自宅が全焼して女神様と同居する事になりました

皐月 遊

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三章 夏休み編

61話 「再会」

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「…ヨー…君…?」

懐かしい声が聞こえ、俺は固まる。
俺より先にブランコに乗っていた柊、七海、桃井は皆公園の入り口の方を見ている。

覚悟を決めて俺も公園の入り口を見ると、そこにはオフショルダーの水色の短いワンピースを着て肩まで銀髪に綺麗な瞳を持った少女が立っていた。

「…風香」

そう。俺の中学時代の友達、卯月風香だった。
風香は高校生になったという事もあり、立派な美少女に成長していた。

「やっぱりヨー君だ…!」

風香は小走りで俺の近くにくると、涙目になった。

「ヨー君こっちに帰って来てたんだね…!」

「…あぁ。 昨日帰ってきた」

「そうなんだ…!また会えて嬉しいよ! …あ」

俺の手を握って笑顔になった風香は、柊達の方をチラッと見る。

「…ヨー君のお友達?」

「あぁ」

「そ、そう…なんだ…。 はじめまして!私、卯月風香っていいます!」

風香は一瞬悲しそうな顔をした後、それを隠すように笑顔で柊達にお辞儀をした。

柊達も風香に自己紹介をした後、柊はブランコから降りた。

「如月君、私達は少し近くをお散歩して来ますね」

「は…? いや…別に」

「いいですねお散歩! 行きましょう渚咲先輩っ!」

「お、おい」

柊の提案に桃井が笑顔で同意した。
柊は桃井と共に公園から出ようと歩いていく。

「…ちゃんと話しな」

「久しぶりに会えたんだからね」

七海と春樹に小声で言われ、2人も柊達に着いていってしまった。

「はぁ…」

風香と2人きりになってしまい、俺は溜め息を吐く。
あいつら…余計な事しやがって…

「あ…えっと…ご、ごめんねヨー君」

目の前では風香が目を泳がせてオドオドしている。

「折角お友達と楽しんでたのに…邪魔してごめん…」

風香は俯き、小さな声で言った。

「…ブランコ乗ろうぜ」

「え…」

「…別に話したくないんなら乗らなくても良いけどよ」

「う、ううん! 乗る!!」

風香は目を輝かせ、俺の隣のブランコに座った。
2人でゆっくりブランコを漕いでいると、風香はジーッと俺の顔を見て来た。

「…どうした?」

「なんか…ヨー君変わったよね。 大人っぽくなった!」

「まぁ…もう高2だからな。 さっきユキ婆ちゃんにも言われたよ」

「え、ユキおばちゃん!? あの駄菓子屋行ったんだ!懐かしいなぁ…」

「そうだな」

風香は外見は大人っぽくなったが、ふとした時に見せる笑顔は昔と何も変わっていなかった。
いつも元気で明るい。 そんな風香に昔はよく元気を貰ってたっけな。

「ヨー君、向こうでの生活は楽しい?」

「あぁ、楽しいぞ」

「そっか…か、彼女とか…出来た?」

「出来てねぇよ。 恋愛とかするつもりないしな」

「そうなんだ…かっこよくなってたからてっきり出来たのかと思った」

横で風香が安心したように息を吐いた。

「そういう風香はどうなんだ? 彼氏出来たか?」

「んーん。 居ないよ?」

「そうなのか」

「うんっ」

…うーむ…気まずいなぁ。
昔は何も考えなくても気楽に会話できてたんだけどな…

「高校生活とかはどうなんだ?」

「高校生活かぁ…まぁ普通かな? 勉強が難しいから頑張ってるって感じ!」

