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連載
アンサー編 王女エルローゼ
しおりを挟む本日四話目の投稿です、ご注意下さい。
また、感想欄は最終話投稿時まで閉じさせていただいておりますm(_ _)m
*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*
「君が僕の…_…だ」
こう言ってくれたのはアベルに出会うよりずっと前に出会った王子さま。
エルローゼはずっと彼の花嫁になる日を心待ちにしていた。
誘拐後、しばらく自分の中ではアベルと混同していた。
王子さまの瞳の色は、アベルと同じ瑠璃色だったからだ。
お母様を亡くした時、慰めてくれた優しい王子さま。
金色の髪がキラキラしてとても綺麗だった。
私の髪も金色だけど、私よりずっと綺麗ないろ。
お父さまに調べてもらったら、あの人はペンタス帝国っていう大きな国の王子さまだったんだって。
彼なら申し分ないって、お父さまも大喜びしてた。
大きくなったら、彼のお嫁さんになるの。大国のお妃さまに、私はなれるんだって。
でも、その後私はよく襲撃されるようになった。
お父さま曰く、
「ペンタスの王子の妃の立場を狙う者は多い。お前を排除すれば、王子妃の座が空くと思っているのだろう」
と言われた。
「そっか…、皆私が羨ましいのね」
王女に生まれて、国王であるお父さまからも大事にされて可愛がられている私が、大国の王子さまを射止めちゃったんだもの。
そりゃ悔しいよね?
だからって、私に当たるのは間違ってる。
王子さまが選ぶのはお姫さまに決まってるのに。
平民が見初められてお妃になれるのなんて、童話だけ。
王子さまには私みたいなお姫さまが選ばれるのが当然なの。
お父さまは優秀な騎士をどんどん私への護衛にまわした。
でも、護衛は増えても襲撃はあまり減らなかった。
「でも、私と王子さまの婚約は発表されていないのに、何故そんなに知れ渡ってしまっているの?」
「ペンタスには魔法使いもいるし、数は少ないが獣人もいるらしいからな……こういう話は黙っていても知れ渡ってしまうものだ。あちら側が準備など始めれば、特にな」
「まぁ!では王子さまはお城で既に私を迎える準備をしてくださってるのね!でも、獣人は少し怖いわ…_野蛮そうだもの」
私の王子さまは人間でよかった。
金髪に青色の瞳の、とても美しい人だった。
私はまだまだお嫁にいける年齢ではないけれど、
「その日の為に、もっと自分を磨きかなきゃ」
と高価な香油や化粧品などを買い漁り、ドレスを取っ替え引っ替えする日々。
そんな王女の贅沢をにこにこと容認する王。
それをきつい目で睨みつける王妃とその子供たち。
だが、「エルローゼはいずれあのペンタスに嫁ぐのだ。最高級品を与えて育てるのは当然だろう?」と言われてしまえば口を噤むほかなかった。
そして誰かに叱責されることも、表立って意地悪されることもなく十まで育った王女は誘拐される。
手引きしたものが城内にいたのだが、早々に自決してしまい、黒幕は分からなかった。
アベルに助け出され、傷ひとつなく城に戻ったものの、筋金入りの温室育ちは暫くアベルに依存した。
しかも当時錯乱していたため、約束した王子とアベルを同一人物と認識してしまい、側から離さなかったのだ。
「あの時には、皆に迷惑かけちゃったわ……」
王子さまとアベルの目の色が同じだったから、縋りついて離さなかったらしい。
「アベルの髪は王子さまと違って青なのに、私ったら何故間違えていたのかしら?」
でも、助けてくれた時のアベルは素敵だった。
私が閉じ込められていた箱の蓋をこじ開けて、「ご無事ですかっ?!王女殿下!」
と力強く抱き上げて、箱から出してくれた。
あの時は、ほんとに王子さまに見えたの。
だから、あのまま私専用の護衛になってくれて嬉しかったの。
王子さまじゃなくても、アベルはかっこいいもの。
メイド達も言っていたもの、とても人気のある騎士だって、騎士団の演習を見学にきた令嬢や夫人たちがこぞってアベルに差し入れや招待状を渡したがるって。
でも、彼は私が呼んだらいつでも駆けつけてこなければいけないから、誰の招待も受けないの。
誰よりも私を優先してくれる私だけの騎士。
