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15 そしてまた地雷を踏む人
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「ヒルダっ?!」
響いたのが公爵夫人の声だったので、公爵とその長男が青ざめる理由がロザリンダ以外にはわからない。
「開けて差し上げたらどうです?」
至って平坦に促すロザリンダを気味悪そうに見ながら公爵は怖々扉に近づき、細くあけた隙間から部屋の外を窺う。
「あなた……!」
そう小さく叫んだのは紛れもなくヒルダで公爵はホッと息を吐いた。
(戻ったのか……)
体を退けて入室を促すと、ヒルダとその後にお茶とスイーツを載せたワゴンを押す侍女が続く。
「母上?!」
「母上!具合は良くなられたのですか!?」
ちょっとテンションの違う息子たちの声に「え えぇ、もう大丈夫……ひっ?!」と答えたヒルダはロザリンダが室内にいるのに気付きすくみあがった。
「まあ公爵夫人、いくら身分しか取り柄のないハゲデブ公の元に綺麗ごとを並べて追いやろうとした娘とはいえそんな化け物を見るような目で見られては傷付きますわ?」
困ったように首を傾げる仕草は可愛らしいものの傷ついているようには見えなかったが、
「そそんなつもりではなかったのよロザリンダ、ごめんなさいね?」
ヒルダはロザリンダの顔色を伺うように言った。
無理もない、ヒルダのこの姿は「大切なお客様がいらっしゃるのでお茶を出してくださる間だけ元の姿に戻して差し上げます、その姿がいつまで保てるかは夫人の態度次第です」というメッセージ付きでロザリンダが一旦戻しただけだ。
__つまり、いつ戻っても不思議ではない。
それがわかっている夫人はレーゼラインがセイクレッド修道院の院長だと名乗っても竜を連れた騎士に軽く挨拶されても、いつものように辛うじて悲鳴をあげて卒倒するのを抑えた。
だが、
「王太子と王家から○○ら」
「この家から○○ら」
という慰謝料の額を聞いた途端、
「な、なんですって……?」
わなわなと震えながら目をつり上げた。
「あなた達、なんて事……王家を脅迫するなんて」
「脅迫なんてしておりませんわ」
とそれは優雅な仕草でティーカップとソーサーを手に宣うロザリンダに、
「そうよー、向こうから差し出して来たのよ?コレと一緒に」
と雑な手付きで片手にティーカップ、片手に鞭を引っ張り、ソファの陰に隠していた芋虫のようになった王太子を示す。
「なんてこと……!」
先程まで殊勝な態度で取り繕っていたヒルダは本来の姿を取り戻したせいか既に高慢な貴族夫人に戻りつつあった。
が、
「こんなことに加担したと知られれば我が家がクーデターを起こしたと噂され没落してしまうかもしれません!今すぐお金を返して謝罪なさい!もちろん我が公爵家から巻き上げた分も「分を知らないって恐ろしいわね」、?」
「同感ですレーゼライン様」
その勢いは長く続かなかった。
低く囁きあう二人の声音に恐怖を感じる前にヒルダは自身の身に纏っているドレスが急にぶかぶかになったと思った一瞬後には十歳くらいの子供の姿になっていた。
元々もう一度ロザリンダの姿にするつもりはなかった。
セイクレッドからの迎えが来る前にジルデ公の元へ行かされることがないよう保険のつもりでヒルダにロザリンダの姿をさせていたが、もうその必要はない。
だがこのまま元の姿でいさせるかまた別の姿にさせていくかについては迷っていた。
だが、今の態度でロザリンダの心は決まった。
「は、母上?!」
ここまでの過程を知らない次男は驚き、
「ヒルダっ!!」
身に染みている公爵は真っ青になり、
「__誰だ?」
中途半端に知っている長男は尤もな疑問を放った。
響いたのが公爵夫人の声だったので、公爵とその長男が青ざめる理由がロザリンダ以外にはわからない。
「開けて差し上げたらどうです?」
至って平坦に促すロザリンダを気味悪そうに見ながら公爵は怖々扉に近づき、細くあけた隙間から部屋の外を窺う。
「あなた……!」
そう小さく叫んだのは紛れもなくヒルダで公爵はホッと息を吐いた。
(戻ったのか……)
体を退けて入室を促すと、ヒルダとその後にお茶とスイーツを載せたワゴンを押す侍女が続く。
「母上?!」
「母上!具合は良くなられたのですか!?」
ちょっとテンションの違う息子たちの声に「え えぇ、もう大丈夫……ひっ?!」と答えたヒルダはロザリンダが室内にいるのに気付きすくみあがった。
「まあ公爵夫人、いくら身分しか取り柄のないハゲデブ公の元に綺麗ごとを並べて追いやろうとした娘とはいえそんな化け物を見るような目で見られては傷付きますわ?」
困ったように首を傾げる仕草は可愛らしいものの傷ついているようには見えなかったが、
「そそんなつもりではなかったのよロザリンダ、ごめんなさいね?」
ヒルダはロザリンダの顔色を伺うように言った。
無理もない、ヒルダのこの姿は「大切なお客様がいらっしゃるのでお茶を出してくださる間だけ元の姿に戻して差し上げます、その姿がいつまで保てるかは夫人の態度次第です」というメッセージ付きでロザリンダが一旦戻しただけだ。
__つまり、いつ戻っても不思議ではない。
それがわかっている夫人はレーゼラインがセイクレッド修道院の院長だと名乗っても竜を連れた騎士に軽く挨拶されても、いつものように辛うじて悲鳴をあげて卒倒するのを抑えた。
だが、
「王太子と王家から○○ら」
「この家から○○ら」
という慰謝料の額を聞いた途端、
「な、なんですって……?」
わなわなと震えながら目をつり上げた。
「あなた達、なんて事……王家を脅迫するなんて」
「脅迫なんてしておりませんわ」
とそれは優雅な仕草でティーカップとソーサーを手に宣うロザリンダに、
「そうよー、向こうから差し出して来たのよ?コレと一緒に」
と雑な手付きで片手にティーカップ、片手に鞭を引っ張り、ソファの陰に隠していた芋虫のようになった王太子を示す。
「なんてこと……!」
先程まで殊勝な態度で取り繕っていたヒルダは本来の姿を取り戻したせいか既に高慢な貴族夫人に戻りつつあった。
が、
「こんなことに加担したと知られれば我が家がクーデターを起こしたと噂され没落してしまうかもしれません!今すぐお金を返して謝罪なさい!もちろん我が公爵家から巻き上げた分も「分を知らないって恐ろしいわね」、?」
「同感ですレーゼライン様」
その勢いは長く続かなかった。
低く囁きあう二人の声音に恐怖を感じる前にヒルダは自身の身に纏っているドレスが急にぶかぶかになったと思った一瞬後には十歳くらいの子供の姿になっていた。
元々もう一度ロザリンダの姿にするつもりはなかった。
セイクレッドからの迎えが来る前にジルデ公の元へ行かされることがないよう保険のつもりでヒルダにロザリンダの姿をさせていたが、もうその必要はない。
だがこのまま元の姿でいさせるかまた別の姿にさせていくかについては迷っていた。
だが、今の態度でロザリンダの心は決まった。
「は、母上?!」
ここまでの過程を知らない次男は驚き、
「ヒルダっ!!」
身に染みている公爵は真っ青になり、
「__誰だ?」
中途半端に知っている長男は尤もな疑問を放った。
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