「そうなのか? お前頭良かっただろ」

「えっとね、進学の為の勉強を頑張ってるんだ!」

「なるほど進学か」

「うん!ヨー君は勉強大丈夫なの? ヨー君勉強苦手だったじゃん?」

「俺は最近はちゃんと勉強してるから成績上位だぞ」

「本当にー…? なんか信用出来ないなぁ」

「本当だって。 これでも頑張ってんだぞ」

「ふーん…あの運動大好きだったヨー君が…
…あ…ごめん」

失言をしたと思ったのか、風香は俯いてしまった。

「別に気にしてねぇよ。 過去の事だしな」

「そう…だね。 …ねぇ、ヨー君」

「なんだ?」

風香は深呼吸した後、ブランコを漕ぐのをやめ、俺の顔をジッと見て来た。

「か、カズ君の事…気にならない…?」

正直、風香と再会した時点でこの話題が出るとは思っていた。
俺はブランコを漕ぐのをやめ、息を吐く。

「…気にならねぇな」

「そ…そっか…そうだよね…」

「…まだ和馬と関わってんのか?」

俺が質問すると、風香は首を横に振った。

「お互い違う高校に進んだし、学校が違うから会う事も無いんだ」

「そうなのか」

「…ヨー君はさ、陸上の大会が終わってすぐに不登校になって私達と関わらなくなったから知らなくて当然なんだけどね?
実は卒業式の後にカズ君から謝られたんだ」

風香は下を向きながら話す。

「それまではカズ君とは関わらないようにしてたんだけどね、「どうしても話したい」って言われちゃって…」

「…そうだったのか」

「うん…私を殴った事に関してはもう怒ってないけど、ヨー君を不登校にした事は許せないって言って、そこからは疎遠になっちゃった」

風香は昔からそうだ。 自分の事よりも常に誰かの事を心配し、力になろうとする。

「学校側は大きな問題にしたくなかったみたいだし、私が何度「ヨー君は悪くない」って親に言っても信じてくれなくて…
そのせいで尚更カズ君の事が許せなくて…」

「まぁ、あんな事されたら許せねぇよな」

風香はゆっくり頷いた。

「…でも、さっき和馬の話題を出したって事は、なんか思う所があるんだろ?」

「ははは…やっぱりヨー君凄いね」

風香は苦笑いをした。

「…高校生になってからずっとね、中学生の時に3人で毎日一緒に楽しく過ごしてた時の事を思い出すんだ」

「……」

「カズ君は変わっちゃったし、ヨー君も遠くに行っちゃった。 
…でも、私だけは未だに変われなくて、ずっと過去の思い出を懐かしむ事しか出来ないんだ。 情けないよね、もう高校生なのにさ…」

風香は悲しそうに笑いながら言った。

「…情けなくねぇよ。 お前らしくていいじゃねぇか」

「そう…かな」

「あぁ。 アイツが変わるまで、俺達は確かに親友だった。 そこに嘘はねぇ」

「うん…そうだね…ねぇヨー君、実は明後日ね、夏祭りがあるんだ」

風香は顔を少しだけ赤くしながら、俺の事をジッと見る。

「も、もし良かったら…一緒に行かない…? 」

「夏祭り…か」

「う、うん。 昔は毎年3人で行ってたでしょ? 今年は2人になっちゃうけど、またヨー君と行きたくて…私、またヨー君と仲良くしたいんだ」

「……いや、行かねぇ」

「…え」

風香は悲しそうに呟いた。

「風香、キツい事言うぞ? 俺とお前は、別々の道を進んだ方が良い」

そう言うと、風香は涙目になった。
正直かなり心が痛いが、仕方がない事なんだ。

「俺とお前がまた仲良くなったとしても、あの過去は消えない。 嫌でも和馬の事を思い出しちまうだろ。 アイツの良い所も悪い所も全部な。
あいつの事を忘れるには、もうお互いに離れるしかねぇんだよ」

