34 / 39
☆懐かしい相手
しおりを挟む
「・・・ロヴァンナ」
声をかけると、目の前にいた女性がピタリと止まった。
振り向いた顔は・・・別れた時と何ら変わらない。
彼女はロヴァンナ・ヴォイツ。
俺の・・・ネロの祖国のヴォイツ公爵の、長女だった。
「ネロ・・・どうしてここにいるの?」
震える声に問われ、俺は目を逸らした。
あの国を出ることは、ヴォイツ・・・ロヴァンナの父にしか言っていない。
引き止められたが押し通し、ネロは国を出た。
・・・ヴォイツは、ロヴァンナの婿としてずっとここにいればいいと言った。
ロヴァンナも、喜ぶだろうと。
・・・ロヴァンナは、自分より少し年下の、要領のいい美しい少年に恋していたから。
「・・・ロヴァンナはなんでここに?」
「アンナって呼んでくれないの」
それは存外悲痛な叫びだった。
俺は言葉を全て飲み込んだ。
泣きそうな女性相手に、同性との結婚を望まれているだなんて言えないだろう。
だから、もう一度繰り返した。
「・・・どうしてここに?」
「・・・父の代わり、主催の公爵家に縁があって・・・」
「・・・ヴォイツがどうかしたのか?」
「違うわ、ただ忙しくて、予定が埋まってるの。事業が大当たりしたのよ!ねえネロ、生活がかなり楽になったの、新しい居住区も建設するわ、ヴォイツはこれからどんどん豊かになる・・・その時、私はあなたに隣にいて欲しい。帰ってきて・・・っ、お願い、ネロ・・・!」
泣き始めるロヴァンナ。
一度は結婚だって考えた幼馴染・・・でも、きっと結ばれることは無い。
「・・・ごめんロヴァンナ、俺は──────────」
「おい、ネロ?」
ちょうどその時、俺たち二人が話していた通路にリュオンが出てきた。
スタスタと歩いてくる美貌の男は、俺の真向かいで涙を擦ってカーテシーを披露したロヴァンナに眉を・・・いや、おそらく俺に眉をしかめて、「何泣かせてんだよ」と言ってきた。
「泣かせてない」と言い返したかったが実際泣かしているので何も言えず黙り込む。
するとリュオンは眉をはね上げ、「まじで泣かしたのか」と呟いた。
・・・なんだよその謎の信頼は。
言い返そうとしたがその前にロヴァンナが顔を上げた。
「神子様!どうか、どうかお願いですっ・・・どうか、ネロを解放してください!」
そしてそんな、リュオンにとって・・・そしてネロにとっても、ちょっと困ることを言い出した。
「・・・はあ?」
「ちょ、ロヴァンナ・・・」
リュオンは制御をなくしてしまうし、俺はヴォイツを立て直すという目標への足がかりを失う。
事業が大当たりしたって言ってもきっと今だけ、すぐ他の領に真似され、もっと精度が高いものが生み出されるだけ・・・もう何度も繰り返して、慣れ切ったものだ。
そのことをよくわかっているからネロはたいそう困り果てた。
声をかけると、目の前にいた女性がピタリと止まった。
振り向いた顔は・・・別れた時と何ら変わらない。
彼女はロヴァンナ・ヴォイツ。
俺の・・・ネロの祖国のヴォイツ公爵の、長女だった。
「ネロ・・・どうしてここにいるの?」
震える声に問われ、俺は目を逸らした。
あの国を出ることは、ヴォイツ・・・ロヴァンナの父にしか言っていない。
引き止められたが押し通し、ネロは国を出た。
・・・ヴォイツは、ロヴァンナの婿としてずっとここにいればいいと言った。
ロヴァンナも、喜ぶだろうと。
・・・ロヴァンナは、自分より少し年下の、要領のいい美しい少年に恋していたから。
「・・・ロヴァンナはなんでここに?」
「アンナって呼んでくれないの」
それは存外悲痛な叫びだった。
俺は言葉を全て飲み込んだ。
泣きそうな女性相手に、同性との結婚を望まれているだなんて言えないだろう。
だから、もう一度繰り返した。
「・・・どうしてここに?」
「・・・父の代わり、主催の公爵家に縁があって・・・」
「・・・ヴォイツがどうかしたのか?」
「違うわ、ただ忙しくて、予定が埋まってるの。事業が大当たりしたのよ!ねえネロ、生活がかなり楽になったの、新しい居住区も建設するわ、ヴォイツはこれからどんどん豊かになる・・・その時、私はあなたに隣にいて欲しい。帰ってきて・・・っ、お願い、ネロ・・・!」
泣き始めるロヴァンナ。
一度は結婚だって考えた幼馴染・・・でも、きっと結ばれることは無い。
「・・・ごめんロヴァンナ、俺は──────────」
「おい、ネロ?」
ちょうどその時、俺たち二人が話していた通路にリュオンが出てきた。
スタスタと歩いてくる美貌の男は、俺の真向かいで涙を擦ってカーテシーを披露したロヴァンナに眉を・・・いや、おそらく俺に眉をしかめて、「何泣かせてんだよ」と言ってきた。
「泣かせてない」と言い返したかったが実際泣かしているので何も言えず黙り込む。
するとリュオンは眉をはね上げ、「まじで泣かしたのか」と呟いた。
・・・なんだよその謎の信頼は。
言い返そうとしたがその前にロヴァンナが顔を上げた。
「神子様!どうか、どうかお願いですっ・・・どうか、ネロを解放してください!」
そしてそんな、リュオンにとって・・・そしてネロにとっても、ちょっと困ることを言い出した。
「・・・はあ?」
「ちょ、ロヴァンナ・・・」
リュオンは制御をなくしてしまうし、俺はヴォイツを立て直すという目標への足がかりを失う。
事業が大当たりしたって言ってもきっと今だけ、すぐ他の領に真似され、もっと精度が高いものが生み出されるだけ・・・もう何度も繰り返して、慣れ切ったものだ。
そのことをよくわかっているからネロはたいそう困り果てた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる