自宅が全焼して女神様と同居する事になりました

皐月 遊

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二章 新学期、新たな出会い編

32話 「女神様、初めてのゲーセン」

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「柊ー、もうそろそろ行かないかー?」

「も、もうちょっと待って下さい!」

今日は柊の希望で七海達と4人でゲーセンに行く日だ。
いつもゲーセンには買い物のついでだったり、下校のついででしか行った事が無かったのだが、ゲーセンに行くという目的で外出するのは初めてだ。

柊は今、自室でおめかしをしているらしい。
別にただのゲーセンだからそんなにオシャレする必要はないんだが、そこらへんは流石女の子と言った所だ。

「お、お待たせしました」

柊が扉を開ける。
柊は、ピンクのダボっとしたカーディガン、それに膝上までの白いスカートを履いていた。
そして、髪型もいつもとは違いハーフアップにしており、時間をかけただけあってかなり完成されていた。

因みに俺は白のオーバーサイズのパーカーに黒のパンツと言った無難な格好だ。

「で、では行きましょうか」

「お、おう」

ただゲーセンに行くだけだというのに、何故こんなに緊張しなければいけないのだろうか。

「ここら辺に居るはずなんだが…あ、居た」

マンションから数分歩いた所にあるゲーセンの近くの公園が待ち合わせ場所だ。
その公園に行くと、既に七海と春樹が来ていた。

七海は白いワンピースという清楚系ファッションで、よく似合っている。
春樹は白いインナーに青いロングカーディガン、黒いパンツを履いており、とてもよく似合っていた。

「陽太、渚咲、おはよ」

七海に言われ、挨拶を返すと、4人でゲーセンに向かって歩き出した。
道中柊と七海を見た街の連中がザワザワしながら視線を送ってくる。

「渚咲はゲーセン初めてらしいけど、どんな場所か分かるの?」

「えっと…機械がいっぱいあるって事くらいしか…」

ゲーセンの前に着き、七海が質問すると、柊が答える。

「そっか。 じゃあ、入る時は耳塞いどきなね」

「えっ…?」

自動ドアが開き、4人で中に入る。
すると、至る所から爆音が聞こえてくる。
俺達はもう慣れたが、初めて来る柊はかなりびっくりするだろう。

柊は両手で強く耳を押さえている。

「な、なんですかこれ…! 音が…!」

「大丈夫すぐ慣れるよ。 行こ」

七海が進むと、柊もトコトコとついて行く。
そんな光景に、俺と春樹は笑う。

「わぁ…!ぬいぐるみがいっぱいです!」

柊がクレーンゲームの中にあるぬいぐるみ達を見ていう。

「あ!あのくまさん! 如月くんがくれたくまさんです!」

「あれは此処で獲ったやつだからな」

懐かしい。あれは同居を初めてすぐの時だったな。
今でも柊はあのクマを大事にしてくれているからありがたい。

「これは何ていうゲームなんですか?」

「クレーンゲームだ」

「くれーんげーむ…」

柊が不思議そうに首を傾げる。

「ほら、ああいう風にして景品を獲るんだ」

ちょうど後ろで春樹がラジコンを獲る為にプレイしていたので、柊に見せる。

「春樹、柊が見てるから頑張れよ」

「酷いことするね陽太…君は僕の腕前を知ってるだろう…?」

そう言いながら、春樹はアームをラジコンの箱にかける。

「おぉ! これで獲れるんですか!?」

柊が目を輝かせるが、現実は非情で、アームは力無くラジコンの箱を離した。

「あれ…箱離しちゃいました」

「持ち上げて獲るだけがクレーンゲームじゃないんだよ。 ハルどいて。 私が本当のクレーンゲームを見せてあげる」

落ち込む春樹を退かし、七海が100円を入れる。

クレーンゲームの腕前は、春樹、七海、俺の順で上手い。

七海は、アームの端で景品を押し、穴に近づける。

「なるほど!アームで押したりするんですね!」

「そういう事。 後はもう押すだけ…」

七海はそれから500円分プレイしたが、ある一定の地点から景品が動かなくなった。

