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第四章 ハロウィンの魔物
道化師の噂
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風に乗ってふわりと漂ってきた甘い香りに光季は鼻をひくつかせた。
首を巡らせると、オレンジ色の小さな花をたわわに咲かせた枝が目に入った。
金木犀か。いい匂いだけど、食べても不味いんだろうな。
日勤の巡回任務を終えて帰宅途中の思考回路では、いろいろな物事が食欲に結びついてしまう。
時刻は午後八時半、空きっ腹に芳香が沁みる。
「あー、腹へったー。もう歩きたくねー」
けだるい声で呻くと、隣を歩いていた京弥がクスリと笑った。
「家帰ったらすぐに夕飯でしょう。頑張って歩いて下さい。先輩そんなに食べないから、今食べると夕飯が入りませんよ」
「そこまで食細くねーよ。けっこう食うっての。よし、優しい先輩がなんか奢ってやるよ」
「マジですか、ゴチになります」
丁度コンビニの前を通りかかったので、ふらりと中に入る。
ハロウィンが近いからかスイーツの棚にはパンプキンプリンやパンプキンタルトと南瓜商品が目白押しだ。
でも今は甘いものを食べたい気分じゃないし、京弥だってガッツリ系のものが食べたいはずだ。光季はホットスナックのショーケースの前に移動した。
「京弥、なに食う?」
「そうですね、それじゃあ俺はジャンボ肉まんで」
「おー、いいねー。おれはチキンにしよー」
「先輩いつもチキンじゃないすか。本当に好きですね」
「別にいいだろ。うまいんだもん」
京弥の頭に軽くチョップをいれると、光季は肉まんとチキンを注文した。
歩きながらビニール袋をあける。肉まんとチキンからのぼる湯気が白い。
冬の気配が近付いているらしい。肉まんもおいしそうだな。寒い季節になると無性に肉まんが恋しくなる。おれも肉まんにするんだったな。
くだらないことを考えながら歩いていると、不意に京弥が神妙な声で言った。
「水瀬先輩、近頃、ハロウィンの魔物が出るそうです。学校で噂になってるんです」
「ハロウィンの魔物? へえ、中学ではそんなん流行ってんのか。なんだよ、それ」
「黒いマントを羽織った、奇妙な道化師の恰好の怪物です。夜な夜な現れて、塾帰りの子供や夜遊びしていた少年少女を襲って体の一部を切断するそうですよ」
京弥は同じ中学に居た頃から、なにかと人を驚かせようとしてきた。
京弥のやつ、またおれをびっくりさせようとしてるな。簡単に騙されるもんか。
光季はわざと素っ気ない声をだす。
「ふーん。道化師ね。それさ、どこがどうハロウィンと関係あんだよ?」
「さあ。時期じゃないですか?」
「襲われた奴はどうなったんだよ。そもそも、誰か襲われたって奴いるのか?」
「襲われた本人から話を聞いたことはないです。被害者はみんな死んでいるらしいです」
「なんだそりゃ。じゃあさ、なんで襲ってくる奴が道化師の格好してるって知ってんだよ。目撃者でもいたのかよ」
「どうでしょうね。少なくとも俺は目撃談を聞いたことはないですけど」
「じゃあデマだな。誰かがハロウィンにかこつけて流したつまんない噂だろ。でもその話がほんとなら、夜鴉に依頼がくるかもなー」
「そうですね」
光季が怖がらなかったことに悔しがることなく、涼しい顔で京弥が同意した。
可愛くない奴だ。
光季は密かに肩を竦めた。
頬に吹きつける夜風が酷く冷たい。自然と早足になった。
首を巡らせると、オレンジ色の小さな花をたわわに咲かせた枝が目に入った。
金木犀か。いい匂いだけど、食べても不味いんだろうな。
日勤の巡回任務を終えて帰宅途中の思考回路では、いろいろな物事が食欲に結びついてしまう。
時刻は午後八時半、空きっ腹に芳香が沁みる。
「あー、腹へったー。もう歩きたくねー」
けだるい声で呻くと、隣を歩いていた京弥がクスリと笑った。
「家帰ったらすぐに夕飯でしょう。頑張って歩いて下さい。先輩そんなに食べないから、今食べると夕飯が入りませんよ」
「そこまで食細くねーよ。けっこう食うっての。よし、優しい先輩がなんか奢ってやるよ」
「マジですか、ゴチになります」
丁度コンビニの前を通りかかったので、ふらりと中に入る。
ハロウィンが近いからかスイーツの棚にはパンプキンプリンやパンプキンタルトと南瓜商品が目白押しだ。
でも今は甘いものを食べたい気分じゃないし、京弥だってガッツリ系のものが食べたいはずだ。光季はホットスナックのショーケースの前に移動した。
「京弥、なに食う?」
「そうですね、それじゃあ俺はジャンボ肉まんで」
「おー、いいねー。おれはチキンにしよー」
「先輩いつもチキンじゃないすか。本当に好きですね」
「別にいいだろ。うまいんだもん」
京弥の頭に軽くチョップをいれると、光季は肉まんとチキンを注文した。
歩きながらビニール袋をあける。肉まんとチキンからのぼる湯気が白い。
冬の気配が近付いているらしい。肉まんもおいしそうだな。寒い季節になると無性に肉まんが恋しくなる。おれも肉まんにするんだったな。
くだらないことを考えながら歩いていると、不意に京弥が神妙な声で言った。
「水瀬先輩、近頃、ハロウィンの魔物が出るそうです。学校で噂になってるんです」
「ハロウィンの魔物? へえ、中学ではそんなん流行ってんのか。なんだよ、それ」
「黒いマントを羽織った、奇妙な道化師の恰好の怪物です。夜な夜な現れて、塾帰りの子供や夜遊びしていた少年少女を襲って体の一部を切断するそうですよ」
京弥は同じ中学に居た頃から、なにかと人を驚かせようとしてきた。
京弥のやつ、またおれをびっくりさせようとしてるな。簡単に騙されるもんか。
光季はわざと素っ気ない声をだす。
「ふーん。道化師ね。それさ、どこがどうハロウィンと関係あんだよ?」
「さあ。時期じゃないですか?」
「襲われた奴はどうなったんだよ。そもそも、誰か襲われたって奴いるのか?」
「襲われた本人から話を聞いたことはないです。被害者はみんな死んでいるらしいです」
「なんだそりゃ。じゃあさ、なんで襲ってくる奴が道化師の格好してるって知ってんだよ。目撃者でもいたのかよ」
「どうでしょうね。少なくとも俺は目撃談を聞いたことはないですけど」
「じゃあデマだな。誰かがハロウィンにかこつけて流したつまんない噂だろ。でもその話がほんとなら、夜鴉に依頼がくるかもなー」
「そうですね」
光季が怖がらなかったことに悔しがることなく、涼しい顔で京弥が同意した。
可愛くない奴だ。
光季は密かに肩を竦めた。
頬に吹きつける夜風が酷く冷たい。自然と早足になった。
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