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フィオナとダイアナ 5
もちろんダイアナは奴の告白部分については端折ってただ「墓で謝罪していた」とだけ話したのであるが、
「そう……良かったわ」
聞き終わったフィオナがホッとしたように微笑んだのに対し、ダイアナは
「相変わらずですね、貴女は」と苦笑した。
「相変わらず?」
前世でも、それ程多く会話した覚えはないのだが。
「さっき私が前世名を名乗った時、“どうして?“とおっしゃいましたよね?」
「え ええ、だって」
セレーネ妃に付いてきたということはダイアナはトーリア出身、つまり外国人だ。
わざわざあの二人の前に前世名を名乗ってまでこの国に残ったところでメリットはない。
むしろ知らぬ顔で国に戻ってしまった方が平穏に過ごせたのではないだろうか?
「もちろん、この国に来て初めて鬼畜皇帝とアホ騎士の顔見た時は吐きそうになりましたし“コイツらに転生なんか許されるのか“って思いましたわ」
「そうでしょうね……」
先程の自分もショックで倒れそうだった。
震えも止まらなかったがネリーニ、いやダイアナが淹れてくれたお茶と強く手を握ってくれたお陰で今は少し落ち着いている。
が、
「__こんなに震えているくせに」
と握った手に力をこめられた。
「え?」
「こんなに震えて、手も冷たくなって__なのに自分の身をかえりみず、他人の心配ばかりして。ほんと貴女って人は」
「ダイアナ?」
「私だって口惜しかったんですよ?自分が幸せを感じる度、貴女のことを思い出して__あの時本当に自分にできることはなかったのか、他にあの猿どもに一矢報いる方法はなかったのか、王妃様がもっと貴女に寄り添ってくれていたら!もっと言えば私達は他の世話係と違って互いの主人ヅラした猿の正体を知っていたのだから手を取り合うことはできなかったのかって!なのに貴女は誰にも助けを求めず、全てを背負って死んでしまった。腹が立ちましたわ、原因のバカ猿はもちろん泣くしか出来なかった自分にも、そして貴女にも」
「えっ……」
(私?)
「最期くらい、いっそこんな世界滅んでしまえばいいとか、生きてる人間全員不幸になれとか言っても良かったのに」
「そんな破壊神みたいな、」
「ただ私含め餌食になった女生徒たちを救うだけじゃなく遺産まで残して、幸せを願って逝くなんて__、そんなの」
「重荷だったのね、ごめんなさ「違いますっ!」、」
「正直、遺産は有り難かったです。外国で事業を始めるのは言うほど容易いことではありませんから」
(じゃあどうして?)
「私の一番の後悔は、貴女を一人で逝かせてしまったこと」
「……!」
「貴女同様、私も疲れきっていました__あの学園での生活に。出来ることなら死んでしまいたかった、けれどそんな勇気さえ当時の私にはなかった」
「なら、何故」
「貴女があまりにも変わっていないからです」
「?」
「そうやって他人の幸福は願うくせに自分の幸福は追わない。今だってどうして黙っていれば関わらずに済んだのにわざわざ巻き込まれに飛び込んだのかって思ってるでしょう?なんだってそう利他的なんですか貴女は」
「利他的__かしら?」
(結構我儘に育てられたと思うのだけど)
「ほら、自覚がないでしょう。もっと自分のことだけ考えたらいいのに」
「割と利己的だと思うのだけど……」
「自分が一番大事な人間は“あなたにこの子に触れる資格はありません“なんて皇帝に怒鳴りつけたりしないし、自分の侍女が嫌な思いするんじゃないかって真っ先に気にかけたりしません。利己的主義っていうのはもっとこう__あの国王みたいなのを言うんですわ」
「それは、」
(確かにあの王太子の父親なだけあって欲望の権化みたいな人だったけど)
「明らかに違うでしょう?貴女は自分を犠牲にすることを厭わないくせに、他人が不幸になることは嫌うんです。本っ当に救いようのないお人好しですわ」
「お人好し……?」
言い切られてフィオナはなんだかショックを受けた。
「そう……良かったわ」
聞き終わったフィオナがホッとしたように微笑んだのに対し、ダイアナは
「相変わらずですね、貴女は」と苦笑した。
「相変わらず?」
前世でも、それ程多く会話した覚えはないのだが。
「さっき私が前世名を名乗った時、“どうして?“とおっしゃいましたよね?」
「え ええ、だって」
セレーネ妃に付いてきたということはダイアナはトーリア出身、つまり外国人だ。
わざわざあの二人の前に前世名を名乗ってまでこの国に残ったところでメリットはない。
むしろ知らぬ顔で国に戻ってしまった方が平穏に過ごせたのではないだろうか?