それもそのはず。
この台は穴に近づくにつれて床が迫り上がっているタイプだから、押すだけじゃダメなのだ。

イライラし出している七海を横に退かし、200円を入れる。

此処まで来たら200円あれば十分だ。

先程春樹のプレイでアームの強さは分かった。

どうやらこのクレーンゲームは、穴の近くまでアームで景品を押して移動させ、その後は持ち上げて穴に落とすタイプらしい。

俺は最初の一回で景品の位置をズラし、最後の一回で景品を持ち上げ、そのまま落とした。

「「「おぉ…」」」

3人から声が上がる。
俺は景品受け取り口からラジコンを取り出し、春樹に渡す。

「ほら、取れたぞ」

「ありがとう陽太。 相変わらずクレーンゲーム上手いねぇ」

ラジコンを受け取り、春樹は笑顔で言う。

「如月くん凄いです!」

「慣れだ慣れ。 ほら次行くぞ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…柊? もう3000円くらい使ってるぞ?」

「あと少しなんです…!」

現在、柊は犬のぬいぐるみを獲る為にクレーンゲームに挑戦していた。
最初は微笑ましく見ていた俺たちだったが、1500円を越えた辺りから俺達は苦笑いをしていた。

「ほ、ほら、陽太に獲ってもらえば…」

「自分の力で獲ってみたいんです!」

七海の言葉に、柊はバッと言い切る。

柊の負けず嫌いな所が出てしまった。
七海が助けを求める視線を向けてくる。

俺はため息を吐き、柊の横に行く。

「正面から見るだけじゃなくて、横から見てみるのもいいぞ」

「横から…?」

「正面から見ただけじゃ分からない事もあるしな」

俺が言うと、柊は言われた通りに横から景品を見る。

「ほら、あの犬の前足と後ろ足の間に少しだけ隙間があるだろ。 あそこを狙ってみろ」

「分かりました!」

先程から見ていたが、柊は狙った場所にアームを降ろせてはいた。
その時点で春樹よりは上だ。

狙った場所にアームを降ろす技術さえあれば、簡単だろう。

柊は犬の前足と後ろ足の隙間にアームを入れ、犬が持ち上がる。
そして、そのまま犬は景品受け取り口に落ちた。

「やった…!獲れました!!」

柊は小型犬ほどの大きさのぬいぐるみを抱きしめ、笑顔で言ってきた。

「良かったな。 初ゲットおめでとう」

「はいっ!」

そんな柊を、俺達は微笑ましく見ていた。
柊はたまに子供っぽい笑顔を見せてくる。

あの後も様々なクレーンゲームを周り、小さなぬいぐるみや、お菓子など、いろんな景品を獲った。

「あれはなんですか?」

柊は、ある方向を指さした。
その方向を見ると…

「「うぐっ…」」

俺と七海の顔が引き攣った。
柊が指さした機械の周りには、オシャレをした女子が沢山いた。

そう。あれは…

「プリクラだね」

「ぷりくら…?」

春樹が言うと、柊は首を傾げた。

「簡単に言うと、写真を撮る機械かな。 撮った後は、文字を描いたりスタンプを付けたりしてデコレーション出来るんだ」

「おぉ…!」

春樹の言葉に、柊は目を輝かせる。
まずい…この流れは…

「私、皆さんであれ撮ってみたいです!」

その瞬間、俺と七海は絶望した。

俺や七海のような人種は、写真を撮られる事に慣れていない。
「笑って」って言われても自然な笑顔なんて出来ないし、そもそもプリクラは陽キャや女子、いかにも青春してますよ~って奴らが撮る物だ。

そんな物とは俺は縁が無いと思っていたのだが、まさかこんな事になるとは…

柊に連れられて、4人で中に入る。
春樹と柊は笑顔だが、俺と七海は顔が引き攣ったままだ。

「おぉ…!色々選べるみたいですね!」

お金を入れると、機械が喋り出した。
因みに、背の高さの関係で、柊と七海が前、そして、柊の後ろに俺、七海の後ろに春樹が立っている。

「今回は4人だから、4人モードを押してごらん?」

「はい!」

春樹に言われた通りにボタンを押すと、機械が指示を出してきた。

『まず1枚目!皆笑って~!』

出た出たこの指示。
笑ってって言われてどうやって笑えば良いんだ。

大体こういうのは…

パシャ!!!

