「だ、だいじょ、ぶです、おわり、おわりですか?もう、ぼく、番ですか……?」
「そう。もう俺の番。どう、何か変わった?」
「……わかん、ない、です、でも」
「でも」
「……れいじさんのこと、いっぱいほしいって、思っちゃっ、て……っあ」
「……そんなかわいいこと言うから」
凜のナカがきゅうとうねる。
番になったからといってヒートが治まる訳ではない。この熱は簡単に消えるものではない。
堪らない気持ちになる。これからは、この誘うような甘いかおりは俺にしか向けられない。俺だけを誘うものになる。俺だけを欲しくて、変化する。
この子の人生を貰ってしまった。
俺の行動ひとつで、この子の感情は揺れる。笑わせるのも泣かせるのも困らせるのもかなしませるのも、こわい、不安だと、……しあわせだと思わせるのは俺だと思うと、責任重大で、もっともっと優しくしないとと心に誓う。
凜ちゃん甘やかし月間は永久継続だ。
頬を撫でて、こちらにかおが向いたところで唇を重ねる。
血の味がする、と小さく呟いた凜につい笑ってしまった。
「ごめん」
「……いえ……う、嬉しい、です」
「そうか」
「ずっと、一緒にいれる」
「……うん」
「絶対、もう、れいじさんがやだっていっても、離れないんですからね……」
「俺も離さないよ」
ずっと鼻を啜りながら言う凜の涙を拭う。
甘ったるくて普段なら言えない台詞も、凜相手なら、凜相手だからこそ吐いてしまう。
伝えなきゃ伝わらない、というよりも、この臆病な子を不安にさせたくないから。
遠回しではなく、毎回ストレートに投げなきゃ、ひねくれたまま受け取られる可能性がある。いつか凜が素直に受け取れる日が来るまでは、俺はそれをわからせないといけない。
「……っ、ナカきっつ」
「ごめ、なさ……」
「気持ちいいってことだよ、凜は?気持ちいい?」
訊くのもどうかと思う。
自然と腰が揺れて、吐息を漏らしてる子に。
「ん……っあ、う、は、いっ」
「いっぱい気持ちよくなっていいからね」
「んう、う、さっきからずっと、きもちい、ですっ……」
だらだらと涎を垂らしてるような凜のモノに触れると、あっ、と一声だけ上げて、凜の頭が俺の鎖骨に当たった。
ヒート中は本当に、ほんの少しの刺激で達してしまう。
普段からは考えられない程。
何回何十回と達して出して、それはあてられたアルファだって。
こどもは出来ないし、居なくていいけれど、それはそれとして、凜のナカに出してしまう。
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