〈第一部完・第二部開始〉目覚めたら、源氏物語(の中の人)。

詩海猫(8/29書籍発売)

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まずは肩の力を抜いて

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「お方様!お加減は如何ですか?」
「これ!浮舟、不躾ですよ女房の取次も待たず……!」
几帳を押し除けるように顔を出した浮舟ちゃんを中君が嗜める。
私が以前のように動けないからと今日は二人でこちらに来てくれたのだ。
「構いませんよ中君、私は浮舟さまがこうして来てくれるのが嬉しいのですから」
浮舟ちゃんみたいな美少女が無心に慕ってくれることが嬉しくないはずがない。

おまけに今日は中君までいる。
以前は匂宮が睨みを効かせていて外出もままならなかったはずだが、既に匂宮との間に子を産んで風格の増した中君に最近は押されがちらしい。
(本来、中君と薫との仲を疑っていたはずだから私へのお見舞いとはいえ薫の邸に来るなんて絶対許可しなさそうなんだけど。それにしても……)
並ぶ浮舟ちゃんと中君へ目をやる。

(こうして見るとやっぱり似てるな。)
腹違いとはいえ流石姉妹。美少女二人絵図、眼福だわとうんうん頷いていると、
「どうされました?お方様」
浮舟ちゃんが心配そうに顔を寄せて来る。
「これ、あなたはまた__!」
「なんでもないのよ、ただこうして見るとやはり似ておられるな と思っていただけなの」
「「まぁ……」」
二人が顔を見合わせ、それが現代でいう双子のユニゾン動画のようで楽しくなってしまう。

「おぉこれは、いつにも増してご機嫌のようですね蓮花様」
襖の向こうから薫が顔を出す。
「大将の君、まぁ__」
対面にいた浮舟ちゃんと中君が慌てて扇で顔を隠す。
「これは失礼した。女性がたの歓談を邪魔するつもりではなかったのだが、中君様がいらしてると聞いてご挨拶に来たら貴女の殊更楽しそうな声が聞こえたものでね」
普段ならこんなことはないのだが、笑い声につい反応して声を掛けてしまったらしい。

「私と浮舟さまだけならともかく、いきなり中君さまのいる場所に踏み込むのはいけませんわ」
私が目を細めて非難すると、
「もちろん承知しております、我が奥方」
と軽い調子で返しながら女房達に目で指図し、たちまち中君の周囲に几帳が張り巡らされる。
ちょっとしたバリケードだ。

そうして女房達が下がると、
「ようこそおいでくださいました中君様」
と私の横に腰をおろした薫が改めて声をかける。
「わざわざのご挨拶痛み入ります。女二の宮様も殊更お元気な様子で安堵致しました」
「ええ。私も初めてのことゆえ方々手を尽くしてあれこれ準備させてはいるのですがやはり経験者の方の言に勝るものはありますまい。また蓮花様もお二人とおられると殊更楽しげなご様子、本日は是非ごゆっくりなさって行って下さい」
そう言って微笑むと、薫は立ち上がり辞去を告げた。
「では私はこれから参内します故これで」
「いってらっしゃいませ、……殿」
この言葉に一層笑みを深くした薫の顔を几帳の隙間から覗き見た中君は息を呑んだ。













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