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第三章 黄泉還り
奇怪な殺人事件④
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光季はいつものように屋根の上を飛んでいかずに、廃ビルから見えにくいルートを選んで住宅街の屋根の下や林の中を走った。
綾子を途中で振り切ったのを確認してから廃ビルの地下駐車場に入り、足音を殺して上の階を目指す。
「先輩、親玉の位置を見つけたんですね」
「ああ。このビルの上の方だ。ぜってーとっ捕まえるぞ」
今、糸は目視できない。相手に気付かれていないことを祈り、光季はさっき見た糸の終着点に向かった。
光季と京弥は廃ビルの最上階、四階の角部屋に辿り着いた。
硝子が嵌まっていない窓だった場所から、黒衣の男が地上を見下ろしていた。
どうやらあれが今回の事件の首謀者のようだ。
光季は注意深く近付こうとした時、敵が振り返った。
フードの下から覗く顔は恐ろしい髑髏で、指先には無数の糸が絡んでいた。
「嗅ぎつけられようとは。夜鴉を甘く見ていたか―…」
奈落から響くような低い声が空気を揺らす。
光季と京弥は戦闘態勢をとった。
「人を操って事件を起こすなんて、ずいぶんとせこい真似してくれてんじゃねぇか。覚悟はできてるか?」
「人間ごときが偉そうに。この私を倒す気でいるとは。ゆけ、傀儡よ」
男が指揮者のように手を振った。
すると、部屋の隅の闇で何かが蠢いた。
目を凝らすと、中年男性、少女、青年の三人が揺れながら立ち上がるのが見えた。
みな、ここ半年の間にいなくなった行方不明者だ。
「ったく、自分の力でかかってこいよ。ヘタレやろう」
襲ってくる人を避けながら、光季は光弾を放った。
光弾で糸を切ると、三人はそろって地面に崩れ落ちて動かなくなった。
壊れたマリオネットを連想とさせる光景だ。
「チェックメイトだな」
光季はそう告げると、無数の光弾で髑髏の男を撃ち抜いた。
驚くほどあっさりと男は攻撃をくらい、そのまま絶命して消えた。
「とりあえず任務完了。あとは行方不明者を送り届けないとな」
「水瀬先輩、その必要はないようです」
京弥の静かな声に弾かれて振り返る。倒れた三人が目の前で、みるみるうちに腐敗して骸と化していく。
「操られてた行方不明者は、もう死んでたのか」
光季は特務にあたっていた虎徹達に連絡を入れた。
あとの処理は夜鴉の事務サイドがしてくれることとなり、光季と京弥は遺体を置いて廃ビルを後にした。
人を攻撃せずにすんで光季は密かにほっとした。
もし、彼らが操られた死体ではなく、妖怪側の兵士となった人だったら。
そう思うと少しぞっとした。
「なんか、嫌な任務だったな」
「はい」
「不完全燃焼だし、京弥、これから用事ある?」
「いや、別にないですけど」
「じゃあ基地に戻ってちょっと訓練付き合ってくれよ。敵、手ごたえなさすぎてなんかムズムズしちまってさ。いいだろ?」
「しょうがない人ですね、貴方は。いいですよ、そのかわり、飯でも奢って下さいね」
「おー、もちろん。行こうぜ」
クサクサする気分を吹き飛ばすために、光季は京弥を連れて基地の闘技場に急いだ。
綾子を途中で振り切ったのを確認してから廃ビルの地下駐車場に入り、足音を殺して上の階を目指す。
「先輩、親玉の位置を見つけたんですね」
「ああ。このビルの上の方だ。ぜってーとっ捕まえるぞ」
今、糸は目視できない。相手に気付かれていないことを祈り、光季はさっき見た糸の終着点に向かった。
光季と京弥は廃ビルの最上階、四階の角部屋に辿り着いた。
硝子が嵌まっていない窓だった場所から、黒衣の男が地上を見下ろしていた。
どうやらあれが今回の事件の首謀者のようだ。
光季は注意深く近付こうとした時、敵が振り返った。
フードの下から覗く顔は恐ろしい髑髏で、指先には無数の糸が絡んでいた。
「嗅ぎつけられようとは。夜鴉を甘く見ていたか―…」
奈落から響くような低い声が空気を揺らす。
光季と京弥は戦闘態勢をとった。
「人を操って事件を起こすなんて、ずいぶんとせこい真似してくれてんじゃねぇか。覚悟はできてるか?」
「人間ごときが偉そうに。この私を倒す気でいるとは。ゆけ、傀儡よ」
男が指揮者のように手を振った。
すると、部屋の隅の闇で何かが蠢いた。
目を凝らすと、中年男性、少女、青年の三人が揺れながら立ち上がるのが見えた。
みな、ここ半年の間にいなくなった行方不明者だ。
「ったく、自分の力でかかってこいよ。ヘタレやろう」
襲ってくる人を避けながら、光季は光弾を放った。
光弾で糸を切ると、三人はそろって地面に崩れ落ちて動かなくなった。
壊れたマリオネットを連想とさせる光景だ。
「チェックメイトだな」
光季はそう告げると、無数の光弾で髑髏の男を撃ち抜いた。
驚くほどあっさりと男は攻撃をくらい、そのまま絶命して消えた。
「とりあえず任務完了。あとは行方不明者を送り届けないとな」
「水瀬先輩、その必要はないようです」
京弥の静かな声に弾かれて振り返る。倒れた三人が目の前で、みるみるうちに腐敗して骸と化していく。
「操られてた行方不明者は、もう死んでたのか」
光季は特務にあたっていた虎徹達に連絡を入れた。
あとの処理は夜鴉の事務サイドがしてくれることとなり、光季と京弥は遺体を置いて廃ビルを後にした。
人を攻撃せずにすんで光季は密かにほっとした。
もし、彼らが操られた死体ではなく、妖怪側の兵士となった人だったら。
そう思うと少しぞっとした。
「なんか、嫌な任務だったな」
「はい」
「不完全燃焼だし、京弥、これから用事ある?」
「いや、別にないですけど」
「じゃあ基地に戻ってちょっと訓練付き合ってくれよ。敵、手ごたえなさすぎてなんかムズムズしちまってさ。いいだろ?」
「しょうがない人ですね、貴方は。いいですよ、そのかわり、飯でも奢って下さいね」
「おー、もちろん。行こうぜ」
クサクサする気分を吹き飛ばすために、光季は京弥を連れて基地の闘技場に急いだ。
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