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フィオナとダイアナ 9
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もうすぐフィオナの十六の誕生日だ。
「欲しいものはないか」とフェアルドから手紙が来てはいたがフィオナは放置していた。
因みに手紙に関してはダイアナの検閲を通過したもののみがフィオナのもとへ辿りつき、フェアルドからの手紙に至ってはダイアナの音声代読(?)だ。
ダイアナ曰く「こんな手紙に触れてはフィオナ様のお手が穢れます!」だそうだ。
だが前回後宮の一部エリアのみしか与えられなかった時と違い、現在のフィオナは皇城の全てのエリアへの自由な出入りを許されている。
周囲もフィオナを「皇妃」として扱い、あまりの違いにフィオナはどうしていいかわからなかった。
「あの人、どうしてそんなに子供が欲しかったのかしら……?」
自室でお茶のカップを手に戸惑い気味に呟くと、
「うーん……、あんな精神異常者の深層心理はわかりませんけど、ただ子供が欲しいというより、フィオナ様との御子が欲しかったのではないかと思いますわ」
筆頭付き侍女でありながら茶飲み友達兼話し相手という立場を得たダイアナもカップを手に応じた。
「無理矢理あんなことまでして?」
「それだけフィオナ様にご執心ということなんでしょうけれど、迷惑ですわよねぇ」
しみじみと語るダイアナを咎める者はいない。フィオナの自室には基本フィオナとダイアナしかいないからだ。
“皇帝からの勅令“というカードを持つダイアナの言動を諌められる者はいない。フィオナを除いて。
フィオナは先日渡されたものをしげしげと見つめた。
瀟洒な作りの扇子で、見たところ普通なのだが__……、
「とりあえず、それ持って庭園にでも行ってみませんこと?少しは気晴らしになるかもしれませんわ」
そして今、スパーンと小気味良い音が庭園に響いた。
フィオナがいきなり目の前に現れたフェアルドを手にしていた扇子で引っ叩いたからである。
「これは重さはないんですけど鉄線が仕込んであるので虫が出たら思いきり叩いてみると良いですわ。きっと良い音がしますわよ?」
と悪戯っぽく笑って渡してくれたものだ。
__まさかここまで良い音がするとは思わなかったが。
「目の前にアレが現れてどうして良いかわからなかったらとりあえず全力で叩いてみたらいい」
と言われていたものでもある。
急に目の前にフェアルドが現れたので思わず思いきり振りかざしてしまったが、フィオナも目の前のフェアルドも想定外の出来事に同じく固まっていた。
__言った本人は一歩下がって涼しい顔をしているが。
因みに痛そうな顔のフェアルドの背後には顔が見えないように深く頭を下げているディオンの姿がある。
「フィオナ、それは……?」
叩かれた頬をさすりながら優しく訊ねるフェアルドに、
「えぇと、これは……ダイアナがくれたものです。突然現れてどうしていいかわからない時はこれで叩けって……」
「そ そうか……うん、それなら問題ない」
(ないのか……)
一瞬固まったフェアルドはしかし直ぐに笑顔になると、
「その、実は君に訊きたいことがあって……偶然にでも庭園で会えたらと思っていたんだ」
__それはつまり出待ちされていたということだろうか?
「訊きたいこと……?」
「うん。もうすぐフィーの誕生日だろう?何か、欲しいものはないかと思って。俺が勝手に選んだものは、嫌だろうから」
「…………」
十五の誕生日は騙し打ちの後宮入りから懐妊までのゴタゴタの中で過ぎ去ってしまった。
もちろん周囲は祝おうとしたがフィオナが相手にしなかった。
今でもフェアルドに何かしてもらおうとは思わない。
黙ってしまったフィオナに、
「今すぐでなくていいから__よく考えて、何かあったら教えてくれ」
無理矢理に作った笑顔でそう言って、フェアルドは離れて行った。
「欲しいものはないか」とフェアルドから手紙が来てはいたがフィオナは放置していた。
因みに手紙に関してはダイアナの検閲を通過したもののみがフィオナのもとへ辿りつき、フェアルドからの手紙に至ってはダイアナの音声代読(?)だ。
ダイアナ曰く「こんな手紙に触れてはフィオナ様のお手が穢れます!」だそうだ。
だが前回後宮の一部エリアのみしか与えられなかった時と違い、現在のフィオナは皇城の全てのエリアへの自由な出入りを許されている。
周囲もフィオナを「皇妃」として扱い、あまりの違いにフィオナはどうしていいかわからなかった。
「あの人、どうしてそんなに子供が欲しかったのかしら……?」
自室でお茶のカップを手に戸惑い気味に呟くと、
「うーん……、あんな精神異常者の深層心理はわかりませんけど、ただ子供が欲しいというより、フィオナ様との御子が欲しかったのではないかと思いますわ」
筆頭付き侍女でありながら茶飲み友達兼話し相手という立場を得たダイアナもカップを手に応じた。
「無理矢理あんなことまでして?」
「それだけフィオナ様にご執心ということなんでしょうけれど、迷惑ですわよねぇ」
しみじみと語るダイアナを咎める者はいない。フィオナの自室には基本フィオナとダイアナしかいないからだ。
“皇帝からの勅令“というカードを持つダイアナの言動を諌められる者はいない。フィオナを除いて。
フィオナは先日渡されたものをしげしげと見つめた。
瀟洒な作りの扇子で、見たところ普通なのだが__……、
「とりあえず、それ持って庭園にでも行ってみませんこと?少しは気晴らしになるかもしれませんわ」
そして今、スパーンと小気味良い音が庭園に響いた。
フィオナがいきなり目の前に現れたフェアルドを手にしていた扇子で引っ叩いたからである。
「これは重さはないんですけど鉄線が仕込んであるので虫が出たら思いきり叩いてみると良いですわ。きっと良い音がしますわよ?」
と悪戯っぽく笑って渡してくれたものだ。
__まさかここまで良い音がするとは思わなかったが。
「目の前にアレが現れてどうして良いかわからなかったらとりあえず全力で叩いてみたらいい」
と言われていたものでもある。
急に目の前にフェアルドが現れたので思わず思いきり振りかざしてしまったが、フィオナも目の前のフェアルドも想定外の出来事に同じく固まっていた。
__言った本人は一歩下がって涼しい顔をしているが。
因みに痛そうな顔のフェアルドの背後には顔が見えないように深く頭を下げているディオンの姿がある。
「フィオナ、それは……?」
叩かれた頬をさすりながら優しく訊ねるフェアルドに、
「えぇと、これは……ダイアナがくれたものです。突然現れてどうしていいかわからない時はこれで叩けって……」
「そ そうか……うん、それなら問題ない」
(ないのか……)
一瞬固まったフェアルドはしかし直ぐに笑顔になると、
「その、実は君に訊きたいことがあって……偶然にでも庭園で会えたらと思っていたんだ」
__それはつまり出待ちされていたということだろうか?
「訊きたいこと……?」
「うん。もうすぐフィーの誕生日だろう?何か、欲しいものはないかと思って。俺が勝手に選んだものは、嫌だろうから」
「…………」
十五の誕生日は騙し打ちの後宮入りから懐妊までのゴタゴタの中で過ぎ去ってしまった。
もちろん周囲は祝おうとしたがフィオナが相手にしなかった。
今でもフェアルドに何かしてもらおうとは思わない。
黙ってしまったフィオナに、
「今すぐでなくていいから__よく考えて、何かあったら教えてくれ」
無理矢理に作った笑顔でそう言って、フェアルドは離れて行った。
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