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(天使の爪痕編)
可笑しな関係のはじまり
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理恵はクラブ活動で帰る時間が遅くなってしまうので、美紀は最近、毎日の様に涼子と二人で下校していた。
卯月からも「極力ひとりにはならないで」と言われており、選択肢の少ない美紀は自ずと涼子と一緒に帰る事になる。
理恵や卯月の様にときめく事もなければ、マイナスの方向に感情を揺さぶられる事もない。両親の件も知っており、話をきちんと聞いてくれるが、変に同情したり意見しようとは決してしない。
この時間が、今の美紀にとっては気が楽で妙に心地良かった。と言うより寧ろ、心の平静を保つ為に必要だった。
「中澤さんは、何か部活とかやらないの?」
「わたしは無気力ですから」
「あ、一緒一緒」
「でも中学の時は強制的に何か部活をやらなくちゃないけかったんで、仕方なく弓道部に入ってました」
「へえ、そんなのあったんだ。珍しいね。ちゃんと真面目にやってた?」
「はい。一応、ちゃんと真面目にやってましたよ。弓道って試合の時に袴を履くんですけど、その時女の子だけ、胸当てをするんですよ」
「へえ、そうなんだ」
「何でやるか分かりますか?」
「……心臓を守る為じゃないの?当たったら危ないでしょ?」
「本当のところは、わたしも知らないんですけど……」
「ダメじゃん」
「でも先輩が言うにはですね、こう、弓を弾いた時に、おっぱいに弦が引掛からない様にする為の物らしいですよ」
「あはは。で、中澤さんは引掛かった?」
「試した事ありませんし……でも、多分引っ掛かりません……」
「あぁ~……」
「その反応やめて下さい!」
「いやーごめん、でも海野さんだったら引掛かるかな?」
「試してみたいですね」
美紀自身、こんなにも軽いノリで人と話をする事が出来たものなのかと感嘆してしまう。それに何となくではあるが、彼女が卯月よりも達観していると思われる節もある。
一歩踏み込んだ話をしても(同い年だが)大人の対応をしてくれるのではないかと期待していた。
「……ねえ、中澤さん。ちょっと聞いてもいいかな?」
「……何ですか?」
「中澤さんこの前あたしに、夏休み中に海野さんと何かあったんじゃないかって聞いてきたよね。何でそう思ったのかなと思って」
「ああ、あの事ですか……海野さんの様子がおかしいと思ったのは、主に狩谷さんに対してだったからです。何か前よりもよそよそしく感じるというか、距離を取っているというか……」
「……あたしと海野さんって、周りの人から見ると、どういう風に見える?」
「うーん、どうもその質問は、要領を得ないですね」
「だよねぇ」
美紀は苦笑いした。
「例えば、二人が恋人同士に見えるとか、そういう事ですか?」
美紀はぎょっとした顔で、涼子の方を見た。喋り方だけでなく、表情まで豊かになっていた。
「あのさぁ……あたし、海野さんとキスしちゃった……」
「……えっ?」
涼子がその言葉を理解するまでに、少し時間が掛かった。
「ええーっ!?」
涼子は絶叫した。その勢いに、美紀は逆に面食らってしまった。
「何でそういう事するんですか!?狩谷さんって、そういう人だったんですか!?」
涼子は体を退け、美紀から離れようとした。普段は大人しい涼子からすれば、大凡考えられない様な取り乱し方だった。
「ちょっと、違うってば。ねえ、聞いて。全然そういうんじゃないから。あたしにとっては、軽いコミュニケーションのつもりだったんだから」
「……海野さんはそう思ってないですよ、多分」
「あたし、今、海野さんにどう思われてるのかな?変態だと思われてるかな……」
「そんなの分かりませんよ……」
「じゃあ、中澤さんだったらどう思うかな……」
美紀は足を止め、涼子の瞳をじっと見つめた。涼子も釣られる様に足を止める。
そのまま美紀はゆっくりと、顔を近付けていった。
「……まさか」
「……観念して」
涼子は魔法に掛かった様に目を閉じ、二人は唇を重ねた。
涼子は一切の抵抗をせず、美紀の事を受け入れた。唇が剥がされると、涼子は静かに目を開けた。
「……中澤さん、何で抵抗しないの?」
「……何かこう、見つめられているうちに、狩谷さんだったらいいかなって思っちゃいました。だって狩谷さん、すごく綺麗じゃないですか。狩谷さんが女の子だからとか、そんな事はどうでもいいくらい、どきどきするほど綺麗なんです」
少し高揚した様子ではあったが、涼子はあくまで自分のペースで淡々と喋っていた。一方の美紀も、理恵や卯月の時と違って落ち着いて聞いていた。
「……やっぱり、中澤さんって変わってるね」
「……まあ海野さんがわたしと同じように受け入れてくれるかっていうと難しいと思いますけど。海野さんは真面目な人だから、いろいろ考えて悩んじゃうんじゃないかなと思います」
「それは経験の差?」
「それはノーコメントです。そんな事より……狩谷さんって、キス魔ですね」
「!!!!!!!!」
はっとして、美紀は過去の自分の行動を思い出すと、赤面して下を向いてしまった。
「……当分の間、キスは自粛します……あらゆる人に対して……」
「えっ、そうなんですか勿体ない」