「殿下が嫁がれるその日まで、お守りいたします」って誓ってくれた。
嫁ぐ時も、一緒に連れて行けたらいいのに……でもそれは、お父さまもダメだって言うの。
若い男性の騎士を連れて行くなんて、とんでもないってお母さま達からも非難されたけど、お母さまは本当のお母さまじゃないし、そのお母さまたちの子供たちだって誘拐されたことなんかないくせに。
私がどれだけ恐ろしい目にあったか分からないから、そんな事が言えるのよ。
でも、私が十二になった頃、お父さまにも「どうもペンタスも若い男性の騎士をそば近くに置いている事をよく思っておらぬようだ。アベルとは距離をおいた方が良い」って言ってきたの。
それを私が嫌だって泣き叫んで、誘拐された時と同じ錯乱状態になったらお父さまが折れた。
「ではアベルを結婚させよう。独身では外聞がよくないが、既婚者であれば無責任な噂も消せるだろうし、あちらにも言い分がたつ」
「ありがとう、お父さま!!」
私はお父さまに抱きついた。
私も知らなかったけれど、アベルには想う令嬢がいたのですって。
伯爵令嬢で、婚約者もいなかったからちょうど良いって王命で結婚させたんだって。
「これからアベルは令嬢の家に通うことが多くなる。何の交流もなしに結婚させるわけにはいかぬからな、婚約期間として三ヶ月は式の準備や交流のためにアベルは側を離れることが多くなるが、其方も大分落ち着いてきた。結婚後は違う国で過ごすことになるのだから、その練習だと思って花嫁修行をして過ごすが良い。アベルのことを呼びださないよう努めよ」
と言われたから、寂しくても我慢したの。
婚約した令嬢との交流の後は、アベルはできるだけ城に様子を見に来てくれた。
「今日は式に招待した方へ渡す土産を決めてきました。帰りにカフェに寄ったのですが、マリーローズ嬢はケーキがお好きらしく、食べる姿がとても可愛らしかったです」
「今日はブーケを選んできました。花にあんなに種類があるとは知りませんでしたが、あれだけ揃うと圧巻ですね」
こう上気した顔で言うアベルは知らない人になってしまったみたいで、ちょっと寂しかった。
でも、祝福しなきゃ。
アベルが私の護衛でいるためには、既婚者になる必要があるんだもの……。
「どんな花を選んだの?」
「真っ白な薔薇です。ご存知ですか?白い薔薇は、他の色付いた薔薇より葉の色が濃いのです。その緑が彼女の、いえマリーローズ嬢の瞳とよく似ていて_…」
「……そう」
真っ白な、薔薇。
そっか、アベルの奥方になる人は、薔薇が好きなのね?
私と、おんなじ。
でも白一色って、ちょっと地味じゃない?
アベルの髪と瞳は、こんなに鮮やかなんだから、もっと華やかな色にした方が良かったんじゃない?
婚約者の令嬢、マリーローズ様は金髪で、目は緑色だって聞いた。
「どんな方?美しい方なのかしら?」
そう近くにいたメイドに聞いてみたら、
「たおやかで美しいご令嬢という感じでしたね。豪奢な濃い色の金髪をお持ちで……ウエディングドレスもさぞよく映えることでしょう、もちろん王女殿下ほどではないでしょうが」
メイドの世辞に、エルローゼは満更でもなさそうに笑う。
まあ、アベルがあんな風に上気した顔で話すくらいだから可愛らしい方なのだろう。
けど、その色合いだと、
「アベルの瞳の色のドレスは、あんまり似合わないかもね?」
そう呟いた時の自身の顔が歪んでいることに、エルローゼは気付かなかった。
私たちより濃い金髪で、緑色の目。
なら、鮮やかな青より薄い青の方が映えるのかもしれない。
「そうだわ、良い事思いついた」
エルローゼはベルを鳴らし、
「デザイナーを呼んでちょうだい」
とやってきたメイドに命令した。
お祝いのつもりだったのに、着てはもらえなかった。
心から祝福していたから、「暫くアベルを呼ばないように」というお父さまの言葉に従って、呼ばないように寂しくても我慢していたの。
けれど、結婚式の日、不安でたまらなくなって、今まで我慢していた分も決壊して、爆発してしまった。
そしたら結婚式の最中だったのに、アベルは駆けつけてきてくれた。
「最優先に私の元に駆けつける」という命令がまだ有効だったことにホッとした。
任務中は私の側にいてもらうけれど、アベルはマリーローズ様のいる家に帰るんだから良いわよね?
