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8話「鬼探し」
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「んで? 鬼探しってどうするんだ?」
俺とハクトは路地裏の地面に座って話し合っていた。
あの後金髪の不良が起き上がってきたが、ハクトがガチの目で睨んだらどこかに走っていった。
あれはマジで怖かった。
「主に聞き込みがメインだな。 ちょうど昨日鬼に襲われた奴がいるらしい」
「昨日!?」
「あぁ。 だから今からそいつに聞き込みに行く。 ついてこい」
そう言うと、ハクトは路地裏から出て迷わずに歩き出した。
俺も離れないようにハクトに近づいた。
数十分歩くと、とある建物についた。
「ここは?」
「鬼に襲われた奴が入院している病院だ」
「病院…」
ハクトは扉を開け、中に入った。
俺もハクトに続いて中に入った。
「あらハクトくん、いらっしゃい。 今日はどうしたの?」
白い服を着た大人の女性がハクトに話しかけてきた。
看護師さんだろうか? ハクトと親しげだ。
「あぁ、そこにいる奴の治療と、昨日鬼に襲われた奴に会いにきた」
ハクトがそう言うと、女性は俺の方を見る。
すると目を見開いて俺の所にきた。
「凄い怪我! すぐに来て!」
「え、ちょっ!」
「聞き込みには俺がやっとく」
ハクトにそう言われ、俺は女性に病室に連れて行かれた。
「この怪我はどうしたの?」
「ちょっと不良に絡まれまして…あっ、不良ってハクトじゃないですよ?」
「ふふっそんな事分かってるわよ」
女性はそう言うと、俺の顔の傷がある所に手を当てた。
すると、女性の手が緑色に光った。
「こ、これは…?」
「あら、初めてみた? これは治癒魔法よ」
治癒魔法…そんなのもあるのか…
「傷跡は完全には治らなくて応急処置程度だけどね。
あとはこれを貼って数日したら完全に治るわよ」
女性は俺の顔と怪我をした腕や足に絆創膏のような物を貼った。
「よし。 これでOK!」
「ありがとうございます。 …ところで、ハクトとお知り合いなんですか?」
「えぇ。 と言っても会ったのは今年だけどね、ハクトくんはいつも怪我人をうちに運んできてくれるの。 どれも重症なんだけど、ハクトくんが早めに運んできてくれたおかげで助かった命は多いのよ」
「ハクトがそんな事を…」
「彼は本当に優しい子でね。 絶対に嘘はつかないのよ。
あなたはハクトくんのお友達?」
「いえ、あいつとはさっき会ったばかりです。 不良に絡まれたのをたすけてもらって…」
「そう…よければだけど、彼とは仲良くしてあげてね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
病室を出た俺は、病院のロビーに戻ってきた。
ロビーに戻ると、ソファーにハクトが座っていた。
「よぉ、治療は終わったみたいだな」
「おう。 聞き込みはどうだった?」
「それは外で話す。 病院で話す事じゃないからな」
それもそうだな。
俺達は病院を出ると、歩きながら会話を再開した。
「聞き込みの結果で分かった事がある。 鬼の身体的特徴だ」
「マジか! めちゃくちゃ進歩じゃん!」
「まず、鬼の髪色は茶髪。 年齢は30代後半。 筋肉質の大男らしい」
「うーわ…想像しただけで怖ぇ…
だが身体的特徴が分かったのなら後はそれに当てはまる人物を探せばいいだけだ。
正直俺はいるのか? と思うくらいだ。
「ちなみに、これまでハクトが集めた情報を教えてもらってもいいか?」
「あぁ。 まずは鬼が人を襲う時間帯は深夜。 狙う人物は魔法使いだけだ。 性別は男しか狙わず、女の被害者はいない。
被害者は鬼に襲われた後は数日間は魔法を使えなくなる。
…ってくらいだな」
めちゃくちゃ集めてるな…
「数日間魔法を使えなくなるってのは、鬼が魔力を喰うからか?」
「あぁ。 鬼は魔力が大好物らしくてな。 鬼は魔法使いを殴って動けなくしてからゆっくりと魔力を喰らうらしい」
うわ怖っ…
魔力ってどんな味するんだ…?
