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三章 業火の魔王編
プロローグ 教皇の出陣
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夕暮れの鐘が鳴り響くと同時に、カルデア・ザフラーンから届いた急報が聖都を揺るがした。
報告を携えた伝令は額に汗を滲ませ、震える声で言葉を繋ぐ。
「――大司教様。カルデア・ザフラーンの街が……炎に呑まれました。魔物の群れが溢れ、既に壊滅寸前とのこと……!」
重厚な謁見の間に、一瞬ざわめきが走る。列席していた神官たちは顔を見合わせ、口々に不安を囁き合った。
「また悪魔共の仕業か……」
「いや、詳しくはわかりませぬ。だが現地の証言では、常軌を逸した炎……人の手ではありえぬ炎だと」
やがて玉座の上、黄金の髪を持つ若き教皇――アダムスが立ち上がる。
その碧眼は烈火のごとく輝き、迷いの欠片すらなかった。
「……"業火"の魔王、イブリースだな」
彼がその名を口にした途端、空気が張りつめる。
神官のひとりが、おずおずと進み出て声を上げた。
「教皇猊下。あの街については……以前から良からぬ噂が絶えませぬ。特に、中央に館を構えていたあの貴族、ザビール家は特に――」
「特に?どんな噂だ?」
アダムスの問いに、神官は息を呑んで答えた。
「奴隷を密かに買い集めていた、と。異国から連れられた者を密かに監禁し、酷使していた……と。しかし、証拠は見つからず、噂止まりで……」
「……なるほど」
アダムスの碧眼が冷ややかに細められる。
「人の欲望が穢れを呼び、やがて魔をも招く。奴隷売買の噂が真であるならば、必ずや禍根があったはず。――いずれにせよ、魔王が暴れているのならもはや放置はできん」
その言葉に、場にいた者たちは一斉にひれ伏した。
「猊下、自ら赴かれるおつもりですか!?」
「危険すぎます! どうか聖都にてお指揮を……!」
懇願の声が飛ぶ。しかしアダムスは静かに首を振った。
「天上神の代行者たる私が退くことは許されぬ。災厄が広がる前に討ち滅ぼさねばならん。これは使命だ。
――それに相手が魔王ともなるとこの中で奴の相手を出来るのは私くらいだろう」
その声音は絶対の確信を帯びており、誰ひとりとして反論できなかった。
しばしの沈黙の後、アダムスは玉座の傍らに立つ天使へと視線を向ける。
白き羽を広げた天使は無言で頷き、黄金の槍を差し出した。
「"業火"の魔王イブリース――」
アダムスは槍を握り、静かに掲げる。
「その邪悪、必ず私が討ち滅ぼす。人の世界に神の秩序を取り戻すためにな」
その言葉に、神官たちは歓声と祈りを重ねた。
「アダムス猊下に神の加護を!」
「天上神の御名のもとに、邪を滅せよ!」
――やがて夜明け前。
白き軍勢が聖都を出立した。教皇直属の浄化官、精鋭の神官兵、そして数体の天使を従えた光の軍団。その先頭に立つのは、黄金の髪を風に靡かせる英雄にして教皇、アダムスであった。
馬蹄の音が大地を震わせる。砂漠の街カルデア・ザフラーンを目指し、祈りと決意を胸に彼らは進軍してゆく。
アダムスはただひとり、誰にも聞こえぬ声で呟いた。
「イブリース……お前の炎がどれほどのものか、この手で確かめてやろう」
碧眼は鋭く、夜明けの闇を切り裂く光を映していた。
その視線の先にあるのは、炎に焼かれ、絶望と狂気に沈む街――カルデア・ザフラーン。
そこで待つものが何であれ、彼は一歩も退くつもりはなかった。
報告を携えた伝令は額に汗を滲ませ、震える声で言葉を繋ぐ。
「――大司教様。カルデア・ザフラーンの街が……炎に呑まれました。魔物の群れが溢れ、既に壊滅寸前とのこと……!」
重厚な謁見の間に、一瞬ざわめきが走る。列席していた神官たちは顔を見合わせ、口々に不安を囁き合った。
「また悪魔共の仕業か……」
「いや、詳しくはわかりませぬ。だが現地の証言では、常軌を逸した炎……人の手ではありえぬ炎だと」
やがて玉座の上、黄金の髪を持つ若き教皇――アダムスが立ち上がる。
その碧眼は烈火のごとく輝き、迷いの欠片すらなかった。
「……"業火"の魔王、イブリースだな」
彼がその名を口にした途端、空気が張りつめる。
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「教皇猊下。あの街については……以前から良からぬ噂が絶えませぬ。特に、中央に館を構えていたあの貴族、ザビール家は特に――」
「特に?どんな噂だ?」
アダムスの問いに、神官は息を呑んで答えた。
「奴隷を密かに買い集めていた、と。異国から連れられた者を密かに監禁し、酷使していた……と。しかし、証拠は見つからず、噂止まりで……」
「……なるほど」
アダムスの碧眼が冷ややかに細められる。
「人の欲望が穢れを呼び、やがて魔をも招く。奴隷売買の噂が真であるならば、必ずや禍根があったはず。――いずれにせよ、魔王が暴れているのならもはや放置はできん」
その言葉に、場にいた者たちは一斉にひれ伏した。
「猊下、自ら赴かれるおつもりですか!?」
「危険すぎます! どうか聖都にてお指揮を……!」
懇願の声が飛ぶ。しかしアダムスは静かに首を振った。
「天上神の代行者たる私が退くことは許されぬ。災厄が広がる前に討ち滅ぼさねばならん。これは使命だ。
――それに相手が魔王ともなるとこの中で奴の相手を出来るのは私くらいだろう」
その声音は絶対の確信を帯びており、誰ひとりとして反論できなかった。
しばしの沈黙の後、アダムスは玉座の傍らに立つ天使へと視線を向ける。
白き羽を広げた天使は無言で頷き、黄金の槍を差し出した。
「"業火"の魔王イブリース――」
アダムスは槍を握り、静かに掲げる。
「その邪悪、必ず私が討ち滅ぼす。人の世界に神の秩序を取り戻すためにな」
その言葉に、神官たちは歓声と祈りを重ねた。
「アダムス猊下に神の加護を!」
「天上神の御名のもとに、邪を滅せよ!」
――やがて夜明け前。
白き軍勢が聖都を出立した。教皇直属の浄化官、精鋭の神官兵、そして数体の天使を従えた光の軍団。その先頭に立つのは、黄金の髪を風に靡かせる英雄にして教皇、アダムスであった。
馬蹄の音が大地を震わせる。砂漠の街カルデア・ザフラーンを目指し、祈りと決意を胸に彼らは進軍してゆく。
アダムスはただひとり、誰にも聞こえぬ声で呟いた。
「イブリース……お前の炎がどれほどのものか、この手で確かめてやろう」
碧眼は鋭く、夜明けの闇を切り裂く光を映していた。
その視線の先にあるのは、炎に焼かれ、絶望と狂気に沈む街――カルデア・ザフラーン。
そこで待つものが何であれ、彼は一歩も退くつもりはなかった。
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