徒然なる恋の話

焔 はる

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六夜【求めよ、さらば救われん。】

6-11

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「・・・むぅ・・・」

見透かされてる・・・。

堪えるように岐津さんは笑う。

「あのさ、もちろん鍵はあるってことでいいんだよね・・・?送ってったはいいけど外で待つなんて・・・」

「はい、大丈夫です。鍵、あります・・・」

それに岐津さんは、驚き半分な表情で「へ~・・・」と声を漏らしていた。

「・・・なぁんだ。心配しなくてもあいつのド本命じゃねぇか。ったく・・・初々しいねぇ・・・」

「・・・?」

「あ、いやこっちの話」

ニッコリと微笑み、路肩に停車した1台の車を指さした。

「あ、ほらあれ乗って。」

岐津さんが指さしたのはハザードをあげて停まっている1台の黒いワンボックス。

「大丈夫、俺もついてくし、運転俺じゃないし。飲んじゃったからね。」

「・・・はい・・・」

「・・・不安?ちょっと待って。」

岐津さんはスマホを耳に当てる。

「・・・・・・あ、もしもし、悪いな手短に終わるから。あぁ、飯食って今からお前んちに送るとこなんだけど、賢い子だからちゃんと警戒心機能してて、不安みたいで、うん、ちょっと代わるわ」

岐津さんの目と、「はい」と差し出されたスマホの画面の名前。

心臓が大きく鳴る。

少し震える手で受け取って、スマホを耳に当てる。

「・・・もしもし・・・」

『・・・椎娜?』

・・・あぁ・・・だめ・・・

・・・簡単に決壊する、涙の海はいつも即時満タンになる。

それを見て、苦笑している岐津さん。

数日ぶりに耳に響く愛しい人の声。

「・・・っ・・・桜太・・・」

『(笑)・・・離れてて泣いても俺抱きしめられないじゃん、しかも、岐津さんに泣き顔見られちゃうし・・・』

「う・・・だ、って・・・」

『・・・待っててくれるんでしょ・・・?』

「・・・ん・・・いいの?」

『いいよ、いてよ・・・抱きしめたい・・・迎えに行けなくてごめんね・・・岐津さんなら大丈夫だから送ってもらって・・・?』

「・・・わかった・・・」

『ありがとう、家着いたら自由に寛いでていいからね。明日休み?』

「うん、休み・・・」

『そっか、そしたら俺が出る時家に送るね。』

「ん・・・」

『・・・椎娜・・・あとで会えるの楽しみにしてる。』

「・・・うん、私も。」

『じゃあ、岐津さんに代わってくれる・・・?』

画面をさっと拭いてお礼を言って岐津さんにスマホを返した。
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