「なるほどな…で? この次はどうするんだ?」
「次はパトロールだ」
「ぱ、パトロール?」
「鬼が出そうな場所、又は鬼が出た場所を周る。 ついでに絡まれてる奴がいたら助ける」
ハクトはそんな事もしてるのか…
俺と同い年くらいなのに凄いな…
「きゃあああ!! 泥棒!!」
俺とハクトが歩いていると、突然女性の悲鳴が聞こえた。
悲鳴が聞こえた方を見ると、年配の女性が地面に倒れており、女性物のバックを手に全力疾走する男が目に入った。
「ヨウタ! 追うぞ!」
「え! お、おう!」
俺とハクトは逃げた男を追いかけた。
男は俺達に気づいたのか、走るスピードを上げる。
そして、男は路地裏に入っていった。
「ヨウタ! お前はこのままあいつを追え! 俺は先回りする!」
「わ、分かった!」
ハクトと別れ、俺は全速力で男を追う。
路地裏は入り組んでいるし足場も悪い為、なんとか転ばないように走るのに必死だ。
男の方もそれは同じらしく、路地裏に入る前よりスピードが落ちている。
「く、くそ! くそおおお!!」
男は急に振り向いたと思えば、ナイフを持って俺にナイフを向けた。
「ち、近づくなぁ!! ぶ、ぶっ殺すぞ!」
俺は、その場に止まる。
「死にたくなかったら来た道を戻れ! 俺に関わるなぁ!」
まずいな…きっとあいつは頭が混乱してるんだ。
何をしでかすか分からない。
だが、ここで逃すわけにはいかない。
「そ、それは出来ない! 盗みは立派な犯罪だ」
ハクトが来るまでなんとか時間を稼ぐんだ。
「分かってんだよそんな事!! でも生きるには仕方ないんだよぉ!!」
「仕方ないなんて事はないだろ! お前にしか出来ない事がきっとあるはずだ!」
「綺麗事を…言ってんじゃねぇよ!!」
男が、ナイフを持って走ってきた。
やべっ…怒らせちまった!!
ナイフで刺されたら洒落にならねぇぞ…!?
「時間稼ぎご苦労」
突然、男の背後から現れたハクトが男の後頭部を掴み、地面に叩きつけた。
男は一瞬で気を失ったらしく、ピクリとも動かない。
「助かったぁ…」
「ったく焦ったぜ、この先で待ってたのに全然来ないからよ」
ハクトが来なかったら俺はナイフで刺されていただろう。
ハクトは男を抱え、歩き出した。
「…そいつどうするんだ?」
「王都の衛兵に引き渡す。 捕まえる事は俺達でも出来るが、そこから先は専門家の仕事だ。
…っとその前に、これを持ち主に返さないとな」
ハクトは盗まれたバッグを指差して言った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの後、バッグを持ち主の女性に返した後、男を王都をパトロール中だった衛兵に引き渡した。
バッグの持ち主の女性は俺達に感謝し、何かお礼をしたいと言っていたが、俺とハクトはそれを拒否した。
「ハクトは凄いよなぁ」
「どうした急に」
「いや、まだ若いのに人の為に動いてるだろ? なかなか出来るもんじゃねぇよ」
俺がそう言うと、ハクトはそっぽを向いた。
「人の為…ねぇ…。 どうだかな? それを言うならお前だって人の為に動いてるじゃねぇか」
「俺はハクトに手伝えって言われてなきゃこんな事はしてない」
「あっそ。 まだ周りたい箇所がある。 次はそこに行くぞ」
「りょうかーい」
俺達はまた路地裏に入ろうとした。
すると、突然火の玉が飛んできた。
「うぉっ」
ハクトはいち早くそれに気づき、右に飛んで回避した。
火の玉が飛んできた方を見ると、そこには見知った人物が居た。
「アリア!?」
「やっと見つけた…! あんた! ヨウタに何したの!?」
アリアがハクトを睨みつけていた。
なんでアリアがハクトを睨むんだ…?
…あっ!! 俺の怪我か!?
「ヨウタから離れて!! 炎砲《フレイム・キャノン》!!」
「おいおいお嬢さん…! 何か…! 勘違いしてないか…!」
アリアから放たれた3つの炎砲を、ハクトは全て躱した。
すげぇ…ハクトの奴、建物の壁を使って上手く避けやがった…
って違う! 今は関心してる場合じゃねぇ!
