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1.ダンジョン・マンションのチラシ 

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「わたしは……」
 そこで、はたと気づく。別人になるのはいいけど、肝心の新しい名を考えてなかった。
 そして、冒頭へいたるのである。
「わたしの名前は……。えーと、その、あの……」
 わたしがしどろもどろになっていると、マオは首をかしげた。
「エート・ソノ・アノ……、というのか?」
 ……もう、これっきゃない! わたしは覚悟を決めた。
「はい、そうです! エートとお呼びください!」
「くはっ!」
 声のする方を見ると、ヴァンが体を丸めて笑っていた。
「あはははっ、なんだよ、それ。エートって、偽名にしても、適当すぎんだろ」
「ヴァン、人の名前を笑うものではない」
「あはははは、おまえも、あいかわらず天然すぎ……っ、はははは!」
 ひとしきり笑った後、ヴァンはさきほどより機嫌よさそうに言った。
「よし、エート。覚悟は決まったようだな。じゃあ、あとはおれの命令にひたすら従え。そうすりゃ死ぬことはねーよ。たぶん」
「……やっぱりたぶんがつくんですね」
「敬語はナシでいい。さ、行くぞ」
 ヴァンはわたしの腕を再びつかみ、歩き出した。
「うわっ、待って、ヴァン。ひっぱりすぎ!」
 こうして、わたしはあの煙が吹きあがっている二階の部屋へと引きずられていった。
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