徒然なる恋の話

焔 はる

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七夜【大切なもの、守りたいもの】

7-26~side by 岐津 元春~

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「椎娜ちゃん・・・!!」

彼女が隠れているトイレがあるフロアまでエスカレーターを駆け上がり、目に飛び込んで来たのは、予想しうる中でも最悪に近いシナリオ。


・・・チッ・・・なんでここに黒木がいるんだ・・・!


どうしたら、彼女を無事に取り返して、黒木を仕留められる・・・!?


連れてきた組の連中に黒木が逃走出来そうな経路を封鎖させて、野次馬の如くカメラを構える連中を遠ざけさせた。


「ッがァ・・・!!」


バキャッ・・・!っという鈍い音と共に、呻き声が上がった。


黒木の手から逃れた彼女が、身体をよろめかせて、こっちへ走ってきた。


・・・な、んだ?

え、何が起こった・・・?


「っっ・・・は、・・・き、きづ、さ・・・ッ」

ふらつく彼女を抱き留めて、

「椎娜ちゃん・・・!なに、したの?!ていうか、怪我は??大丈夫?!」

両肩を掴んで頭の先から足の先まで目を走らせ、右手が血まみれなことに気がついた。

「手・・・!!何された?!」

「ち、ちが・・・、これ、です・・・!」

「・・・・・・それ・・・・・・」

目の前に彼女が掲げたのは、固く握られ、デカい文字盤は血まみれになったメンズ物の腕時計だった。

「怪我はないです、これを思いっきり・・・」

「・・・っ・・・いってぇ・・・」

隣ではナツが、まるで自分が殴られたように顔をしかめた。


「・・・ッて、め、ぇ・・・!椎娜ぁ・・・!!!」

鼻と口から血を流し、手で押える黒木が怒り満ちた叫びを上げる。

ビクッと身体を震わせる彼女をナツに預けて遠ざけ、フロアに散った連中に目配せをした。

「椎娜ちゃん、よくやった。」

思わず口元が緩んだ。

形勢逆転。

こうなりゃこっちのもんだ。

「おい黒木、好き勝手やってくれたお陰で、うちの親父が大層お怒りなんだ。お前の相手は俺がしてやるよ。」

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