「アリア! 勘違いだ!」
アリアとハクトの間に入って言った。
アリアは首を傾げ、ハクトははぁ…と溜息をついた。
「なぁ~んだ! そうならそうと先に言って下さいよぉ~♩」
俺がアリアに全てを話すと、アリアは急に猫を被り始めた。
「さっきはごめんなさぁい♩ 私、勘違いしててぇ~」
「い、いや…別にいい。 あと、流石に手遅れだと思うぞ」
ハクトはアリアの変わりように少し引きながら、アリアにそう言った。
「…ちっ」
アリアが小さく舌打ちをした。
その舌打ちを俺とハクトは聞き逃さなかった。
「「…怖っ」」
俺とハクトの感想が被った。
「…で、ヨウタ。 アンタは学校サボってこんな所で何してんの? 学園長に聞いたけど、魔法道具店に行ったんじゃないの?」
「あっ…忘れてた」
そう言えば魔法道具店に行く為に商店街に来たんだった。
途中から鬼探しの方に意識がいってたぞ。
「はぁ…何してんのよ…。 ほら、帰るわよ」
「あぁいや…でもな…」
俺はチラッとハクトの方を見る。
ハクトは俺の視線に気づいたらしく、こっちへ来いと手招きをする。
俺はアリアにすぐ戻ると言ってハクトの元へ行った。
「…あれお前の彼女? 美少女じゃねぇか、中々やるなお前」
「ち、ちげぇよ!!」
今の話聞かれてないよな!?
チラッとアリアの方を見ると、退屈そうに地面を蹴っていた。
どうやら聞かれてなかったらしい。
「まぁそこら辺はいいとして…今日はありがとな、お前のおかげでいつもより楽しかった」
「お、おう」
「でもまさかお前が魔法学校の生徒だとは思わなかったぜ。 魔法が使えなくても魔法学校に入れんのか?」
「あー…そこはまぁ…いろいろあってな。 裏口入学とかではないからな!」
「そこは心配してねぇよ。 今日は付き合わせて悪かったな。 んじゃ、俺はこれで」
そう言ってハクトは路地裏に帰ろうとする。
…なんだろう、ここでハクトと別れたら後悔する気がする。
「ハクト!」
気がつくと、俺はハクトの名を呼んでいた。
ハクトは顔だけを後ろに向ける。
「明日、どこに来ればいい?」
「…は?」
「は?って…お前が言ったんだろ? 手伝えって」
そう言うと、ハクトは小さく笑った。
「明日学校終わるの何時だ?」
「午前授業だから、午後からなら合流できる」
「んじゃ午後1時にこの場所で」
そう言うと、今度こそハクトは路地裏に帰っていった。
さっき、俺はあえて"鬼探し"というワードを出さなかった。
万が一アリアに聞かれたら絶対に心配されるからだ。
「終わった? じゃあ帰るわよ」
「おう」
「…ていうかアンタ、マジでその怪我どうしたの?」
「不良に殴られた」
「はぁ!? そいつどこ! 今すぐ仕返ししに行くわよ!」
アリアが本気で怒る。
このままあの不良に会ったら下手したら殺しかねない雰囲気だ。
「大丈夫大丈夫。 不良はハクトが懲らしめてくれたからさ」
「いや私の気が晴れないんだけど…はぁ…まぁいいか」
アリアは疲れたらしく、喋るのをやめた。
ずっと俺を探してくれていたのだろうか?
