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2 余興としてこのあたりで終わりにしたかった
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私が隣に来たことを確認した姉は、私の手を強く強く握りしめる。
同学年でもかなり小さい私と、かなり身長が高い姉が並ぶと頭一つ分は差が生じる。
見下ろすように私を睨みつけながら、手を強く握る姉は客観的にどう見えるか。
あまりよくは見られないだろう。
ただ、内心はアンジェ助けて、とアンジェいかないで、とアンジェ可愛い、ぐらいしか思っていないのは長い付き合いからわかっている。
抱き締めたりすればいいと思うのだが、こういう時の感情表現が苦手な人なのだ。
まあ私が分かっていればいいと思うが。
手を握り返すと、握る手の力が少し弱くなった。
「そうやって妹であるアンジェを束縛して虐めて恥ずかしくないのか!!!」
そんな私と姉の姿を見て王太子がヒートアップし始める。
はた目には虐めてるように見えるらしい。まあわからなくもない。
今回に限らず学園における姉の私への反応は全体的に冷たい。
ただそれは王太子の婚約者だからである。
何も支持しなければ、おそらく姉は私をずっと膝にのせて授業を受け続ける。
授業は前学年のものを受けてもいいのだから、これ幸いと私を膝にのせて愛で続けるのは容易に予想できた。
外聞とか倫理観というものは姉にはない。根が優しいからあまり問題にはならないが結構やばい人間なのだ。
そんな予想があったから、私は姉に学園では基本的に話しかけない。
必要最低限、対応に困ってフリーズする姉に助言する程度だ。
その際の姉の反応は「わかっているわ」とか、「いわれるまでもなくてよ」とか、全体的に冷たいものである。
そうしないと妹に良いようにされる姉、とうわさされかねないからである。
反応が冷たいことなど、私がそう指示してるのだから私は何も思わないし、むしろうっとおしくなくて清々するぐらいにしか思っていなかったが、まあ外から見ると虐めてるように見えるのかもしれない。
ただ、それに王太子が嘴を突っ込むのは大問題だ。
貴族の家というのは王家含め皆独立した存在である。
単なる婚約者である現状、リリーア公家の姉妹の内紛に、誰も頼んでいないのに王太子が介入するのは横紙破りはなはだしい。
貴族たちに過剰介入する王として、警戒されるだろうし、そのような王太子が今後貴族たちの支持を集められるかというと非常に怪しい。
要するに現状非常にめんどくさい状況なのだ。
まあ王太子がどうなろうと知ったことではないが、ひとまず卒業式は終わらせて姉と家に帰りたいのだ。
婚約破棄なんてそのあとにいくらでもできる。というかこうなったら継続は無理だろう。
ひとまずこの場だけでもうやむやにして卒業式を無事終わらせないと。
「あらあら、王太子殿下。お酒でもお飲みになられましたか? 私と姉はこの通りとても仲良しですわ。式の邪魔にもなっておりますし、余興はこのあたりにしておきませんか?」
そういいながら私は姉の腕にしがみついた。
これが失敗だった。普段ならこういう失敗はしないのだが、私も相当に焦っていたのだろう。
姉はこういったときに臨機応変というのが非常に苦手だ。そして教条的に私の言ったことを守ろうとする傾向がある。
そして、私の言ったことの一つに、学園内で私にべたべたしてはいけないというものがあった。
これを言っておかないと姉はすべてに優先して私にかまうのが容易に予想できたためだ。さすがにいろいろこれはまずい。最低限学生らしいことはしてほしいためにつけた制約だった。
現状、王太子が意味の分からないことをまくしたてる状況である。
そして教師達がだれ一人助けてくれない孤立無援な現状でもある。
その上で、べたべたしてはいけないはずの妹に抱き着かれた今。
それが一気に合わさり姉は爆発してしまった。
こういう時に応用が効かないのが姉なのに、私は姉との仲良しアピールとしていつものように抱きしめてもらうのを期待してしまったのだ。
私の抱き着いていた左手を大きく振り払ったのだ。
反射的に姉が私を振り払った時点で、私は失敗を悟った。
「へぶっ」
大きく飛ばされた私はそのまま受け身も取れずに地面に投げ出された。
残念ながら運動に関しては姉と違い全く持って苦手なのだ。
全身を地面に打ち付けてかなり痛い。
しかし痛みよりも心が痛かった。
大好きな姉のことなのだからこの程度予想ができたはずであった。
なんたる失敗。後悔で涙がにじんでくる。
姉もこちらを見下すように見ているが、瞳が潤んでいて、やってしまったと焦っているのが私にだけはわかった。
どうしていいかわからずに、内心はおろおろしているだろう。
「なんということを!」
倒れる私に王太子たちが駆け寄る。王太子は率先して私を抱きしめた。
余計面倒なことになりそうなのは確定してしまった。
