夜鴉

都貴

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第三章 黄泉還り

奇怪な殺人事件②

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 光季は優と組んで行方不明になった早川綾子の家を訪れた。

 家の入り口にキープアウトの物々しいテープが張られていて、警察がいた。
 二人は換装した状態で夜鴉の紋章がある隊服を着ていたので、現場にいた警察官はすぐに殺害現場に入れてくれた。

 早川綾子の家では彼女の父と母、そして祖母が殺害された。
 夜の犯行であり、現場はそれぞれの寝室だ。
 血にはすっかり慣れている。

 血痕が残る部屋を見ても、光季は平然としていられた。

「どうですか、優さん。おれは今んとこなんも感じないです。妖怪も潜んでないし」
「そうだね。オレも感じない。妖怪が隠れてる気配もない」

 二人は綾子の家を出ると、その足で近所の家を訪れた。
 チャイムを鳴らすと、玄関が開いて中年のおばちゃんが顔を覗かせる。

「こんにちは、夜鴉の松風と申します。こっちは水瀬です。お聞きしたいことがあるんですけど、時間、大丈夫ですか?」

「あらまあ、夜鴉の隊員さん?初めて見るわ。二人とも若いのねえ、学生さんじゃないの。どうぞ、上がってちょうだい」

 光季と優が訪れた家の人は、夜鴉に友好的な態度だった。
 二人は家の応接間に通され、冷たいアイスティーとカステラを勧められた。
 光季と優はありがたくお茶とお菓子を頂戴する。

「夜鴉の隊員さんがくるなんて、妖怪でもでたの?」

 好奇心を滲ませた目が光季と優を見る。優がにこやかな笑みを浮かべた。

「妖怪はでてませんのでご安心を。実はオレたち、早川サンのお宅での殺人事件について調べているんですけど、ここ最近変わったことはありませんでしたか?」

「変わったこと。うーん、早川さんの家は誰かに恨まれるような感じじゃなかったわ。旦那さんは堅実な銀行員さんだったし、奥さんは物静かで温厚な人だったしねぇ」

「早川綾子さん、娘さんのことは知ってますか?」

 光季が尋ねると、向かいに座ったおばちゃんが身を乗り出してくる。

「綾子ちゃんでしょ、知ってるわよ。昔は元気な子だったけど、高校入ってからすっかり不良少女みたいになっちゃって、髪なんて金色よ。あら、あなた達も染めてるのね」

 おばちゃんがほんの少し不快感を滲ませた。

「おれも優さんも地毛なんです」

 光季が人懐っこい笑みで答えると、おばちゃんはまた満面の笑みを浮かべた。

「あらぁ、そうなの。自然な色合いだものねぇ。ハーフみたいでかっこいいわね。
 そう、それで綾子ちゃんなんだけどね、一カ月ぐらい前に家出しちゃってたでしょう。
 ずっと帰ってなかったのに、一週間くらい前、ふらりと家に帰ってきたみたいでねぇ。
 あの子が家に入ってくのを見たのよ。

 でも、ご両親がこんなことになっちゃってかわいそうにねぇ。
 あら、でもそう言えば彼女今どうしてるのかしら。
 またどっか行っちゃって事件のことも知らないのかもねぇ」

 おばちゃんが大袈裟に可哀相だと繰り返す。
 光季はそれに同調しながらも、まったく別のことを考えていた。

 長々と喋り出したおばちゃんの話を上手く切り上げて、二人は隣宅をあとにした。
 その後、周辺の家で話を聞いたところ、何人か綾子を見た人がいた。

「なんかどうにも嫌な気がするね」

「おれもです。実は陽平から変な話を聞いて。ただの作り話だと思ってたんだすけど、この事件と関係ある気がしてきました」

「なにそれ、どんな話?」

「簡単に言うと、行方不明の妹が戻ってきて姉を食べちゃったって話です。ほんと、くだらないただの怪談」

「それ、今回の事件の真相かもね」

「おれもそう思います。妖怪に誘拐された人は異界でエネルギー源にされるだけじゃなくて、中には兵士にされる人もいるんでしょ。犯人、それじゃないですか?」

「ありえるね。よし、基地に戻って報告しよう。みんなそろそろ戻ってるだろうしね」

 光季と優は走って基地に帰った。



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