だとしたら申し訳ない事をしたな…
「次からは出掛ける時ちゃんとアリアに言うようにするよ」
「そうして頂戴。 そうね…ご主人様を心配させた罰として今日の夕食は量を減らしましょう」
「えっ…いや…俺今日結構歩いたからお腹空いたんだけど…」
「学校をサボってご主人様に何も言わずに出かけて怪我した癖に? そう。 アンタは私に悪いとは思ってないのね。
あ~あ悲しいな~…私の使い魔はこんな奴だったなんて…」
アリアはバレバレの嘘泣きをする。
バレバレだ、バレバレだが…言ってる事は俺にグサグサ刺さるんだよなぁ…
「す、すみませんでした…夕食は減らしていただいて構いません」
「よろしい」
その日の夕食は本当にいつもよりも量を減らされ、そのせいで夜中に腹が鳴りまくってアリアにうるさいと怒られた。
あ~…腹減った…
俺とハクトは路地裏の地面に座って話し合っていた。
あの後金髪の不良が起き上がってきたが、ハクトがガチの目で睨んだらどこかに走っていった。
あれはマジで怖かった。
「主に聞き込みがメインだな。 ちょうど昨日鬼に襲われた奴がいるらしい」
「昨日!?」
「あぁ。 だから今からそいつに聞き込みに行く。 ついてこい」
そう言うと、ハクトは路地裏から出て迷わずに歩き出した。
俺も離れないようにハクトに近づいた。
数十分歩くと、とある建物についた。
「ここは?」
「鬼に襲われた奴が入院している病院だ」
「病院…」
ハクトは扉を開け、中に入った。
俺もハクトに続いて中に入った。
「あらハクトくん、いらっしゃい。 今日はどうしたの?」
白い服を着た大人の女性がハクトに話しかけてきた。
看護師さんだろうか? ハクトと親しげだ。
「あぁ、そこにいる奴の治療と、昨日鬼に襲われた奴に会いにきた」
ハクトがそう言うと、女性は俺の方を見る。
すると目を見開いて俺の所にきた。
「凄い怪我! すぐに来て!」
「え、ちょっ!」
「聞き込みには俺がやっとく」
ハクトにそう言われ、俺は女性に病室に連れて行かれた。
「この怪我はどうしたの?」
「ちょっと不良に絡まれまして…あっ、不良ってハクトじゃないですよ?」
「ふふっそんな事分かってるわよ」
女性はそう言うと、俺の顔の傷がある所に手を当てた。
すると、女性の手が緑色に光った。
「こ、これは…?」
「あら、初めてみた? これは治癒魔法よ」
治癒魔法…そんなのもあるのか…
「傷跡は完全には治らなくて応急処置程度だけどね。
あとはこれを貼って数日したら完全に治るわよ」
女性は俺の顔と怪我をした腕や足に絆創膏のような物を貼った。
「よし。 これでOK!」
「ありがとうございます。 …ところで、ハクトとお知り合いなんですか?」
「えぇ。 と言っても会ったのは今年だけどね、ハクトくんはいつも怪我人をうちに運んできてくれるの。 どれも重症なんだけど、ハクトくんが早めに運んできてくれたおかげで助かった命は多いのよ」
「ハクトがそんな事を…」
「彼は本当に優しい子でね。 絶対に嘘はつかないのよ。
あなたはハクトくんのお友達?」
「いえ、あいつとはさっき会ったばかりです。 不良に絡まれたのをたすけてもらって…」
「そう…よければだけど、彼とは仲良くしてあげてね」
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病室を出た俺は、病院のロビーに戻ってきた。
ロビーに戻ると、ソファーにハクトが座っていた。
「よぉ、治療は終わったみたいだな」
「おう。 聞き込みはどうだった?」
「それは外で話す。 病院で話す事じゃないからな」
それもそうだな。
俺達は病院を出ると、歩きながら会話を再開した。
「聞き込みの結果で分かった事がある。 鬼の身体的特徴だ」
「マジか! めちゃくちゃ進歩じゃん!」
「まず、鬼の髪色は茶髪。 年齢は30代後半。 筋肉質の大男らしい」
「うーわ…想像しただけで怖ぇ…
だが身体的特徴が分かったのなら後はそれに当てはまる人物を探せばいいだけだ。
正直俺はいるのか? と思うくらいだ。
「ちなみに、これまでハクトが集めた情報を教えてもらってもいいか?」
「あぁ。 まずは鬼が人を襲う時間帯は深夜。 狙う人物は魔法使いだけだ。 性別は男しか狙わず、女の被害者はいない。
被害者は鬼に襲われた後は数日間は魔法を使えなくなる。
…ってくらいだな」
めちゃくちゃ集めてるな…
「数日間魔法を使えなくなるってのは、鬼が魔力を喰うからか?」
「あぁ。 鬼は魔力が大好物らしくてな。 鬼は魔法使いを殴って動けなくしてからゆっくりと魔力を喰らうらしい」
うわ怖っ…
魔力ってどんな味するんだ…?
