徒然なる恋の話

焔 はる

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七夜【大切なもの、守りたいもの】

7-39~side by 椎娜~

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吐きそうになるムスクの香り、高圧的、威圧的、力任せで会話は成り立たない、気に入らなければ暴力で、反論すればボロボロになるまで犯される。

そんな、数ヶ月間。

蘇る記憶に、

「椎娜・・・!!」

桜太の手を振り払ってトイレに駆け込んだ。

最後に食べたチクワはとうに消化され、何も入っていない胃からは、嘔吐えづいても唾液と胃液しか出なかった。

それでも、思い出してしまった嫌悪と恐怖に、震えが止まらなくて、寒くて、また嘔吐いた。


『教えただろ?俺が望んだら、お前はどうするのが正しいのか・・・忘れてねぇよな?戻ってこい、椎娜・・・』


うるさい・・・うるさい・・・!!

あんたとは違う・・・!!

桜太はあんたなんかとは違う・・・!!!


『女は俺の道具だ・・・お前だって・・・言うこと聞いてりゃ、男は見逃してやったのに・・・』


・・・大丈夫・・・あいつはもう現れない・・・

岐津さんたちがどうにかしてくれるから大丈夫・・・

桜太が何かされることはない・・・


『椎娜』

やめて

『椎娜』

やめて・・・!!

『椎娜』

呼ばないで・・・!!!


黒木の声が耳に木霊して、ねっとりとまとわりつく。

ドロドロと脳内に広がり、耳を引きちぎりたくなる。

触られた身体も、手が、指が触れた顔も、汚くて、不潔で、パーツを全部交換出来たらいいのに・・・



「しいな!!!!」



「っ・・・!!」



「!な、服・・・!!ぬ、なんで裸・・・!?いや、・・・ごめん、無理に聞かないよ・・・言わなくていい・・・ごめんな・・・」



桜太が追ってきて扉を開いた時、私は吐きながらトイレで下着以外の服を全て脱いでいた。

右手が使えなくても、黒木に触れた服なんて着ていたくなくて、力任せに全て脱いだ。


汚い

きたない

汚い

キタナイ・・・


こんなままで桜太といたくない。

桜太に触れたくない・・・

桜太には触れられない・・・

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