徒然なる恋の話

焔 はる

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十五夜【壊れていく音】

15-17~side by 椎娜~

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「家に帰る」


 言ってしまえば呆気ないもので、荷物を纏めて着替え、なんの痕跡もなく部屋を出る私に、桜太は何も言わなかった。


 どこにも行かない、傍にいる、1ヶ月の間・・・そんな子供じみた言葉遊びで、無理矢理抱かれた事、自分の感情を誤魔化して桜太の傍にいる事を続けるのは無理だった。



 ・・・離れたい・・・



 桜太だから、好きになれたその行為が、互いを確かめて愛しい感情から重ねるものでないなら、私は傍にいたくなかった。


 幼馴染の安心感と、思ってくれている事を理解していても、ぶつけられた嫉妬心、執着心を、私は処理しきれなかった。


 桜太にだから、桜太には、一番されたくなかった行為。



 ・・・・・・離れたい・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・離れたい・・・・・・・・・・・・



 生まれた感情は止められずに零れ落ちた。


 『あ』と思った時には、ほんのわずかな後悔と・・・・・・ほっとした。




 車に荷物を乗せて私の部屋まで送ってくれる間、互いに何も喋らず、仕事を終えて帰ってきたばかりだった桜太は、スーツからラフな私服に着替えただけで夜ごはんもお風呂もまだだった。


 ・・・・・・なんで・・・・・・なんでこうなっちゃったんだろう・・・・・・


 私が広い心で、笑って許してあげれていたら違ったのかな・・・・・・


 でも・・・・・・許したくても、それだけじゃない感情がグチャグチャに絡み合い、「どうして言葉で伝えてくれなかったんだろう」、「どうして怒りをぶつけるようなセックスをしたの?」という不信感、私なりの怒りが、私から素直さも余裕も掻き消した。


『ねぇしぃちゃん!!水無瀬ライって誰!!』そんな風に問い詰めてくる桜太も想像できるのに、桜太が取った行動は、無理矢理私を抱く事だった。


 私は桜太を安心させる説明も弁明も、大切な繋がりや関係を壊さない為に事実を説明する事さえ許されずに、貫かれて揺さぶられ、熱い杭を打ち付けられ、結局男には力で敵うわけもなくて、女はこうされるのか・・・と虚しく思いながら、冷えていくハラの奥深くに桜太を受け止めた。



 ・・・・・・悲しい?


 ・・・・・・辛い?


 ・・・・・・怒り?


 そんな簡単な言葉で表せない、<グチャグチャな感情>がいつまでも胸に渦巻いていた。
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