クマの短編ホラー小説

クマミー

文字の大きさ
3 / 20

強盗の誤算

しおりを挟む
 俺は気分が良い。なぜかって?それは宝石強盗に成功したからさ!全て金に変えれば3億はくだらない。計画通り海外へ高飛びも成功した。豪遊生活が約束されたも同然なのだ。今頃日本中が大騒ぎのはずだ。
 
 ただ、1つ問題があった。俺は現在、幽霊につきまとわれている。それも1日中だ。正体はわかっている。俺の相棒だった男だ。
 
 分け前は折半の予定だった。しかし逃げる途中で、金を全て自分のものにしたいと思った。俺は護身用のナイフで相棒に飛びかかった。揉み合いになった末、心臓を一突き。あっけない最期だ。
 
 金を独り占めされるのがよほど恨めしいのだろう、昼も夜もずっと俺を遠くから見ている。青白い顔して、何も出来まい。金は全て俺のものだ。

 4、5日くらい経ったある日、潜伏しているモーテルからふと奴の方を見てみた。なんだか近づいてきてるように見える。奴は一定の距離を保ってこちらをじっと見ている。
「いい加減消えてくれないかな…お前はもうこの世にいないんだぞ…」

 1週間後、2週間後、奴はやはり距離を詰めて来ている。もう顔の表情がわかるくらいだ。じっと見られ続けるのも気分が悪い。塩でも撒いてなんとかしなければ。

 盗んだ宝石を少しだけ金に換えた。人生で初めて豪華な食事、ギャンブルを楽しんだ。今日はぐっすりと寝たい。モーテルに戻ると「相棒」が中に立っていた。
「もう寝るんだ。出ていってくれないか。」
すると奴が突然話し出した。
「探したよ。」
「えっ?!」
「急に襲ってきやがって。ふざけんなよ。」
「うるせぇ、何とでも言え。死んだお前には何も出来ないだろ?」
「試してみるか?」
奴の手には護身用ナイフ、何も出来ないだろうと高をくくっていた。だが腹に激痛が走る、大量の出血、俺は痛みで崩れ落ちた。なぜだ?これは現実か?なぜ幽霊なんかに?どうして…

 「お前覚えてないのか?俺に返り討ちに遭ったんだよ。刺されたんだ。殺したと思ったら、通行人の通報で病院に運ばれたとニュースで聞いたからさ。今お前、昏睡状態なんだよ。」
相棒だった男は淡々と話す。全て夢だったのか?奴の青白かった顔色が、血色が良くなっていくように見えた。

 「喋られると困るんだよ。同じ強盗仲間ならわかるだろ?」
日本の警察病院のベッドの傍らで相棒だった男が俺に語りかける。奴は俺に向け、護身用ナイフを勢いよく振り下ろす。全てを終わらせる為に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

今日の怖い話

海藤日本
ホラー
出来るだけ毎日怖い話やゾッとする話を投稿します。 一話完結です。暇潰しにどうぞ!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...