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宮廷女房たちの暇潰し
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「最近随分と奥が、いや私の妹と仲睦まじいようだな?」
「ええ、世にも許された夫婦ですから。宮にも中君様がおられるでしょう?」
「ふん……最初は嫌々添っていたくせに。浮舟まで邸に迎えて両手に花とは、いかにお堅い薫の大将もただの男だったと言うわけだな」
「宮も内大臣(夕霧)の六の姫と中君と、双方と睦まじいご様子ではありませんか」
「良く言う。六の姫だってそもそもお前に打診があったのだろうが?」
「まさか。宮を差し置いてそのような事実はありませんよ」
どこまでも泰然と微笑む薫に、
「ふん、今に見ていろ」
と嘯いて去る匂宮に、
「中君も気の毒に、宮のあのご気性ではさぞや苦労が絶えぬだろうな」
と呟いた。
プライドが高すぎる、ある意味似たもの同士の二人だった。
だが、
そんな二人の様子をときめいて見る御所務めの女房達は、
「まぁ、また匂宮様が薫の大将様に突っかかって……」
「以前はそんな様子も微笑ましかったけれど最近は、」
「薫の大将様が以前にもまして落ち着いて艶めいてらっしゃるのに対して、匂宮様は何だか余裕のないなさりよう、以前はもっと軽妙にやり取りしてらっしゃったのに」
「ねぇ?あの噂本当なのかしら、少し前に薫の大将様が引き取った女人に匂宮様も懸想なされていたって」
「えぇ、二条院の中君様の異母妹に当たられる方だとか」
「そうそう、それでその方が中君様に挨拶に訪れた際にあわや宮様が踏み込まれて顔を見ようとなさったという噂が」
「まあ、そこまで?」
「そんな、あくまで噂なのでしょう?」
「けれど六の君様とのご結婚の時もぎりぎりまで中君様と離れようとなさらなかった匂宮様ですもの、一度執着されてしまえばあり得ない話ではないわ」
「そうねぇ、何でも薫の大将様に張り合おうとなさるし」
「けれど、姉妹の語らいの場に強引に踏み込むなんていくらなんでも……」
「それがねぇ、二条院に仕えている女房に聞いたんだけどそれを止めたのがお忍びでその場に同行なされていた大将の君の奥方、女二の宮様だったそうよ」
「えっ?母君を亡くされて以来滅多に表に出て来られない女二の宮様がそのようにお忍びで?」
「何でもその異母妹__浮舟様とか言ったかしら?と、女二の宮様はとても仲がよろしいのですって。女二の宮様はその浮舟様を実の妹のように可愛がってらっしゃって、浮舟様の実母にあたられる常陸の方までお邸に招び入れて、よくご一緒に過ごされてるのですってよ?」
「まぁ……御所にいらっしゃる時は、中宮様腹の御子達に気圧されておしまいがちな方だったのに」
「なんて心栄え優れた方なのでしょう」
「きっと御所に居る間は表立って対立するのを避けて、敢えて聡明さを隠しておられたのでしょう、並の女人には出来ぬことですわ」
「そうそう、それに気がつかれた匂宮様が最近やけに女二の宮様を気にされてらっしゃるとか」
「まぁ、どちらも薫の大将の北の方にあたられる方なのに」
「だからこそ__と いうこともあり得ますわね、匂宮様はそういうところがおありだわ」
「けれど、お二人は睦まじいと評判なのに」
「本当に__いくら宮様でも多情がすぎると言うものですわ、女二の宮様と薫の大将、お二人が並び立つお姿はさぞかしお美しいでしょうね」
などと勝手に噂されていた。
今回の件について離縁したくて噂を流したのは織羽だが、噂は思わぬ方向に飛び火していた。
なさぬ仲のはずの浮舟に優しく気を使う蓮花を世間は聡明な姫だと評価は爆上げ、ついでに薫の評価も上がり、それは父である帝も喜ばせた。
