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アーニャ王女視点
王女は結構イイ性格をしています。
自室にトカゲを放り込まれたら、蛇を贈って返すタイプです。
こんな出会いじゃなければ、ヴィルヘルミナと気が合ったかも。
あ、バカップル注意です。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
「なよやかな花のようなのに絶対に折れない貴女こそ、私の理想の乙女だ。どうか私と結婚して欲しい」
そう言って私の前に跪いたのは、我が国に遊学で訪れた他国の皇太子だった。
国に婚約者がいると聞いた時は驚いたが、間も無く家ごと排斥する予定だと言う。
国に自分がいない方がより油断するだろうという判断から、他国を周って証拠集めをしているのだとも。
成金の子息にしつこく言い寄られたところを助けられた私は、すぐに彼に心を許してしまった。
普段人に言えない話や愚痴をつい溢してしまった私を、彼は優しく微笑んで見ていた。
そんな彼の話を聞くにつれ、立派な方だと思った。
自分が将来国を継ぐ時のために、予め皇室を支配しかねない勢力を削いでおくだなんて。
立派な家に降嫁したい、出来れば他国の王妃か王子妃に!そんな事ばかり考えて小競り合いを繰り返している姉妹たちを冷めた瞳で見ていた私は、彼の言葉に胸が熱くなった。
「彼に相応しくありたい」
と父である国王に意見を述べた。
胸を張って、できるだけ王女らしくあるように。
結果、父は私に謝罪し、皇太子殿下ーーミゲルは、私の婚約者となった。
父をはじめ、周囲はお祭り騒ぎだった。
「美しいが可愛げがない(自分を立てて欲しい男の戯言)」、「無駄に頭の回る女は嫌われる(馬鹿な女の言い掛かり)」と言われていた私が他国の皇太子妃の座を射止めたのだ。
結婚式はまだ先になるが、せめて婚約式だけでもと自国で行い、私はミゲル様と共に国を出た。
馬車でひとつの国を隔てた彼の国は遠い。
馬車で行く先々の宿に泊まりながらの旅は楽しかった。
「国に帰ってすぐはゴタゴタしてるだろうから、今のうちにゆっくりしておくといい。 早めの新婚旅行だと思えば良いさ」 と彼は急かすことなく観光や街を散策しながらのお茶や食事の時間を作ってくれた。
例の婚約者の実家の不正の証拠を握るために滞在が延びた時は、
「待たせてすまない」
とその街で一番大きいジュエリーショップで好きな宝石をプレゼントしてくれた。
こんなに幸せで良いのだろうか。
そういえばミゲルの友人の婚約者は今、大変辛い状況に置かれているのだと聞く。
「あの二人ならば心配いらない」
とミゲルは笑っていたが、女性の中で孤立するということは殿方の想像以上に陰湿なものだ。
異性で、しかも皇族として生まれ育ったミゲルには想像すら出来ないだろう。
「私にも、何か出来ないかしら……?」
ミゲルにとって親友の婚約者ならば、これからの付き合いは長くなるだろう。出来れば仲良くなりたい。
そう話すと、
「ああ、是非そうすると良い。リンデン嬢も華奢に見えてしっかりした令嬢だし、君と気も合うと思うよ?」
「なら、四人でお茶会をしたり、できますわね?」
「ああ。他にも城下にお忍びで行ったりな。ハイドラ家さえ潰せば皆幸せになれる」
「楽しみですわ」
他国から来た私には友人がいない。ミゲルから聞く話ではハワードという騎士もその婚約者もとても聡明でとにかく仲が良い。良いお友達になれそうな気がした。
ーーけれど、その思いは、あのパーティーで粉々に砕け散った。
ハワードの婚約者は彼を許さなかった。
かの婚約者はミゲルのことも許さなかった。
彼らを断罪して、彼女は会場を去って行った。
ミゲルは多くの貴族の不興を買って謹慎、彼の婚約者候補(まだ以前の婚約が正式に破棄されていない為だ)である私は客間のゲスト扱いだ。
王女という身分があるため、貴賓用の特別室を与えられてはいるが、外出は控えて欲しいと言われている。ミゲルにも当然会えない。
当たり前だ。
ハワードの婚約者だという女性は聞いていたよりずっと酷い目に遭っていた。
しかもそれを目の当たりにしたハワードは、何もしてこなかったのだという。
いくらそれが命令で必要悪だったとしても、裏から何か手を差し伸べることくらい出来たのではなかろうか。
ミゲルの婚約者だった女性というのは家ぐるみで不正をしていたというから同情の余地はないが、リンデン伯爵家は清廉潔白な家だという。その家の令嬢にあんな仕打ちをすれば怒られて当然ーーいや、ハワードの実家ごと縁を切られたという。
「恥ずかしい……」
そんな事を知らず、想像することもなく、自分はただ己の幸福に酔いしれていた。
なんと傲慢なことか。
「ごめんなさい……」
なんて愚かだったんだろう。自分たちの幸福な時間は、彼女の犠牲によって成り立っていたのだ。
許して貰えなくて良い、罵ってくれていい。リンデン嬢に謝りたい。