考えていたらいつの間にかシャッターが切られていたらしい。
おい嘘だろ撮るまでが早すぎないか…!?

『次行くよー? 次は仲良さそうにして~』

その瞬間、春樹が肩を組んでくる。
なんでコイツはこんな慣れてんだ…!?

前では、七海と柊がくっついてピースをしている。

パシャ!とシャッターが切られる。

『次は動物になってみよう!ガオー!』

訳が分からない指示に困惑していると、皆は順応して顔の前で両手の爪を立てるポーズをする。
七海もかなり困惑した表情をしているが、諦めたのだろう。

俺も諦めて両手の爪を立てるポーズをすると、その瞬間に目にゴミが入ったらしく、俺は目を瞑った。

パシャ!

と目を瞑った瞬間にシャッターを切られ、本気でプリクラ機と自分の不運さに殺意が湧いた。

『じゃあ最後は自由に!』

自由だと…?それが1番困ると分からないのだろうかコイツは。

「如月くん、海堂さん」

「ちょっと間開けて」

言われた通りに俺と春樹が離れると、その空いた隙間に柊と七海が入ってきた。
かなりギリギリだが、なんとか写真の枠には収まっている。

「はい、皆さんピースです!」

もう慣れたのか、柊は俺達に指示を出す。
笑顔でピースする柊と春樹、そして笑顔と困惑が混じった七海。
そんな3人を見て、俺はピースしながら思わず笑ってしまった。

その瞬間にシャッターが切られた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー
「陽太これ…! 真顔だし…!こっちは目閉じてるし…!」

写真をデコレーションする段階に来て、皆でデコレーションブースに移動したのだが、撮った写真を見て七海が笑う。

「…仕方ないだろ。 ていうか、七海も笑顔引き攣ってるだろ」

「うっ…」

七海も七海で、笑う努力はしていたが、引き攣っている。

「あ! この写真の如月くんは自然な笑顔です!」

柊が最後に撮った写真を見る。
そこには、引き攣った笑顔ではない、自然な笑顔をしている俺が写っていた。

「あ、本当だ。 じゃあこれをメインにしよっか」

「はい!」

七海と柊が軽く文字などを書き、写真がプリントされる。

4人で分け合うと、柊は大事そうにプリントされた写真を持った。

「私、こういうの初めてなので楽しいです!」

柊は笑顔で言う。
柊のその笑顔が見れただけで、此処に来た甲斐があった。

その後、少し休憩をする為に、4人でゲーセン内に設置されている自動販売機の前に来た。

俺はココア、柊はミルクティー、七海はリンゴジュース、春樹はコーヒーを買う。

「陽太は相変わらず甘い物好きだねぇ」

「うるせぇ。 お前こそ、よくそんな苦い物飲めるよな」

「飲んでみるかい?」

「絶対に嫌だ」

俺と春樹のやり取りを、七海と柊は笑顔で見ていた。
そんな時…

「…あれ、如月か? それに柊さん達も…」

とある人物に話しかけられた。
その人物は…

「…八神…」

学校1のイケメン、八神天馬だった。
八神は俺達4人を見ると笑顔で挨拶してきた。

八神だけなら問題はない。コイツは口が固い方だからな。

問題は、八神のツレの方だ。
八神みたいな陽キャが1人でゲーセンに来るタイプには思えない。

そして、俺は先日八神に練習は休めと忠告した。
ゴールデンウィーク中でも陸上練習はあるはずだから、八神のツレが陸上部メンバーである可能性は低い。

すると…八神のツレは…

「天馬ぁ~やっぱりあのぬいぐるみ獲れな…えっ」

八神の後ろから、神崎加奈が現れた。
神崎は、俺達4人を見ると目を見開いた。

「……」

そして、俺の横では、柊がかなり不機嫌になっていた。

まずい…他の生徒ならいくらでもやりようはあったんだ。
だが、神崎か…考えられる中で最悪の人物とエンカウントしてしまった。
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