徒然なる恋の話

焔 はる

文字の大きさ
176 / 617
五夜【甘い戯れと赦し】

5-32

しおりを挟む
「ここ、いい所だね・・・」

両手に片足ずつ、ブーツと靴下をぶら下げて、ロングスカートも捲りあげて、波が足を濡らすのに任せたまま大海原に向かい仁王立ち。

ドラマか映画のワンシーンのように、ザッバーン!と波音がしそうなその背中を見ながら、打ち上げられた流木に腰を下ろした。

「うん、たまに来てた。日中も人は少ないし静かだし。」

「・・・・・・1人で?」

・・・え、なんか気にしてくれるのか・・・?これ・・・

「・・・気になるの?」

「・・・なんとなく聞いてみただけ。」

「・・・ヤキモチ?」

「違うよ」

あ・・・違う、のね・・・そんなハッキリ・・・

「桜太に彼女がいて、彼女と来ててもいいの。そうじゃなくて、なんていうか・・・1人で悩んだりとか、やっぱりあるよな、って・・・ふと思ったから・・・」

「・・・彼女とか・・・女と来たことは無いな・・・。1人で来る時は、なんとなくブラっと気分転換だったり・・・悩んでグダグダしたのは、人生の中で椎娜の事だけ」

自嘲気味に笑うしかない。

暁月、蓮、誠司と会社を立ち上げた時も、悩むより行動だったし、4人ならなんとかなるだろうって、勢いで立ち上げ、なんとか軌道に乗り、ここまできた。

ほんと情けないくらいグダグダして行動出来なかったのは椎娜の事だけだ・・・。

「・・・じゃあ、もう悩まなくていいね」

振り向いて、波に足を絡めながら近づく椎娜の影が落ちる。

「・・・そんなことない」

「?何か悩むの?」

不思議そうな椎娜に両手を広げると、椎娜は手にしていたブーツと靴下を置き、俺の腕に納まった。

椎娜の腰から背中に手を回して、顔が丁度・・・胸の位置。

「・・・好きすぎて、どうしていいかわからない。」

「・・・真似、しないでよ~」

「ふっ・・・同じでしょ」

「うん・・・同じだね・・・」

胸元から見上げる俺の髪を撫でて、サングラスを外し、見下ろす瞳と視線がぶつかる。

「・・・桜太の好き・・・」

「・・・そ?」

「うん・・・ドキドキ・・・する・・・」

椎娜のサングラスを外して、もう一度腰に手を回した。

少し腰を屈めて椎娜が唇を寄せると、額に、瞼に頬に、リップ音を立ててキスを降らせた。

「・・・してくれないの?」

唇に。

椎娜が好きと言った瞳でジッと見つめ、頬を包む手のひらに唇で触れた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

密室に二人閉じ込められたら?

水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

処理中です...