代わりに、匂宮の評価が“がくん“と音を立てて暴落し始めていた。
「ええ、世にも許された夫婦ですから。宮にも中君様がおられるでしょう?」
「ふん……最初は嫌々添っていたくせに。浮舟まで邸に迎えて両手に花とは、いかにお堅い薫の大将もただの男だったと言うわけだな」
「宮も内大臣(夕霧)の六の姫と中君と、双方と睦まじいご様子ではありませんか」
「良く言う。六の姫だってそもそもお前に打診があったのだろうが?」
「まさか。宮を差し置いてそのような事実はありませんよ」
どこまでも泰然と微笑む薫に、
「ふん、今に見ていろ」
と嘯いて去る匂宮に、
「中君も気の毒に、宮のあのご気性ではさぞや苦労が絶えぬだろうな」
と呟いた。
プライドが高すぎる、ある意味似たもの同士の二人だった。
だが、
そんな二人の様子をときめいて見る御所務めの女房達は、
「まぁ、また匂宮様が薫の大将様に突っかかって……」
「以前はそんな様子も微笑ましかったけれど最近は、」
「薫の大将様が以前にもまして落ち着いて艶めいてらっしゃるのに対して、匂宮様は何だか余裕のないなさりよう、以前はもっと軽妙にやり取りしてらっしゃったのに」
「ねぇ?あの噂本当なのかしら、少し前に薫の大将様が引き取った女人に匂宮様も懸想なされていたって」
「えぇ、二条院の中君様の異母妹に当たられる方だとか」
「そうそう、それでその方が中君様に挨拶に訪れた際にあわや宮様が踏み込まれて顔を見ようとなさったという噂が」
「まあ、そこまで?」
「そんな、あくまで噂なのでしょう?」
「けれど六の君様とのご結婚の時もぎりぎりまで中君様と離れようとなさらなかった匂宮様ですもの、一度執着されてしまえばあり得ない話ではないわ」
「そうねぇ、何でも薫の大将様に張り合おうとなさるし」
「けれど、姉妹の語らいの場に強引に踏み込むなんていくらなんでも……」
「それがねぇ、二条院に仕えている女房に聞いたんだけどそれを止めたのがお忍びでその場に同行なされていた大将の君の奥方、女二の宮様だったそうよ」
「えっ?母君を亡くされて以来滅多に表に出て来られない女二の宮様がそのようにお忍びで?」
「何でもその異母妹__浮舟様とか言ったかしら?と、女二の宮様はとても仲がよろしいのですって。女二の宮様はその浮舟様を実の妹のように可愛がってらっしゃって、浮舟様の実母にあたられる常陸の方までお邸に招び入れて、よくご一緒に過ごされてるのですってよ?」
「まぁ……御所にいらっしゃる時は、中宮様腹の御子達に気圧されておしまいがちな方だったのに」
「なんて心栄え優れた方なのでしょう」
「きっと御所に居る間は表立って対立するのを避けて、敢えて聡明さを隠しておられたのでしょう、並の女人には出来ぬことですわ」
「そうそう、それに気がつかれた匂宮様が最近やけに女二の宮様を気にされてらっしゃるとか」
「まぁ、どちらも薫の大将の北の方にあたられる方なのに」
「だからこそ__と いうこともあり得ますわね、匂宮様はそういうところがおありだわ」
「けれど、お二人は睦まじいと評判なのに」
「本当に__いくら宮様でも多情がすぎると言うものですわ、女二の宮様と薫の大将、お二人が並び立つお姿はさぞかしお美しいでしょうね」
などと勝手に噂されていた。
今回の件について離縁したくて噂を流したのは織羽だが、噂は思わぬ方向に飛び火していた。
なさぬ仲のはずの浮舟に優しく気を使う蓮花を世間は聡明な姫だと評価は爆上げ、ついでに薫の評価も上がり、それは父である帝も喜ばせた。
代わりに、匂宮の評価が“がくん“と音を立てて暴落し始めていた。
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