「なるほどな…で? この次はどうするんだ?」
「次はパトロールだ」
「ぱ、パトロール?」
「鬼が出そうな場所、又は鬼が出た場所を周る。 ついでに絡まれてる奴がいたら助ける」
ハクトはそんな事もしてるのか…
俺と同い年くらいなのに凄いな…
「きゃあああ!! 泥棒!!」
俺とハクトが歩いていると、突然女性の悲鳴が聞こえた。
悲鳴が聞こえた方を見ると、年配の女性が地面に倒れており、女性物のバックを手に全力疾走する男が目に入った。
「ヨウタ! 追うぞ!」
「え! お、おう!」
俺とハクトは逃げた男を追いかけた。
男は俺達に気づいたのか、走るスピードを上げる。
そして、男は路地裏に入っていった。
「ヨウタ! お前はこのままあいつを追え! 俺は先回りする!」
「わ、分かった!」
ハクトと別れ、俺は全速力で男を追う。
路地裏は入り組んでいるし足場も悪い為、なんとか転ばないように走るのに必死だ。
男の方もそれは同じらしく、路地裏に入る前よりスピードが落ちている。
「く、くそ! くそおおお!!」
男は急に振り向いたと思えば、ナイフを持って俺にナイフを向けた。
「ち、近づくなぁ!! ぶ、ぶっ殺すぞ!」
俺は、その場に止まる。
「死にたくなかったら来た道を戻れ! 俺に関わるなぁ!」
まずいな…きっとあいつは頭が混乱してるんだ。
何をしでかすか分からない。
だが、ここで逃すわけにはいかない。
「そ、それは出来ない! 盗みは立派な犯罪だ」
ハクトが来るまでなんとか時間を稼ぐんだ。
「分かってんだよそんな事!! でも生きるには仕方ないんだよぉ!!」
「仕方ないなんて事はないだろ! お前にしか出来ない事がきっとあるはずだ!」
「綺麗事を…言ってんじゃねぇよ!!」
男が、ナイフを持って走ってきた。
やべっ…怒らせちまった!!
ナイフで刺されたら洒落にならねぇぞ…!?
「時間稼ぎご苦労」
突然、男の背後から現れたハクトが男の後頭部を掴み、地面に叩きつけた。
男は一瞬で気を失ったらしく、ピクリとも動かない。
「助かったぁ…」
「ったく焦ったぜ、この先で待ってたのに全然来ないからよ」
ハクトが来なかったら俺はナイフで刺されていただろう。
ハクトは男を抱え、歩き出した。
「…そいつどうするんだ?」
「王都の衛兵に引き渡す。 捕まえる事は俺達でも出来るが、そこから先は専門家の仕事だ。
…っとその前に、これを持ち主に返さないとな」
ハクトは盗まれたバッグを指差して言った。
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あの後、バッグを持ち主の女性に返した後、男を王都をパトロール中だった衛兵に引き渡した。
バッグの持ち主の女性は俺達に感謝し、何かお礼をしたいと言っていたが、俺とハクトはそれを拒否した。
「ハクトは凄いよなぁ」
「どうした急に」
「いや、まだ若いのに人の為に動いてるだろ? なかなか出来るもんじゃねぇよ」
俺がそう言うと、ハクトはそっぽを向いた。
「人の為…ねぇ…。 どうだかな? それを言うならお前だって人の為に動いてるじゃねぇか」
「俺はハクトに手伝えって言われてなきゃこんな事はしてない」
「あっそ。 まだ周りたい箇所がある。 次はそこに行くぞ」
「りょうかーい」
俺達はまた路地裏に入ろうとした。
すると、突然火の玉が飛んできた。
「うぉっ」
ハクトはいち早くそれに気づき、右に飛んで回避した。
火の玉が飛んできた方を見ると、そこには見知った人物が居た。
「アリア!?」
「やっと見つけた…! あんた! ヨウタに何したの!?」
アリアがハクトを睨みつけていた。
なんでアリアがハクトを睨むんだ…?
…あっ!! 俺の怪我か!?
「ヨウタから離れて!! 炎砲《フレイム・キャノン》!!」
「おいおいお嬢さん…! 何か…! 勘違いしてないか…!」
アリアから放たれた3つの炎砲を、ハクトは全て躱した。
すげぇ…ハクトの奴、建物の壁を使って上手く避けやがった…
って違う! 今は関心してる場合じゃねぇ!