ここで俺がハッキリ言わないと、風香はずっと過去の思い出を忘れられないままだ。

風香が前に進むためには、ここで現実を突きつけるしかない。

「…でも私はヨー君と…っ!」

風香がそこまで言うと、風香の言葉を遮るように風香のスマホが鳴った。

「…鳴ってるぞ」

「…ごめん」

風香は鼻を啜り、咳払いをした後電話に出た。

「もしもし! お母さんどうしたの~?」

風香は涙声がバレないように元気に振る舞っている。

「え、買い出し? うん…まぁお散歩の途中だったからいいけど…え、急ぎ? えっと今は…」

会話の内容を察した俺は、ブランコから立ち上がる。

「ま、待って! …あ、ごめんお母さん! すぐ買って帰るから! 」

公園出ようと歩くと、電話を切った風香が俺の右手を掴んだ。

「ま、待ってよヨー君…!」

「…買い出し頼まれたんだろ?」

「うっ…でも…まだ話が…」

「…さっきも言った通り、お前はもう俺に関わらない方が良い。
俺達はもう元には戻れねぇよ」

そう言って風香の手を振り解き、歩き出す。

「っ…! 明日の13時! 私、またこの公園に来るから!」

「……」

「ヨー君が来るまでずっと…!待ってるから!」

俺は風香に返答せず、公園を出た。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「さて、卯月さんと何を話したの? 私達に全部話しな」

夕飯を食べた後、俺は自室で柊達に尋問されていた。

「…別に大した事じゃねぇよ。 ただの世間話…」

「僕達がそんな嘘を信じると思うかい?」

春樹が笑顔で言い、俺は目を逸らす。

「如月先輩は嘘が下手すぎます! ただの世間話なら、なんでずっと浮かない顔してるんですか」

「…別にそんな顔してな…」

「如月君。 貴方が私の作り笑いにすぐに気づくように、私も貴方の変化にはすぐ気づきます。 一緒に住んでいるんですから、舐めないで下さい」

皆に詰められ、俺はため息を吐き、両手を上に上げる。

「分かった分かった…降参だ。 お前達に嘘は通じないって理解したよ」

俺は諦め柊達に全てを話した。

「なるほど…それで、如月君は明日あの公園に行くんですか?」

「行かねぇ」

「でも…卯月さんは待ってるって…」

「…風香の為なんだ。 明日俺が風香に会いに行ったら、変に希望持たせちまうだろ。 
ならいっそ、風香に嫌われた方がいい」

柊にキッパリ言うと、桃井が俺の前に立った。

「卯月さんは多分まだ如月先輩の事が好きなんだと思いますよ?」

「…風香が俺の事をどう思ってようが、俺は恋愛をするつもりはないし、一緒に居ても風香が辛いだけだろ」

「分かってないですねぇ如月先輩は! 好きな人と一緒に居れるのに辛いわけないじゃないですか。 
だから卯月さんは明日待ってるって言ったんでしょう?」

桃井の言葉に、俺は黙ってしまう。
実際に八神に恋心を抱き、それが叶わなかった桃井だからこそ、俺は何も言い返せずにいた。

「如月先輩はどうしても、明日卯月さんの元に行く気はないんですか?」

「…あぁ」

「分かりました! なら、代わりに私が行って来ちゃいますっ」

「はぁ…?」

桃井を見ると、桃井は笑顔で俺を見ていた。

「喧嘩をしたのは如月先輩は一之瀬って人で、卯月さんは何も悪くないじゃないですか。 
多分卯月さんはずっと公園で待ち続ける事になるでしょうし、話し相手は必要でしょう?」

「な、なら私も一緒に…」

「渚咲先輩達は如月先輩と一緒に居てあげて下さいっ! 私は1人で大丈夫ですっ」

「…なんでお前がそこまでするんだよ。 お前と風香は赤の他人だろ」

「その赤の他人の恋愛の為に一生懸命になってくれたのは誰でしたっけ? 」

「…勝手にしろ」

俺は桃井から顔を逸らす。
桃井は元気よく「はいっ!」と呟いた。
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