それが彼の任務なんだから。
「嘘でしょう……結婚なさった?あの方が__私のルイス王子が!!」
「本当です。確かに第三王子殿下が他国から花嫁を迎えられたと」
「他国?!それは私のはずでしょう?!どこか他国の王族が割り込んだのね?!私を襲撃するだけでは飽き足らず__なんて図々しい!」
「いえそれが_…、他国の貴族令嬢だそうです」
「貴族?!他国の王族でも、ペンタスの貴族でもなく?」
「はい」
「なら、何かのカムフラージュということかしら?それなら先に言ってくだされば良かったのに_…」
「いえ。それが、国内外問わず大々的に発布し、王城には各国からの結婚の贈り物が引きもきらないのだとか。今ペンタスはお祭り騒ぎだそうで「嘘よ!!」」
「カムフラージュに決まってるわ!だってあの方は、ルイス殿下は_…」
あの日言ってくれたもの、
「君が私のプティロゼだ」
って。
そうでしょう?
お母さまを亡くして泣いていた私に優しく寄り添い、慰めてくださった__あの方が私を裏切るなんて。
*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*
初めて会った時は、純粋無垢な少女に見えた。
ただ母の死に嘆く幼子に情が湧いたのも事実で、外見は妖精のように可愛いらしかったからつい、自国で妃、将来の伴侶を表す“プティ・ロゼ“という言葉を発してしまったため、水面下で婚約の話が進み、だが念には念をということで表沙汰にしないまま“仮婚約“という形になっていた。
ペンタスの王族の中でも特に、ルイスの伴侶選びは慎重にする必要があったからだ。
他の候補も含め“仮婚約“のまま時が経ち、国が違うせいで、ルイスに“聞こえない“ことも一因だったろう、特に候補から外す理由もないまま「姫も十二になったので、そろそろ正式な婚姻を」とカザムから打診があった。
だが、当然ペンタスの王族の伴侶の評判を周囲が調べないわけがない。
王女が見目麗しい騎士を片時も傍から離さないことは有名だった。
「王女には“私の騎士さま“と呼ぶ相手がいるようだが」
と返したところ、
「彼は王女が誘拐された時に助けた騎士で、王女が不安がっているから仕方なく許容しているだけで、またその誘拐も貴殿の妃の座を狙う者の仕業である」
と言ってきた。
また、
「その騎士には長年の想い人がおり、近々結婚する予定である」
とも。
秘されているがペンタスの王子の妃は幸福な未来が約束されたも当然なので、水面下で勝手にやり合う輩がいるのは確かだったので、「ならばもう少し様子をみる」としていたが、その騎士の結婚から、色々おかしな話が聞こえてくるようになった。
結婚式から花婿を護衛に呼びつけた?
花嫁を置き去りにしたまま戻らなかった?
披露宴には花嫁も体調を崩して欠席し、以降表に全く出てこないだと?__それ、結婚成立していないだろう。
しかも、その後も騎士は王女の傍に変わらず侍っているという。
さらに驚いたのはその蔑ろにされている夫人はルイスの数少ない親友、ロシエルの妹だったのだ。
実情を確認しようとルイスが自ら赴き調べたところ王女_…エルローゼはあまりにも幼く愚かな言動で周囲を振り回し、自身にはその自覚が全くなく、精神がまるで幼子だ。
引き換え、巻き込まれ大変な渦中にあっても自分付きのメイドに「休みが足りないことに気づかずごめんなさい」などと気遣いができ、嫌なことははっきり嫌だと告げて行動に起こすマリーローズは眩しく見え_…、いや、実際光って見えた。
濃い金髪も、フォレストグリーンの瞳も彼女の内面の強さを物語っているようで、もっと見ていたくなった。
襲撃の多さがペンタスに一端の責任があるのは確かなので多少のことは目を瞑るつもりだったが、あの二人の言動は常軌を逸していた。
“もうお前らが結婚しろよ……お似合いだ“
聞いていたルイスはこの国に来てからというもの心中での突っ込みが止まらない。
自身の幸せにしか目がいかず、他人に対してどこまでも無神経なところなどこの二人はそっくりだ。
エルローゼは外見だけは妖精のように可愛らしく育っていたが、隠しきれない狡猾さもまた育っていることに、ルイスは気がついていた。
なぜ自分が幸せなら、他人も幸せだなどど思えるのだろう。
幸せの感じ方など、人と違って当然なのに。
ペンタス、いやルイスはエルローゼ王女を妃候補から除外し、マリーローズに求婚した。
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