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フィオナとダイアナ 7
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渡された物の説明をなんとも言えない表情で聞いていたフィオナに、
「そうそう、フィオナ様のご両親についてですが」
と新たな情報を付け加えた。
「フィオナ様のご両親は前世とは違う方なのだそうですわ。フィオナ様だけでなく私やヤツらも……前世に係わりがあったのは私たち四人だけ、ということですね」
「……何故断言できるの?」
過程は少々違えど“父親“が自分にしたことは変わらない。
「上手く説明できませんけど、あのエセ紳士皇帝が言うには前世の記憶がある者ならひと目でわかるんだそうです。因果関係は不明ですがあの男は生まれてすぐから前世の記憶があったらしくて。言われてみれば私たち二人もあの猿二人も前世とはまるで容姿が違うのにひと目で気がつきましたし、フィオナ様もそうだったのではありませんか?」
言われてみれば。
前世の記憶が濁流のように流れ込んできた途端、自分は目の前の人物の名前が口をついて出ていた。
黒髪だったキリアンと今のフェアルドとでは容姿だけでなく纏う雰囲気も全く違うというのに。
いや、それより、
「生まれてすぐ……?」
だとしたら、
「生まれてからずっとフローリア様の生まれ変わりを探してたんでしょうね、あの男は」
「…………」
「まさに時空を超えたストーカー、変態極まれりですわ!!」
力強く拳を握って宣言するダイアナにもはやどう返したらいいかわからない。
途方に暮れた顔をしたフィオナに、
「脱線して申し訳ありません。つまりえぇと、フィオナ様の現在のご両親ナスタチアム侯爵夫妻は本心からフィオナ様を愛していらっしゃるにもかかわらず、あの皇帝の口車に乗せられて愛娘を送り出してしまったことを心底悔いて嘆き暮らしていらっしゃるので“許せとは言えないがせめて話を聞いてやってほしい“との伝言ですわ。もちろんフィオナ様が嫌なら応じる必要はございません、これからはやりたいことだけやれば良いのです」
「やりたいこと……?」
「ええ。財政が傾くくらい途方もない贅沢をしてみるとか」
「どうやって?」
「国内の高級ドレス全部買い漁ってみるとか、世界中の宝玉と美味珍味を集めさせるとか__あ それとも国ひとつ取ってきてほしいっておねだりしてみます?」
「……あまり意味のないことのような気がするのだけど……」
「う~んあとはまあ、皇帝はとりあえず働かせておいて処遇を好きに決めたら良いですわ。ディオンもです、気がすむまで働き蜂としてこき使ってから好きに処刑したら良いのでは?」
「貴女は、それで良いの?」
「もちろん私にもアレらを殺す権利はありますが、あくまでフィオナ様の次にです。フィオナ様がしたいようにしてからまだ生きていたらさせていただきますわ」
そう淡々と告げるダイアナに迷いはなく、(彼女は完全に吹っ切れているのね)と羨ましく思う。
「それに、」
「それに?」
「この御子についてもフィオナ様があの悪虐皇帝に会わせても良いと思えるまで顔を見せてあげる必要もありませんし、お手元で大切に育てたいならば顔を合わさず必要経費を請求だけするもよし、子育てなんてしたくない、外で遊びたいと仰るならいくらでも行って構わないのですよ?こんなにお若いうちにあの変態に捕まってしまったとはいえフィオナ様の人生はまだまだこれからです、アイツから政権をぶんどって女王として君臨するのでも、死んだことにして静かな場所で暮らすのもどこでもお供致します。貴女はまだ__間に合うのですから」
「そうそう、フィオナ様のご両親についてですが」
と新たな情報を付け加えた。
「フィオナ様のご両親は前世とは違う方なのだそうですわ。フィオナ様だけでなく私やヤツらも……前世に係わりがあったのは私たち四人だけ、ということですね」
「……何故断言できるの?」
過程は少々違えど“父親“が自分にしたことは変わらない。
「上手く説明できませんけど、あのエセ紳士皇帝が言うには前世の記憶がある者ならひと目でわかるんだそうです。因果関係は不明ですがあの男は生まれてすぐから前世の記憶があったらしくて。言われてみれば私たち二人もあの猿二人も前世とはまるで容姿が違うのにひと目で気がつきましたし、フィオナ様もそうだったのではありませんか?」
言われてみれば。
前世の記憶が濁流のように流れ込んできた途端、自分は目の前の人物の名前が口をついて出ていた。
黒髪だったキリアンと今のフェアルドとでは容姿だけでなく纏う雰囲気も全く違うというのに。
いや、それより、
「生まれてすぐ……?」
だとしたら、
「生まれてからずっとフローリア様の生まれ変わりを探してたんでしょうね、あの男は」
「…………」
「まさに時空を超えたストーカー、変態極まれりですわ!!」
力強く拳を握って宣言するダイアナにもはやどう返したらいいかわからない。
途方に暮れた顔をしたフィオナに、
「脱線して申し訳ありません。つまりえぇと、フィオナ様の現在のご両親ナスタチアム侯爵夫妻は本心からフィオナ様を愛していらっしゃるにもかかわらず、あの皇帝の口車に乗せられて愛娘を送り出してしまったことを心底悔いて嘆き暮らしていらっしゃるので“許せとは言えないがせめて話を聞いてやってほしい“との伝言ですわ。もちろんフィオナ様が嫌なら応じる必要はございません、これからはやりたいことだけやれば良いのです」
「やりたいこと……?」
「ええ。財政が傾くくらい途方もない贅沢をしてみるとか」
「どうやって?」
「国内の高級ドレス全部買い漁ってみるとか、世界中の宝玉と美味珍味を集めさせるとか__あ それとも国ひとつ取ってきてほしいっておねだりしてみます?」
「……あまり意味のないことのような気がするのだけど……」
「う~んあとはまあ、皇帝はとりあえず働かせておいて処遇を好きに決めたら良いですわ。ディオンもです、気がすむまで働き蜂としてこき使ってから好きに処刑したら良いのでは?」
「貴女は、それで良いの?」
「もちろん私にもアレらを殺す権利はありますが、あくまでフィオナ様の次にです。フィオナ様がしたいようにしてからまだ生きていたらさせていただきますわ」
そう淡々と告げるダイアナに迷いはなく、(彼女は完全に吹っ切れているのね)と羨ましく思う。
「それに、」
「それに?」
「この御子についてもフィオナ様があの悪虐皇帝に会わせても良いと思えるまで顔を見せてあげる必要もありませんし、お手元で大切に育てたいならば顔を合わさず必要経費を請求だけするもよし、子育てなんてしたくない、外で遊びたいと仰るならいくらでも行って構わないのですよ?こんなにお若いうちにあの変態に捕まってしまったとはいえフィオナ様の人生はまだまだこれからです、アイツから政権をぶんどって女王として君臨するのでも、死んだことにして静かな場所で暮らすのもどこでもお供致します。貴女はまだ__間に合うのですから」
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