自室にトカゲを放り込まれたら、蛇を贈って返すタイプです。
こんな出会いじゃなければ、ヴィルヘルミナと気が合ったかも。
あ、バカップル注意です。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
「なよやかな花のようなのに絶対に折れない貴女こそ、私の理想の乙女だ。どうか私と結婚して欲しい」
そう言って私の前に跪いたのは、我が国に遊学で訪れた他国の皇太子だった。
国に婚約者がいると聞いた時は驚いたが、間も無く家ごと排斥する予定だと言う。
国に自分がいない方がより油断するだろうという判断から、他国を周って証拠集めをしているのだとも。
成金の子息にしつこく言い寄られたところを助けられた私は、すぐに彼に心を許してしまった。
普段人に言えない話や愚痴をつい溢してしまった私を、彼は優しく微笑んで見ていた。
そんな彼の話を聞くにつれ、立派な方だと思った。
自分が将来国を継ぐ時のために、予め皇室を支配しかねない勢力を削いでおくだなんて。
立派な家に降嫁したい、出来れば他国の王妃か王子妃に!そんな事ばかり考えて小競り合いを繰り返している姉妹たちを冷めた瞳で見ていた私は、彼の言葉に胸が熱くなった。
「彼に相応しくありたい」
と父である国王に意見を述べた。
胸を張って、できるだけ王女らしくあるように。
結果、父は私に謝罪し、皇太子殿下ーーミゲルは、私の婚約者となった。
父をはじめ、周囲はお祭り騒ぎだった。
「美しいが可愛げがない(自分を立てて欲しい男の戯言)」、「無駄に頭の回る女は嫌われる(馬鹿な女の言い掛かり)」と言われていた私が他国の皇太子妃の座を射止めたのだ。
結婚式はまだ先になるが、せめて婚約式だけでもと自国で行い、私はミゲル様と共に国を出た。
馬車でひとつの国を隔てた彼の国は遠い。
馬車で行く先々の宿に泊まりながらの旅は楽しかった。
「国に帰ってすぐはゴタゴタしてるだろうから、今のうちにゆっくりしておくといい。 早めの新婚旅行だと思えば良いさ」 と彼は急かすことなく観光や街を散策しながらのお茶や食事の時間を作ってくれた。
例の婚約者の実家の不正の証拠を握るために滞在が延びた時は、
「待たせてすまない」
とその街で一番大きいジュエリーショップで好きな宝石をプレゼントしてくれた。
こんなに幸せで良いのだろうか。
そういえばミゲルの友人の婚約者は今、大変辛い状況に置かれているのだと聞く。
「あの二人ならば心配いらない」
とミゲルは笑っていたが、女性の中で孤立するということは殿方の想像以上に陰湿なものだ。
異性で、しかも皇族として生まれ育ったミゲルには想像すら出来ないだろう。
「私にも、何か出来ないかしら……?」
ミゲルにとって親友の婚約者ならば、これからの付き合いは長くなるだろう。出来れば仲良くなりたい。
そう話すと、
「ああ、是非そうすると良い。リンデン嬢も華奢に見えてしっかりした令嬢だし、君と気も合うと思うよ?」
「なら、四人でお茶会をしたり、できますわね?」
「ああ。他にも城下にお忍びで行ったりな。ハイドラ家さえ潰せば皆幸せになれる」
「楽しみですわ」
他国から来た私には友人がいない。ミゲルから聞く話ではハワードという騎士もその婚約者もとても聡明でとにかく仲が良い。良いお友達になれそうな気がした。
ーーけれど、その思いは、あのパーティーで粉々に砕け散った。
ハワードの婚約者は彼を許さなかった。
かの婚約者はミゲルのことも許さなかった。
彼らを断罪して、彼女は会場を去って行った。
ミゲルは多くの貴族の不興を買って謹慎、彼の婚約者候補(まだ以前の婚約が正式に破棄されていない為だ)である私は客間のゲスト扱いだ。
王女という身分があるため、貴賓用の特別室を与えられてはいるが、外出は控えて欲しいと言われている。ミゲルにも当然会えない。
当たり前だ。
ハワードの婚約者だという女性は聞いていたよりずっと酷い目に遭っていた。
しかもそれを目の当たりにしたハワードは、何もしてこなかったのだという。
いくらそれが命令で必要悪だったとしても、裏から何か手を差し伸べることくらい出来たのではなかろうか。
ミゲルの婚約者だった女性というのは家ぐるみで不正をしていたというから同情の余地はないが、リンデン伯爵家は清廉潔白な家だという。その家の令嬢にあんな仕打ちをすれば怒られて当然ーーいや、ハワードの実家ごと縁を切られたという。
「恥ずかしい……」
そんな事を知らず、想像することもなく、自分はただ己の幸福に酔いしれていた。
なんと傲慢なことか。
「ごめんなさい……」
なんて愚かだったんだろう。自分たちの幸福な時間は、彼女の犠牲によって成り立っていたのだ。
許して貰えなくて良い、罵ってくれていい。リンデン嬢に謝りたい。
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