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第六章
スタローン王国の異変
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地下に広大な無法地帯を要するスタローン王国は、絢爛豪華と貧困、栄光と堕落という相反する二面性を持ち合わせる。
そうと知りながら総督麾下の騎士団が地下に蔓延る悪党を放っておいたのは、もちろん自分達にも旨味があるからだ。
故に王族貴族は地下の住人に対し、過度な圧力は決してかけないようにしていた。
ギルとしてはその奔放さが歯がゆくもあったのだが、王族の意向としてあるならば一介の警備隊長ごときが口を挟めるわけもなく、静観するほかなかったのだ。
それなのに――
再び訪れたスタローン王国は、前回とはまるで様子が違っていた。
前回訪れた時とは比べものにならない警備体制。
国境も国門も見張りに立つ騎士の数は前回の三倍もの数。町中の至る所に騎士団の姿があり、入国の審査も厳しかった。
今までのずさんな警備体制がまるで嘘のように門前には長蛇の列ができており、名前や国籍、訪れた理由など明確にしなければ入国ができない。
それよりも厳しいのが出国する側の検査で、緊急的な用件がない限りは出国不可となっていたのである。これでは地下に住む悪党どもも身動きが取れないだろう。
何かがあった。
そう悟るには十分。
入国の際に理由を尋ねられ、知人を迎えに来たと明かすと誰かと問われた。それで第一警備隊にいるアレクという少年だと告げた途端、騎士の顔色が変わった。
「会わせることは叶わぬ」そう、ひとことだけ返して。
いくら理由を問うてもそれ以上は答えない。
それで仕方なくマーリナス殿の自宅に赴いたのだが、そこでもまた異常な光景を目にした。
火事でもあったのか自宅は半壊状態で騎士が張り込みをしていたのである。
魔法を使役できるマーリナス殿がいて、家が半壊するほどの火事など起きるだろうか。もしくはタイミング悪く居合わせなかったか……
可能性は山ほどあったが、騎士が警備に当たっていることが気になった。もしマーリナス殿の命ならば自身の管理下にある警備隊を配置するだろう。
それにマーリナス殿やアレクはどこへ行ったのか。
騎士に尋ねてみたが、知らぬ存ぜぬの一点張り。
不自然なまでの閉口ぶりに、ギルの疑念は確信へ変わる。
おそらく、騎士団と――いや、国王側と何かあったのだ。
ギルは隊員達と話すフリをしながら、ちらりと後方に視線をはしらせる。
物陰に影が二つ。傍から赤い騎士団のマントが風に靡いて見え隠れしていた。
(あれで尾行しているつもりか?)
話し相手の副官リンデンも平静を保ちつつ、後方を盗みみた。
「国門からです。なぜ我々を尾行するのでしょうか」
「おそらくアレクの名を出したからだろう。どうも騎士団はマーリナス殿とアレクの存在を隠したいとみえる」
「ならば回りくどい言い方をせずに王命で赴いたと伝えればよかったのではありませんか?」
「いや……王命で来たといえばジュリアス王が放っておかない。できるだけ騒がず、迅速に連れて行きたかったのだ。それに公的な報告であれば自然だろう。協力を委任したマーリナス殿への結果報告、アレクの労いといった言い訳が通るからな」
「なるほど。入国審査が厳しかったですからね、我々でも追い返すような勢いでしたし。しかし……もはやそんな甘いことを言ってい状況ではないようです。どうしますか」
「隊員達を聞き込みにあたらせろ。それと隠密に目立たぬ所に脱出ルートを確保しておけ」
「脱出ルート……ですか?」
騎士団が動いている以上、最悪の事態が想定される。
ギルは重々しくうなずいた。
「そうだ。騎士団に見つかるな」
「了解」
そうと知りながら総督麾下の騎士団が地下に蔓延る悪党を放っておいたのは、もちろん自分達にも旨味があるからだ。
故に王族貴族は地下の住人に対し、過度な圧力は決してかけないようにしていた。
ギルとしてはその奔放さが歯がゆくもあったのだが、王族の意向としてあるならば一介の警備隊長ごときが口を挟めるわけもなく、静観するほかなかったのだ。
それなのに――
再び訪れたスタローン王国は、前回とはまるで様子が違っていた。
前回訪れた時とは比べものにならない警備体制。
国境も国門も見張りに立つ騎士の数は前回の三倍もの数。町中の至る所に騎士団の姿があり、入国の審査も厳しかった。
今までのずさんな警備体制がまるで嘘のように門前には長蛇の列ができており、名前や国籍、訪れた理由など明確にしなければ入国ができない。
それよりも厳しいのが出国する側の検査で、緊急的な用件がない限りは出国不可となっていたのである。これでは地下に住む悪党どもも身動きが取れないだろう。
何かがあった。
そう悟るには十分。
入国の際に理由を尋ねられ、知人を迎えに来たと明かすと誰かと問われた。それで第一警備隊にいるアレクという少年だと告げた途端、騎士の顔色が変わった。
「会わせることは叶わぬ」そう、ひとことだけ返して。
いくら理由を問うてもそれ以上は答えない。
それで仕方なくマーリナス殿の自宅に赴いたのだが、そこでもまた異常な光景を目にした。
火事でもあったのか自宅は半壊状態で騎士が張り込みをしていたのである。
魔法を使役できるマーリナス殿がいて、家が半壊するほどの火事など起きるだろうか。もしくはタイミング悪く居合わせなかったか……
可能性は山ほどあったが、騎士が警備に当たっていることが気になった。もしマーリナス殿の命ならば自身の管理下にある警備隊を配置するだろう。
それにマーリナス殿やアレクはどこへ行ったのか。
騎士に尋ねてみたが、知らぬ存ぜぬの一点張り。
不自然なまでの閉口ぶりに、ギルの疑念は確信へ変わる。
おそらく、騎士団と――いや、国王側と何かあったのだ。
ギルは隊員達と話すフリをしながら、ちらりと後方に視線をはしらせる。
物陰に影が二つ。傍から赤い騎士団のマントが風に靡いて見え隠れしていた。
(あれで尾行しているつもりか?)
話し相手の副官リンデンも平静を保ちつつ、後方を盗みみた。
「国門からです。なぜ我々を尾行するのでしょうか」
「おそらくアレクの名を出したからだろう。どうも騎士団はマーリナス殿とアレクの存在を隠したいとみえる」
「ならば回りくどい言い方をせずに王命で赴いたと伝えればよかったのではありませんか?」
「いや……王命で来たといえばジュリアス王が放っておかない。できるだけ騒がず、迅速に連れて行きたかったのだ。それに公的な報告であれば自然だろう。協力を委任したマーリナス殿への結果報告、アレクの労いといった言い訳が通るからな」
「なるほど。入国審査が厳しかったですからね、我々でも追い返すような勢いでしたし。しかし……もはやそんな甘いことを言ってい状況ではないようです。どうしますか」
「隊員達を聞き込みにあたらせろ。それと隠密に目立たぬ所に脱出ルートを確保しておけ」
「脱出ルート……ですか?」
騎士団が動いている以上、最悪の事態が想定される。
ギルは重々しくうなずいた。
「そうだ。騎士団に見つかるな」
「了解」
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