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Episode2
しおりを挟むあなたは観光でここに来たといっていたわね。
日本三景でも有名なここは、普段は人通りもあまりなくて海沿いをドライブするには気持ちのいい所なのだけど、大型連休になると信じられないほどひとで溢れるのが嫌いだった。
車はなかなか進まないし、行きつけの海鮮定食のお店も長蛇の列ができて入れなくなってしまうし。
ゆっくりと海を眺めていたくても、すぐ傍で観光客が大声ではしゃぎながら写真を撮って回るから、邪魔にならないように場所を変えなければならないの。
だから大型連休に入るとわたしはここに近づかなかった。
だけど遠くから遊びに来た姪っ子が海に行きたいっていうから、仕方なく案内したのよ。
人混みに疲れて一息つきたくても、姪っ子は早く早くと次の行き先を急かすんだもの。
ヒールの高い靴で来てしまったから足も疲れてしまっていたのに、あんな場所に行きたいだなんて。
碧い海の真ん中を真っ直ぐに伸びる朱色の大橋は確かに目につきやすいのよね。
こっちに来た時からずっと行きたいと思っていたんですって。
でもあそこの先は小島になっていて舗装された道も少ない。獣道のような細い通路が枝分かれして、島を探索出来るようになっているの。あなたも行ったからわかるでしょう?
ぼこぼこと隆起した地面には大きめの石もよく転がっているし、ヒールで歩くには少し酷いのよね。
でも三日しか滞在しない姪っ子の夏の思い出作りのために頑張ることにしたわ。
肌を焼き付ける真っ白な日射しの中で潮風を全身に浴びながら橋を渡ったのは、予想以上に気持ちが良かった。思わずわたしまで童心に返ってはしゃいでしまったもの。
でも橋を渡りきった後、目の前に現れた階段を見上げてたじろいでしまった。
ほぼ垂直の斜度に加えて、縁が石なだけで剥き出しの地面から所々木の根が浮き出た足場の悪いものだったし。
「ここ、登るの?」と思わず姪っ子に聞いてしまったわ。答えは聞くまでもなかったのだけど。
一度登ってしまえば後はほぼ平坦だったから、わたしたちは島から一望できる海の景色を楽しむことができた。
ひとのごった返す中心部から少し離れたその小島には観光客も少なくて、穴場スポットの浜辺にはわたしと姪っ子しかいなくてね。心が開放的になったの。
その帰りだったのよ、あなたがあの階段で転倒しかけた姪っ子に手を伸ばしてくれたのは。
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