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フィオナとダイアナ 8

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「間に合う……、私が?」
「えぇ。あの猿、じゃない陛下の子を産んでいるとはいえフィオナ様は漸く十六になろうというところ。今から学園に通ったっておかしくはありません。別の戸籍を買って誰もフィオナ様を知らない遠い遠い国に留学することだってできますのよ?“今“が辛いなら逃げ出してしまったっていい、嫌な過去なんて未来で上書きしてしまえば良いのでしょう?」
「ダイアナ……」
それは前世過去の自分がネリーニに言った言葉だ。
そしてネリーニダイアナはそうした。
乗り越えて生ききった彼女にそう言われてしまえば、死んで逃げた自分には返す言葉がない。

「あの執着心の塊はフィオナ様を学園にも行かせず他の子息との交流も許さず、幼い頃から囲い込んでいたのでしょう?十代の時は特別なのですよ、まして私たち二人はあの我慢のきかない馬鹿どものせいで楽しい学園生活とは無縁だったのですもの。今から希望したところで文句など言わせませんわ」

(逞しいというか頼もしいというか……、いやそれより)
先程から“エセ紳士“だの“悪虐皇帝“だのバカ猿だの、言いたい放題である。
よくこうもバラエティに富んだ皮肉な言い回しが思いつくものだと感心してしまう。
そしてそれを見透かしたように、
「フィオナ様も叫んでみたらいかがですか?“このバカ猿ー!“とか“大嘘つきのペテン師野郎ー!!“とか」
「こ、ここで?」
「ここで窓から叫んでも良いですし皇帝の居室に近付くのはお嫌でしょうからとりあえずヤツの私室の窓目掛けてとか?」
「気が触れたと思われないかしら?」
「噂の後始末はヤツらの仕事ですから気になさる必要はありません」
「そ、そうなの?」
「あと“お前なんて死刑だ“とかどうです?」
「…………」
殺したいわけではない。
死んでほしいとは__前世以前の私なら願っていたかもしれないが。
今はどうだろう?

五歳で出会って、婚約して。
七歳でお披露目して、十四歳になってデビューしてからも、フェアルドが自分に無体な真似をしたことはなかった__後宮に入るまでは、だが。
考えてみれば確かに異常なくらい、フェアルド以外の異性と自分が交流をもつのを嫌がった。
勉学に関してもこの国では家庭教師と学園に通うパターンと二通りあり、どちらを選ぶかは原則個人の自由だ。実家の経済状況にもよるが。

家庭教師を科目ごとに家に招いたり、住み込みで雇ったりは資産がなければできないことだから。
もちろんフィオナの生家は指折りの金持ちだが、ナスタチアム侯爵夫妻はフィオナに選ばせるつもりだった。

それをよしとしなかったのは、フェアルドの方だ。
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