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ライツァルト・ゼア・ヒガンテ・ジルヴィオ五歳

なんだか忙しい日

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「つかれたねぇ」
『ワタクシ、何もしてないがな』

美しい星空をバルコニーから見ていた。
ライツァルトが、年齢に見合わずしみじみと呟くのに返す。
もちろん声は届かない。

「そーだね、リューもつかれちゃったね」
『だから疲れてないと言っとろうが』

ワタクシがライツァルトの契約獣になったことで人間の国の様々なところに波紋が及んだらしい。
まず家を飛び出していった使用人が向かったのは、ここから少し離れたところにある城だった。
つまり、王城。
人間の王が住むところだ。

これは非公式の召喚式で会ったが故に、このことについて王族は誰も何も知らなかったらしい。
何考えてんだろうか。

もちろんすぐさま書簡が届いて、ライツァルトは王命でしばらくの間母共々王城に預かられることになった。

父親は渋い顔してたけどね。

「おーさまやさしかったね~」
『ま、姪の息子だからな』

そう、あの金髪······オルガリーチェと言うらしいのだが、その女、なんと王妹の娘だったらしい。
さらに分からんな、そんな大切な人物を冷遇する理由が······。

「ふわぁ······ねむくなっちゃった」
『子供は寝る時間、早くベッドにお入り』
「リューもねんねしましょーねー」
『······』

ま、まるでワタクシを赤子のように······。
いや、赤子のようなものだな。

ワタクシの口調がおかしいのは、人と関わることが無さすぎるせいなのだから。
今の口調だって、最高神や、関わりある一部の神々を真似ているのだ。
大元は最高神であるが、ワタクシという一人称なんかは最高神の妻である女神を真似たものだった。

『······お前と一緒にいれば、ワタクシはワタクシらしくなれる気がするのだ』

そう、そのためにワタクシは、ライツァルトと共にあることを選んだのだから。

「んー······おやすみリュー······ねんね」

夜風の涼しいバルコニーから室内に入る。
ライツァルトがベッドに潜り込むと、音もなくバルコニーに続く扉が閉まった。

「おやすみぃ······」
『······うむ、おやすみライツァルト』

······にしても嫌だな、バルコニーにも天井にも床にも壁にも気配がある······ワタクシの実力を信じていないようだな。
まあいいだろう、この姿だと舐められることもある故、今夜は許してやろう。

······ライツァルトを起こすわけにも行かぬからな。



◆◆◆



「リュー、リューおきてぇ?」
『むにゃ······フガッ』

むっ、わ、ワタクシ、一体何を······あ、あ!

な、なんということなのだ。
ワタクシは寝ぼけ眼を擦るライツァルトに見下ろされながらベッドの上で腹を見せていたのだ!
そう、服従ポーズなるものである。

愕然がくぜんと打ち震えるワタクシにライツァルトが言った。

「きょうのごはんなんだろうね」
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