「ええ……」
「それじゃ、最後にもう一回だけしときましょうか」
「どういう理屈なのそれ……」
「ご利益ご利益」
涼子は踵で体を小さく上下に弾ませていた。美紀は仕方なく涼子にキスした。
卯月からも「極力ひとりにはならないで」と言われており、選択肢の少ない美紀は自ずと涼子と一緒に帰る事になる。
理恵や卯月の様にときめく事もなければ、マイナスの方向に感情を揺さぶられる事もない。両親の件も知っており、話をきちんと聞いてくれるが、変に同情したり意見しようとは決してしない。
この時間が、今の美紀にとっては気が楽で妙に心地良かった。と言うより寧ろ、心の平静を保つ為に必要だった。
「中澤さんは、何か部活とかやらないの?」
「わたしは無気力ですから」
「あ、一緒一緒」
「でも中学の時は強制的に何か部活をやらなくちゃないけかったんで、仕方なく弓道部に入ってました」
「へえ、そんなのあったんだ。珍しいね。ちゃんと真面目にやってた?」
「はい。一応、ちゃんと真面目にやってましたよ。弓道って試合の時に袴を履くんですけど、その時女の子だけ、胸当てをするんですよ」
「へえ、そうなんだ」
「何でやるか分かりますか?」
「……心臓を守る為じゃないの?当たったら危ないでしょ?」
「本当のところは、わたしも知らないんですけど……」
「ダメじゃん」
「でも先輩が言うにはですね、こう、弓を弾いた時に、おっぱいに弦が引掛からない様にする為の物らしいですよ」
「あはは。で、中澤さんは引掛かった?」
「試した事ありませんし……でも、多分引っ掛かりません……」
「あぁ~……」
「その反応やめて下さい!」
「いやーごめん、でも海野さんだったら引掛かるかな?」
「試してみたいですね」
美紀自身、こんなにも軽いノリで人と話をする事が出来たものなのかと感嘆してしまう。それに何となくではあるが、彼女が卯月よりも達観していると思われる節もある。
一歩踏み込んだ話をしても(同い年だが)大人の対応をしてくれるのではないかと期待していた。
「……ねえ、中澤さん。ちょっと聞いてもいいかな?」
「……何ですか?」
「中澤さんこの前あたしに、夏休み中に海野さんと何かあったんじゃないかって聞いてきたよね。何でそう思ったのかなと思って」
「ああ、あの事ですか……海野さんの様子がおかしいと思ったのは、主に狩谷さんに対してだったからです。何か前よりもよそよそしく感じるというか、距離を取っているというか……」
「……あたしと海野さんって、周りの人から見ると、どういう風に見える?」
「うーん、どうもその質問は、要領を得ないですね」
「だよねぇ」
美紀は苦笑いした。
「例えば、二人が恋人同士に見えるとか、そういう事ですか?」
美紀はぎょっとした顔で、涼子の方を見た。喋り方だけでなく、表情まで豊かになっていた。
「あのさぁ……あたし、海野さんとキスしちゃった……」
「……えっ?」
涼子がその言葉を理解するまでに、少し時間が掛かった。
「ええーっ!?」
涼子は絶叫した。その勢いに、美紀は逆に面食らってしまった。
「何でそういう事するんですか!?狩谷さんって、そういう人だったんですか!?」
涼子は体を退け、美紀から離れようとした。普段は大人しい涼子からすれば、大凡考えられない様な取り乱し方だった。
「ちょっと、違うってば。ねえ、聞いて。全然そういうんじゃないから。あたしにとっては、軽いコミュニケーションのつもりだったんだから」
「……海野さんはそう思ってないですよ、多分」
「あたし、今、海野さんにどう思われてるのかな?変態だと思われてるかな……」
「そんなの分かりませんよ……」
「じゃあ、中澤さんだったらどう思うかな……」
美紀は足を止め、涼子の瞳をじっと見つめた。涼子も釣られる様に足を止める。
そのまま美紀はゆっくりと、顔を近付けていった。
「……まさか」
「……観念して」
涼子は魔法に掛かった様に目を閉じ、二人は唇を重ねた。
涼子は一切の抵抗をせず、美紀の事を受け入れた。唇が剥がされると、涼子は静かに目を開けた。
「……中澤さん、何で抵抗しないの?」
「……何かこう、見つめられているうちに、狩谷さんだったらいいかなって思っちゃいました。だって狩谷さん、すごく綺麗じゃないですか。狩谷さんが女の子だからとか、そんな事はどうでもいいくらい、どきどきするほど綺麗なんです」
少し高揚した様子ではあったが、涼子はあくまで自分のペースで淡々と喋っていた。一方の美紀も、理恵や卯月の時と違って落ち着いて聞いていた。
「……やっぱり、中澤さんって変わってるね」
「……まあ海野さんがわたしと同じように受け入れてくれるかっていうと難しいと思いますけど。海野さんは真面目な人だから、いろいろ考えて悩んじゃうんじゃないかなと思います」
「それは経験の差?」
「それはノーコメントです。そんな事より……狩谷さんって、キス魔ですね」
「!!!!!!!!」
はっとして、美紀は過去の自分の行動を思い出すと、赤面して下を向いてしまった。
「……当分の間、キスは自粛します……あらゆる人に対して……」
「えっ、そうなんですか勿体ない」
「ええ……」
「それじゃ、最後にもう一回だけしときましょうか」
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