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性格が悪くて口が悪くて頭も悪い似た者同士

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「お前が俺の世話をするやつか?」
「・・・ああ゛?」

目の前に立ったとんでもない美少年から飛び出してきた言葉を聞いた瞬間、俺はこいつとは相慣れねぇと強く思った。






事の始まりは次姉アリシアから届いた分厚い手紙の中の一枚。

『リュオン、あんた子育てするつもりはない?』

そんな馬鹿みたいな一文とともに、子供の名前と詳細な情報が書かれた紙が同封されていた。

いつも通りの文章の中に潜んだ有り得ないそれ。
端から端まで目を通してなきゃ見つけられなかったはずのその一文は家族想いのリュオンの目にはちゃんと留まった。

意味がわからないままに別に送られていたらしいシュネーへの手紙を読んだらしい三人衆に瞬く間に準備され、リュオンさえ気の迷いだろうとすっかり忘れていた数日後急に馬車に詰められた。

「・・・意味わからん」
「良いでは無いですか、ほら、とんでもない美少年だと手紙に書いてあります!」

件の子供、名はネロ。

名は体を表すとはよく言うが、書いてあるには黒髪黒目という珍しい色を持っているらしい。
それにアリシア好みのとんでもない美少年と来た。

男同士の恋愛を極端に好む次姉の性質を知るものとしては何を考えているのか分からず気味が悪い。
同時にアリシアに憧れているシュネーの淡い気持ちを壊す気にはなれず、なんだかんだ言いつつも黙って馬車に揺られる選択をした。

・・・そのことにリュオンが後悔するのはそれからすぐのことだったが。

アリシアに指定された場所にあった個室制の高級レストラン。
周りの目をかっさらいながら案内された個室にふんぞり返るように座り、リュオンは神の子と言われているまま、堂々と振舞った。

リュオンは大抵心を動かしすぎないよう自分らしく生きることにしている。
母上とは違って俺はちゃんとした聖女では無い、そもそも聖女というのは大天使の生まれ変わりが名乗るもの、何の因果かリュオンに受け継がれてしまったが、俺自身は聖女と名乗るつもりは毛頭ない。

そんな俺なので母上ほど能力の制御ができない。
だから幼い頃から傍若無人に振る舞い、それを許容されてきた。
なんだかんだ言いながらシュネーたちが最終的にリュオンの言うことを聞くのも、そのことをよくわかっているからだ。



そうしてしばらく待っていると、アリシアが一人の少年を連れて入ってきた。

滅多に見ない美少年に目を見張った途端飛び出してきた言葉に、天上天下唯我独尊にわがまま放題に育てられたリュオンは、条件反射でドスの効いた声を出した。

・・・後に聞いたところによると、この明らかに性質が同じであろう二人を引き合せるに至ったのは、「性格が悪くて口が悪くて頭も悪い似たもの同士、いいじゃない?カップリングとして・・・子育てBLも素敵・・・」という本当に弟を溺愛しているのかよく分からない姉の鶴の一声があったそうだが・・・そのことをまだ、二人は知らない。
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