クマの短編ホラー小説

クマミー

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予言師〜心の底からの望み〜①

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「もう何回目だ…?この前も同じこと言った気がするんだが…」
少し困惑した表情で、2年目の晴人を見つめるのは部長だ。
「すいません。」
と気のない謝罪。
「君の同期は成績を伸ばしてるよ。」
ウザい上司だ。こうやって同期と今の自分を比較されるのが、晴人にとって何よりも苦痛なのだ。
 
「お前も予言してもらえば?」
いつも仕事終わりに通う居酒屋でのことだ。同期の洋介と仕事の愚痴を言い合うストレス発散の場だ。7年目で成績トップの謙介先輩は、その「予言師」に会ってから営業成績が伸びたという。
 
 洋介とは別れ、家路についた。早くシャワーを浴びて、YouTubeでも観ながら眠りに落ちたい。ボーっとそんなことを考えていると、突然人と肩がぶつかってしまった!ぶつかって転倒したは老人の男性のようで、一瞬何が起きたか分からなかったが、面倒は起こしたくない…とりあえず謝った。「す…すいません。」その場を立ち去ろうとすると、老人は突然、
「明日は会社に遅れて行くといい。望んだものが手に入る。」
「えっ?」
老人はそう言い残して、目も合わせず、スッと立ち上がって、歩き出した。
 
 晴人は帰ってからも老人の体のことよりも言われた言葉の方が気になっていた。望むものが手に入る?欲しいものは山ほどあるが…遅刻したらまた部長に呼び出されるじゃないか。これ以上失敗は出来ない。明日はいつもより早めにに出勤してやる。老人の言葉は無視することにした。
 翌朝、やらかした!また寝坊!遅刻確定!どんなに急いでも1時間は遅刻確定。仮病も考えたが、その手は以前使ってしまった。急いでタクシーに飛び乗った。
 
 会社に着くと自分の部署がざわついているる。晴人は部長に呼ばれ、覚悟を決めた。すると部長が
「宮本!お前すごいじゃないか!一体どうやってあんな大口のお客を見つけたんだ?」
何のことか分からない。
「あの…自分…遅れて出勤してしまったのですけど…」
正直に伝えるが、部長は、
「遅れる?何を言ってるんだ?お客様のところへ行って営業してたから遅れたんだろ?この調子で今後も頼むよ。」
 どうやら以前から仲良くしていた晴人の顧客の友人が資産家だったようで、自分から商品を買いたいと会社に連絡があり、大量発注が決まったようだ。
 
 晴人は仕事を始めて、褒められた経験がなかった。ミスばかりして鈍臭いから、怒られることばかりだった。晴人は昨晩の老人の言葉を思い出した。もしかして、今自分が望んでいたのは、頑張ってきた成果を認めてもらうことだったのか…
 
 あの老人の言う通りにすれば、望むものが手に入るのか?晴人はあの老人を探してみた。しかしなかなか見つからない。ぶつかってしまった後、相手の姿をよく見なかったから「黒い服、男性の老人」までしか覚えていない。
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