夜鴉

都貴

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第五章 音無の村

消失②

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 光季と陽平は施設の三階を探すこととなった。
 三階は客室ばかりだ。

 所長に借りた鍵を使って端から順に部屋を開けていく。

「これ仕事じゃなかったらヤベえよな。完全に変態行為じゃねえか」

 陽平が備え付けのドレッサーを開けながら苦笑交じりに呟いた。
 ベッドの上に放置されたキャミソールと下着から慌てて目を逸らしつつ、光季は不機嫌に返事をする。

「しょうがねーだろ。どこに敵や失踪者が隠れてんのかわかんねーから、手当たりしだい探すしかないんだよ」

 とはいえ、同年代の女子の部屋を探るのは確かに精神的にしんどい行為だ。
 バスルームの扉を開けながら、光季は溜息を吐いた。

 こういう地味な作業はあまり好きではない。
 三階にあるすべての部屋を虱潰しに探すかと思うと、気が遠くなった。

 グループワーク中でツアー客が部屋にいないのは幸いだった。
 居たら何を言われるかわかったものではない。六堂市の人間でさえ、妖怪の存在に懐疑的な人はいる。
 余所の土地の人からして見れば、夜鴉など頭のおかしい集団に見えたって不思議ではない。

 光季は三○七号室のドアノブに手を掛けた。
 他の部屋と違って鍵が掛かっておらず、抵抗なくノブが回った。
 人がいる可能性に気付いていながら、光季は遠慮にドアを開けた。

「なんだよ、オマエら!プライバシー侵害で訴えてやる!」

 不運なことに、さっき畑でつっかかってきた北村の部屋だった。

 ジャージから部屋着に着替えた北村が、光季と陽平を見て目を吊り上げた。
 喧しく吠える犬のようにつっかかってくる北村に、光季も陽平もうんざりした表情を浮かべる。

「亜美って子がいなくなったんだ、ちょっと探させてもらうぜ」

 申し訳程度に許可を取り、勝手に押入れの戸を開ける。
 特に異常はないようだ。

 戸を閉めた光季の肩に、北村が掴みかかってきた。

 昼間は抵抗できずに容易く襟を掴まれてしまったが、今は霊体だ。
 容易く北村の手を避けることができた。
 改めて霊体の運動能力の高さを思い知る。

「くそっ、誰の許可で勝手にオレの部屋を漁ってやがるんだ、コソドロどもめっ」

 なおも飛び掛かってくる北村を軽く躱し、捜索を続けた。

 北村は攻撃しても無駄と悟り、襲ってこなくなった。
 かわりに罵詈雑言をまき散らす。

 その態度を少し腹立たしく思ったが、無視をきめこんだ。
 普通の人間にとって霊体は凶器となる。
 怪我などさせたら、メディアに叩かれるのは間違いない。

 利益追求が必要ない半公共団体であるとはいえ、悪評は望ましくない。
 陽平も淡々と作業を続けている。完全に北村の存在を無視しているようだった。

「ここにもなんにもなかったな。次、行こうぜ陽平」
「おう、そうだな」

 怒り狂う北村に背を向けて、光季と陽平は彼の部屋を出た。
 残りの部屋も一室ずつ丁寧に調べていく。

 しかし、特になんの収穫もないまま三階の捜索が終わってしまった。

 どうしたものかと考えていると、沙奈から通信が入った。

「みんな、外にきて。骨が、人の骨が見つかったの」

 青褪めた顔がたやすく想像できる声だった。光季と陽平は顔を見合わせる。


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