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Episode3
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無邪気に笑ってお礼をいった姪っ子とそのまま一緒に橋を戻ったわよね。
「じゃあ、ここで」
別れはあっという間だった。あなたの滞在先は橋を渡ってすぐ目の前のオーシャンホテルだったから。
後を付いて中に消えていった女の子の存在が気になったけど、滞在先がここならまた会えるかもしてないなんて、ひっそりと期待してしまったの。
だから、わたしはその夜もひとりで散歩に出た。昼間より観光客は少なくなっていたけど、普段はひとっこひとりいないのよ。そんな静かなここが好きだったのだけど、手を繋いで歩く男女もちらほらと目について、不思議と心が弾んでしまったの。
この時期は嫌いだったのに、活気づいたこの場所が急に華やいでみえて。
ううん。それだけじゃないわね。あなたに会えるかもと期待してまた橋を渡ったからよ。
浜辺に腰を下ろして、さざ波の音を聞きながら揺らぐ水面を頭を真っ白にして見ているのは飽きがこなかった。遠くに見えるホテルの灯りも、レジャーシーズンだからとライトアップされた数々の浮島もとても綺麗。
ドラマのような再会を期待していたけど、やっぱりそんなことってなかなか起きないのね。
そう悟って腰をあげ、危なげにあの階段を下りて橋を戻り始めた時。あなたはひとりでこちらに歩いてきた。
しばらくわたしに気づかなかったでしょう?
途中で足を止めて桟橋に寄りかかり、海を眺めていたものね。
でもわたしはすぐに気がついた。
消沈した心が急に高鳴ってしまって、どうしようかと不審にもその場でウロウロしてしまったの。
でも進むことに決めたわ。元から戻るつもりだったんだもの。なにもおかしいことなんてないわよ。そう強く自分に言い聞かせて。
昼間に渡った時は長い橋だと思ったのに、彼との距離が近づくのはあっという間に感じられた。緊張してゆっくりと歩んでいたのに不思議よね。静かな目で海を眺めるあなたの横顔をもっと見ていたかったわ。
声をかけるのもはばかられて何度も口を開きかけたけど、臆病なわたしは結局項垂れてあなたの後ろを通り過ぎてしまった。バカよね、あなたに会いたくてここまできたのに。
でも数メートル離れてからこっそり振り返ってしまった。
そしたら、あなたったらこちらに戻ってくるんだもの。バッチリ目が合ってしまって、思わず硬直してしまったじゃない。
「あれ? 昼間の?」
「は、はい! こんばんわ。お散歩ですか?」
あなたは至極自然な態度だったのに、わたしったら上擦った声で緊張してるのがバレバレだったわ。変に思ったでしょうね。
でも気さくなあなたは特に気にした様子もなく、話しかけてくれたわよね。すごくほっとしたわ。昼間はろくに話すこともできなかったけれど、話してみたらやっぱり想像したとおり優しくて楽しいひとだった。
ふたりで桟橋に寄りかかってライトアップを眺めながら笑い合ったわよね。
ここには二日間滞在する予定だと教えてくれた。初めてこの土地を訪れたことや、昼間に見たもの、食べたもの。そんな話をして明日の予定は決めていないというから、お勧めのスポットを教えてあげたら凄く喜んでくれた。その笑顔が可愛くて、わたしまで嬉しくなった。
帰り際、ホテルの玄関前で手を振ってくれたあなたに、わたしは多分一生分の勇気を振り絞ったと思うわ。
「あっ、明日の夜もここで会えますか?」
壊れそうなほど心臓はバクバクとうるさくて、いった傍から恥ずかしさに耐えきれず逃げ出したくなってしまったのだけど。
「いいよ。じゃあ、また明日ね!」
友達にでも返事するようなノリで、相変わらずあなたったら自然な態度で笑顔を向けてくれた。とても嬉しかったけど、緊張したのがバカらしく思えてしまったわ。
「じゃあ、ここで」
別れはあっという間だった。あなたの滞在先は橋を渡ってすぐ目の前のオーシャンホテルだったから。
後を付いて中に消えていった女の子の存在が気になったけど、滞在先がここならまた会えるかもしてないなんて、ひっそりと期待してしまったの。
だから、わたしはその夜もひとりで散歩に出た。昼間より観光客は少なくなっていたけど、普段はひとっこひとりいないのよ。そんな静かなここが好きだったのだけど、手を繋いで歩く男女もちらほらと目について、不思議と心が弾んでしまったの。
この時期は嫌いだったのに、活気づいたこの場所が急に華やいでみえて。
ううん。それだけじゃないわね。あなたに会えるかもと期待してまた橋を渡ったからよ。
浜辺に腰を下ろして、さざ波の音を聞きながら揺らぐ水面を頭を真っ白にして見ているのは飽きがこなかった。遠くに見えるホテルの灯りも、レジャーシーズンだからとライトアップされた数々の浮島もとても綺麗。
ドラマのような再会を期待していたけど、やっぱりそんなことってなかなか起きないのね。
そう悟って腰をあげ、危なげにあの階段を下りて橋を戻り始めた時。あなたはひとりでこちらに歩いてきた。
しばらくわたしに気づかなかったでしょう?
途中で足を止めて桟橋に寄りかかり、海を眺めていたものね。
でもわたしはすぐに気がついた。
消沈した心が急に高鳴ってしまって、どうしようかと不審にもその場でウロウロしてしまったの。
でも進むことに決めたわ。元から戻るつもりだったんだもの。なにもおかしいことなんてないわよ。そう強く自分に言い聞かせて。
昼間に渡った時は長い橋だと思ったのに、彼との距離が近づくのはあっという間に感じられた。緊張してゆっくりと歩んでいたのに不思議よね。静かな目で海を眺めるあなたの横顔をもっと見ていたかったわ。
声をかけるのもはばかられて何度も口を開きかけたけど、臆病なわたしは結局項垂れてあなたの後ろを通り過ぎてしまった。バカよね、あなたに会いたくてここまできたのに。
でも数メートル離れてからこっそり振り返ってしまった。
そしたら、あなたったらこちらに戻ってくるんだもの。バッチリ目が合ってしまって、思わず硬直してしまったじゃない。
「あれ? 昼間の?」
「は、はい! こんばんわ。お散歩ですか?」
あなたは至極自然な態度だったのに、わたしったら上擦った声で緊張してるのがバレバレだったわ。変に思ったでしょうね。
でも気さくなあなたは特に気にした様子もなく、話しかけてくれたわよね。すごくほっとしたわ。昼間はろくに話すこともできなかったけれど、話してみたらやっぱり想像したとおり優しくて楽しいひとだった。
ふたりで桟橋に寄りかかってライトアップを眺めながら笑い合ったわよね。
ここには二日間滞在する予定だと教えてくれた。初めてこの土地を訪れたことや、昼間に見たもの、食べたもの。そんな話をして明日の予定は決めていないというから、お勧めのスポットを教えてあげたら凄く喜んでくれた。その笑顔が可愛くて、わたしまで嬉しくなった。
帰り際、ホテルの玄関前で手を振ってくれたあなたに、わたしは多分一生分の勇気を振り絞ったと思うわ。
「あっ、明日の夜もここで会えますか?」
壊れそうなほど心臓はバクバクとうるさくて、いった傍から恥ずかしさに耐えきれず逃げ出したくなってしまったのだけど。
「いいよ。じゃあ、また明日ね!」
友達にでも返事するようなノリで、相変わらずあなたったら自然な態度で笑顔を向けてくれた。とても嬉しかったけど、緊張したのがバカらしく思えてしまったわ。
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