俺の恋路を邪魔するなら死ね

ものくろぱんだ

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△名前はリュカティエル、好きな英雄譚の主人公の名前だ

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次の日の朝、私は名前が無いと言った少年に、リュカティエルという名を贈った。

「る・・・?」
「リュ。リュカティエル」

長い名前だな、と思っているのがよくわかる。
彼・・・リュカティエルは存外無口だった。
話を降らなければ自分から喋ることはなく、ひたすらにこちらの言葉に耳を傾ける。
昨日リュカティエルから話しに来たのはリュカティエル自身が自分が死んだのだと思っていたからだった。
自分が生きていることに気がついたらしいリュカティエルは顔を青くして終始オロオロと視線をさ迷わせ、隅で小さく縮こまった。

「リュカティエルはな、私の好きな冒険譚の主人公の名前なのだ!」

私は本が好きで、その影響でこっそり子供向けの絵本を書いて外に出して、平民の識字率上昇を目指している。
・・・というのは建前で、書きたくて書いてるだけだ。

物語を書くのが好きなんて、家族にしか言えない。
そのうち側近たちにも言うつもりだが、やっぱりまだまだ恥ずかしい。
でも自分が好きな物語の話をするくらいだったら、王族としても怒られないはずだ。
というわけで実は荷物に紛れていたその絵本を取り出して、やはりビクビク震えるリュカティエルの横に強引に座った。

「ほら!お前と同じ目の色だろう!?」
「・・・、・・・」
「ふふん、何を言いたいのかわかるぞ?女じゃないかと言いたいんだな?」

そう、リュカティエルは女である。
女騎士リュカティエル。
この絵本は彼女の冒険を描いたものだった。

灰色の髪に、青い瞳の女騎士。
彼女は恋した青年がかけられた、猫になる呪いをとくために旅に出る。
だから表紙のリュカティエルの横には、紫の瞳の黒猫が描かれている。
ちなみに続編もあって、二人の娘である女騎士ステファーニエの物語だ。
私はこちらも好きなのだが、二つ取り出してビアンカに語り始めると「それは女性の読み物では?」と冷たく言われる。

なので普段は控えているため、一方的にこうして話すのは初めてだった。

「リュカティエルは女だが、凛々しく強い、素晴らしい人なのだ!理想の女だ!」

私の熱の入った語り口に引くことはなく、静かに耳を傾けてくれるリュカティエルにどんどん口は動き・・・気がついたら、太陽は頭上を飾っていた。

「お兄様!遅いですわよ!」
「ごめんビアンカ・・・あ、紹介するよ、こちらリュカティエル」

おどおどと視線を逸らすリュカティエルの袖を引っ張り、軽い体を引き寄せる。
目を白黒させる彼の肩を抱き寄せて、自信満々に言い放った。

「僕の側近になってもらうんだ!」
「「・・・え?」」
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