「もちろん、この国に来て初めて鬼畜皇帝とアホ騎士の顔見た時は吐きそうになりましたし“コイツらに転生なんか許されるのか“って思いましたわ」
「そうでしょうね……」
先程の自分もショックで倒れそうだった。
震えも止まらなかったがネリーニ、いやダイアナが淹れてくれたお茶と強く手を握ってくれたお陰で今は少し落ち着いている。
が、
「__こんなに震えているくせに」
と握った手に力をこめられた。
「え?」
「こんなに震えて、手も冷たくなって__なのに自分の身をかえりみず、他人の心配ばかりして。ほんと貴女って人は」
「ダイアナ?」
「私だって口惜しかったんですよ?自分が幸せを感じる度、貴女のことを思い出して__あの時本当に自分にできることはなかったのか、他にあの猿どもに一矢報いる方法はなかったのか、王妃様がもっと貴女に寄り添ってくれていたら!もっと言えば私達は他の世話係と違って互いの主人ヅラした猿の正体を知っていたのだから手を取り合うことはできなかったのかって!なのに貴女は誰にも助けを求めず、全てを背負って死んでしまった。腹が立ちましたわ、原因のバカ猿はもちろん泣くしか出来なかった自分にも、そして貴女にも」
「えっ……」
(私?)
「最期くらい、いっそこんな世界滅んでしまえばいいとか、生きてる人間全員不幸になれとか言っても良かったのに」
「そんな破壊神みたいな、」
「ただ私含め餌食になった女生徒たちを救うだけじゃなく遺産まで残して、幸せを願って逝くなんて__、そんなの」
「重荷だったのね、ごめんなさ「違いますっ!」、」
「正直、遺産は有り難かったです。外国で事業を始めるのは言うほど容易いことではありませんから」
(じゃあどうして?)
「私の一番の後悔は、貴女を一人で逝かせてしまったこと」
「……!」
「貴女同様、私も疲れきっていました__あの学園での生活に。出来ることなら死んでしまいたかった、けれどそんな勇気さえ当時の私にはなかった」
「なら、何故」
「貴女があまりにも変わっていないからです」
「?」
「そうやって他人の幸福は願うくせに自分の幸福は追わない。今だってどうして黙っていれば関わらずに済んだのにわざわざ巻き込まれに飛び込んだのかって思ってるでしょう?なんだってそう利他的なんですか貴女は」
「利他的__かしら?」
(結構我儘に育てられたと思うのだけど)
「ほら、自覚がないでしょう。もっと自分のことだけ考えたらいいのに」
「割と利己的だと思うのだけど……」
「自分が一番大事な人間は“あなたにこの子に触れる資格はありません“なんて皇帝に怒鳴りつけたりしないし、自分の侍女が嫌な思いするんじゃないかって真っ先に気にかけたりしません。利己的主義っていうのはもっとこう__あの国王みたいなのを言うんですわ」
「それは、」
(確かにあの王太子の父親なだけあって欲望の権化みたいな人だったけど)
「明らかに違うでしょう?貴女は自分を犠牲にすることを厭わないくせに、他人が不幸になることは嫌うんです。本っ当に救いようのないお人好しですわ」
「お人好し……?」
言い切られてフィオナはなんだかショックを受けた。
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