すべてのはじまり

神名代洸

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今出来る事

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今出来ることを考えてみた。
とにかく出来るのは限られている。
力をうまく使えるようにコントロールする事だ。毎日毎日力を使うようにした。
すると徐々に強くなるのが自分でもわかる。
その時が来るその日まで……。


その時はある日突然やってきた。
激しい揺れとともにバキバキという何かが割れるような大きな音が。
ちょうどその時は自宅にいたので家族皆で自宅から逃げることができた。しかし、周りの現状を見てまだ逃げきれていないことを悟った。
道路は裂け地面から水があふれている。
家はまだ傾いていないため、急いで必要なものを持って自宅を後にした。
車は使えない。
歩くしかなかった。
何処へ?
途方にくれる人、叫ぶ人などが大勢いた。電気の配線がバチバチと音を出している箇所も…。
「お父さん、どこに行ったらいいの?」
「避難場所になっていると学校に行くぞ。」
「う、うん。」
私たち家族はみんな固まって歩き出した。
歩きながら周りを見ると、怪我をした人たちもいた。腕を抑えて屈む人も。
放っておきたくはなかったが、今はお父さんについて家族五人逃げることを考えた。
【ごめんなさい。今はあの力はまだ使えない。皆んな助かって。】そう願うしかなかった。
いつもなら10分で着くところを倍時間がかかったのは慎重に進まなくてはならなかったからだ。余震がまだ続いている。
いつまた大きな揺れが起きるのかわからない。
そうこうしているうちにようやく避難場所についた。が、状況は変わらなかった。ここでも戦場のような状態。怪我をした人たちで溢れかえっていた。とりあえずは無事到着したことでホッとしたが、やる事がない。意識を集中して中の人に話しかけた。
【ここで力を使ってもいいの?ううん、使わなきゃダメなんだよね。】
【そう思うなら使うがいい。ただし際限がない人間がやってくるぞ。体が持つかな?】
しばらく考え込んでいたが、意を決して両親に話した。
「何か手伝うことないか聞いてくるよ。」
「なんであんたがいかなかんの?行くなら私でしょ。」と姉が口出ししてきた。
「行ったってたいしてやることないと思うぞ。かえって邪魔にならないか?」
「大丈夫。ね、お母さん。」そう言いながら私は母にウインクして見せた。
母は瞬時に私が何をしようとしたか理解したようで「辞めなさい。」と止めたが私は聞かずにテントへと走っていった。姉も続く。
医師と看護師が治療していたが追いつかない。まさしく戦場だ。そこに一市民である私がやってきたものだからまた怪我人かと思ったようだ。
「トリアージしますから待ってて下さい。」
「あっ、私怪我人じゃないです。手伝いに来ました。」
「でもあなた看護師でもないでしょ?無理よ。」
「大丈夫です。」そう言って怪我人の一人に近付き右手をかざした。
意識を集中させ、痛みを取り除くことから始めた。そして悪い箇所を見つけて治すということを考えた。
どれくらい経っただろう~時間としては20分位、苦しんでいた人から苦痛の顔が消えた。看護師は体調が悪化したのかと思い慌てたが、ゆっくりと起き上がる怪我人を見て驚いた。
この人は腕を骨折していたが、普通に動かしている。医師も驚き、直ぐにレントゲンを撮ることに。戻ってきた看護師が驚いた顔を見せ医師に最新のレントゲン写真を見せた。するとくっついているではないか。怪我をしたと思えないほどしっかりと…。

「あんた今なにしたの?」
姉にそう言われて「治してあげたの。」と答えた。それには医師も看護師も驚き、その場にいた人みんなが私を見た。

「君は一体何者だ?まぁ~いい。それよりも頼めるか?人手が足りない。君のその不思議な力で治してやってくれ。」医師はそう言い、比較的軽い患者を回してきた。
私は言われるまま次々と患者を治していく。姉は不気味がって私から離れていった。
何人治していっただろう…体に疲れがたまってきていた。でも、一人でも多く助けたい気持ちに変わりはなかった。
医師は時々は様子を見に来てくれていたが、私の顔色が徐々に悪くなるのを見てストップをかけた。
「大丈夫かい?真っ青だよ。少し休憩しよう。」
「あっ、はい。」そう言って私は横になれる場所を探した。家族がいる場所を探し、見つけたが、姉は特に不気味なものを見るような目で私を見た。兄も一緒だ。父は複雑な顔をしている。母だけは知っていたので困った顔をしていた。そんな場所でくつろげるかといえば…無理だ。私は別の場所を探しに校舎に入っていった。机を重ねただけの簡易ベットだがないよりはマシと横になった。
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