口の中を多分切ってしまっていて、血の味がする。
本当は治癒魔法なりなんなりで治療したいのだが、役に立たない王太子たちは私を囲んで大騒ぎするだけである。
本当に役に立たなくて困る。
幕引きはまだ遠そうである。
同学年でもかなり小さい私と、かなり身長が高い姉が並ぶと頭一つ分は差が生じる。
見下ろすように私を睨みつけながら、手を強く握る姉は客観的にどう見えるか。
あまりよくは見られないだろう。
ただ、内心はアンジェ助けて、とアンジェいかないで、とアンジェ可愛い、ぐらいしか思っていないのは長い付き合いからわかっている。
抱き締めたりすればいいと思うのだが、こういう時の感情表現が苦手な人なのだ。
まあ私が分かっていればいいと思うが。
手を握り返すと、握る手の力が少し弱くなった。
「そうやって妹であるアンジェを束縛して虐めて恥ずかしくないのか!!!」
そんな私と姉の姿を見て王太子がヒートアップし始める。
はた目には虐めてるように見えるらしい。まあわからなくもない。
今回に限らず学園における姉の私への反応は全体的に冷たい。
ただそれは王太子の婚約者だからである。
何も支持しなければ、おそらく姉は私をずっと膝にのせて授業を受け続ける。
授業は前学年のものを受けてもいいのだから、これ幸いと私を膝にのせて愛で続けるのは容易に予想できた。
外聞とか倫理観というものは姉にはない。根が優しいからあまり問題にはならないが結構やばい人間なのだ。
そんな予想があったから、私は姉に学園では基本的に話しかけない。
必要最低限、対応に困ってフリーズする姉に助言する程度だ。
その際の姉の反応は「わかっているわ」とか、「いわれるまでもなくてよ」とか、全体的に冷たいものである。
そうしないと妹に良いようにされる姉、とうわさされかねないからである。
反応が冷たいことなど、私がそう指示してるのだから私は何も思わないし、むしろうっとおしくなくて清々するぐらいにしか思っていなかったが、まあ外から見ると虐めてるように見えるのかもしれない。
ただ、それに王太子が嘴を突っ込むのは大問題だ。
貴族の家というのは王家含め皆独立した存在である。
単なる婚約者である現状、リリーア公家の姉妹の内紛に、誰も頼んでいないのに王太子が介入するのは横紙破りはなはだしい。
貴族たちに過剰介入する王として、警戒されるだろうし、そのような王太子が今後貴族たちの支持を集められるかというと非常に怪しい。
要するに現状非常にめんどくさい状況なのだ。
まあ王太子がどうなろうと知ったことではないが、ひとまず卒業式は終わらせて姉と家に帰りたいのだ。
婚約破棄なんてそのあとにいくらでもできる。というかこうなったら継続は無理だろう。
ひとまずこの場だけでもうやむやにして卒業式を無事終わらせないと。
「あらあら、王太子殿下。お酒でもお飲みになられましたか? 私と姉はこの通りとても仲良しですわ。式の邪魔にもなっておりますし、余興はこのあたりにしておきませんか?」
そういいながら私は姉の腕にしがみついた。
これが失敗だった。普段ならこういう失敗はしないのだが、私も相当に焦っていたのだろう。
姉はこういったときに臨機応変というのが非常に苦手だ。そして教条的に私の言ったことを守ろうとする傾向がある。
そして、私の言ったことの一つに、学園内で私にべたべたしてはいけないというものがあった。
これを言っておかないと姉はすべてに優先して私にかまうのが容易に予想できたためだ。さすがにいろいろこれはまずい。最低限学生らしいことはしてほしいためにつけた制約だった。
現状、王太子が意味の分からないことをまくしたてる状況である。
そして教師達がだれ一人助けてくれない孤立無援な現状でもある。
その上で、べたべたしてはいけないはずの妹に抱き着かれた今。
それが一気に合わさり姉は爆発してしまった。
こういう時に応用が効かないのが姉なのに、私は姉との仲良しアピールとしていつものように抱きしめてもらうのを期待してしまったのだ。
私の抱き着いていた左手を大きく振り払ったのだ。
反射的に姉が私を振り払った時点で、私は失敗を悟った。
「へぶっ」
大きく飛ばされた私はそのまま受け身も取れずに地面に投げ出された。
残念ながら運動に関しては姉と違い全く持って苦手なのだ。
全身を地面に打ち付けてかなり痛い。
しかし痛みよりも心が痛かった。
大好きな姉のことなのだからこの程度予想ができたはずであった。
なんたる失敗。後悔で涙がにじんでくる。
姉もこちらを見下すように見ているが、瞳が潤んでいて、やってしまったと焦っているのが私にだけはわかった。
どうしていいかわからずに、内心はおろおろしているだろう。
「なんということを!」
倒れる私に王太子たちが駆け寄る。王太子は率先して私を抱きしめた。
余計面倒なことになりそうなのは確定してしまった。
口の中を多分切ってしまっていて、血の味がする。
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