「アリア! 勘違いだ!」
アリアとハクトの間に入って言った。
アリアは首を傾げ、ハクトははぁ…と溜息をついた。
「なぁ~んだ! そうならそうと先に言って下さいよぉ~♩」
俺がアリアに全てを話すと、アリアは急に猫を被り始めた。
「さっきはごめんなさぁい♩ 私、勘違いしててぇ~」
「い、いや…別にいい。 あと、流石に手遅れだと思うぞ」
ハクトはアリアの変わりように少し引きながら、アリアにそう言った。
「…ちっ」
アリアが小さく舌打ちをした。
その舌打ちを俺とハクトは聞き逃さなかった。
「「…怖っ」」
俺とハクトの感想が被った。
「…で、ヨウタ。 アンタは学校サボってこんな所で何してんの? 学園長に聞いたけど、魔法道具店に行ったんじゃないの?」
「あっ…忘れてた」
そう言えば魔法道具店に行く為に商店街に来たんだった。
途中から鬼探しの方に意識がいってたぞ。
「はぁ…何してんのよ…。 ほら、帰るわよ」
「あぁいや…でもな…」
俺はチラッとハクトの方を見る。
ハクトは俺の視線に気づいたらしく、こっちへ来いと手招きをする。
俺はアリアにすぐ戻ると言ってハクトの元へ行った。
「…あれお前の彼女? 美少女じゃねぇか、中々やるなお前」
「ち、ちげぇよ!!」
今の話聞かれてないよな!?
チラッとアリアの方を見ると、退屈そうに地面を蹴っていた。
どうやら聞かれてなかったらしい。
「まぁそこら辺はいいとして…今日はありがとな、お前のおかげでいつもより楽しかった」
「お、おう」
「でもまさかお前が魔法学校の生徒だとは思わなかったぜ。 魔法が使えなくても魔法学校に入れんのか?」
「あー…そこはまぁ…いろいろあってな。 裏口入学とかではないからな!」
「そこは心配してねぇよ。 今日は付き合わせて悪かったな。 んじゃ、俺はこれで」
そう言ってハクトは路地裏に帰ろうとする。
…なんだろう、ここでハクトと別れたら後悔する気がする。
「ハクト!」
気がつくと、俺はハクトの名を呼んでいた。
ハクトは顔だけを後ろに向ける。
「明日、どこに来ればいい?」
「…は?」
「は?って…お前が言ったんだろ? 手伝えって」
そう言うと、ハクトは小さく笑った。
「明日学校終わるの何時だ?」
「午前授業だから、午後からなら合流できる」
「んじゃ午後1時にこの場所で」
そう言うと、今度こそハクトは路地裏に帰っていった。
さっき、俺はあえて"鬼探し"というワードを出さなかった。
万が一アリアに聞かれたら絶対に心配されるからだ。
「終わった? じゃあ帰るわよ」
「おう」
「…ていうかアンタ、マジでその怪我どうしたの?」
「不良に殴られた」
「はぁ!? そいつどこ! 今すぐ仕返ししに行くわよ!」
アリアが本気で怒る。
このままあの不良に会ったら下手したら殺しかねない雰囲気だ。
「大丈夫大丈夫。 不良はハクトが懲らしめてくれたからさ」
「いや私の気が晴れないんだけど…はぁ…まぁいいか」
アリアは疲れたらしく、喋るのをやめた。
ずっと俺を探してくれていたのだろうか?
だとしたら申し訳ない事をしたな…
「次からは出掛ける時ちゃんとアリアに言うようにするよ」
「そうして頂戴。 そうね…ご主人様を心配させた罰として今日の夕食は量を減らしましょう」
「えっ…いや…俺今日結構歩いたからお腹空いたんだけど…」
「学校をサボってご主人様に何も言わずに出かけて怪我した癖に? そう。 アンタは私に悪いとは思ってないのね。
あ~あ悲しいな~…私の使い魔はこんな奴だったなんて…」
アリアはバレバレの嘘泣きをする。
バレバレだ、バレバレだが…言ってる事は俺にグサグサ刺さるんだよなぁ…
「す、すみませんでした…夕食は減らしていただいて構いません」
「よろしい」
その日の夕食は本当にいつもよりも量を減らされ、そのせいで夜中に腹が鳴りまくってアリアにうるさいと怒られた。
あ~…腹減った…
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天三津空らげ
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日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
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