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第三章 黒鉄姫の東方大陸動乱 エフラク戦役

6 終戦条約と王都フリギア

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首都陥落とエフラク公捕縛により、戦争は短期間で終了した。
フルギア王家の仲介で行われた終戦交渉は、こちらに圧倒的に有利に終わった。
高額の賠償金に領土割譲としてイチルに隣接するセヴァン盆地をもらう。
盆地はだだっ広いが水が少なく貧しい地域であり、エフラク公側もあまり抵抗しなかった。
賠償金は一方的な侵略という事で天文学的な数字になっており、エフラク公の個人資産をほぼ全部売却し、さらに足りない分はフルギア王家が公国領を担保に立て替えている形になっている。
こちらとしては支払われればなんでもよいのだが、おそらくエフラク公国は返済できずにフルギア王家に吸収されることになるだろうことが予想できた。

フルギア王都フリギアで締結されたフリギア条約により、イチル領は広がり、規模が大きくなったため領主である母はイチル伯を名乗れるようになった。名前だけだがちょっとかっこいい。
そんな母だが、フルギア王となんかいい雰囲気を醸し出している。
年齢差はかなりある。フルギア王は50を超えているが、母はまだ33だ。
今の年齢ならそこまで奇妙には映らないが、母がフルギア王国に滞在していたのは7歳から14歳までと聞いている。
母はおっとりと、幼馴染で初恋の人なの、とか楽しそうに言うが、母が7歳の時王は25歳だ。
犯罪にしか思えなかった。

まあ、王妃はすでに亡くなっているし、王の子供は3人もいて皆成人している。
王太子も地盤がしっかりしているから、二人がロマンスをし始めても、政治的な問題はないだろう。
イチルの町の領主にしてくれたのもそういった関係もあったからだろうし、適当に生暖かく見守ることにした。

ボクはボクで、三人の王子に囲まれてほっぺをモチモチされ続けた。
ついでに王太子妃にもほっぺをモチモチされた。
王太子妃は、もっと王太子に近づく女をけん制するべきだと思うのだが

「あなたが白餅姫ね! かわいい!!」

とか言いながら存分にこねくり回してきた。
なんだ白餅姫って! と思ったが、マッキナさんがそう言いふらしているらしい。
王太子妃はマッキナさんに自然科学なんかを習っていたことがあるらしく、交流もあるようで、手紙で「白餅にこき使われている」としょっちゅう愚痴っているらしい。
白餅という表現に惹かれるのが半分、師匠をこき使う小娘をいじめるつもりが半分、ぐらいのつもりなのだろう。
お菓子を食べながら、しぶしぶボクは白餅としてこねくり回されるのであった。

あまりにこねくり回されていたら、ボクの不機嫌なのを察知したのか、ベルトルドがボクを抱き上げた。
そうしてベルトルドまでボクのほっぺをこねくり回し始めた。
違う、そうじゃない。こねくり回す相手の問題じゃなくて、こねくり回されるのが面倒なのだ。
しぶしぶおとなしく、ベルトルドの膝の上でこねくり回されていると、王太子がベルトルドについて聞いてきた。

「なんだ、従者じゃないのか」
「ただのおさな「婚約者です」
「ちっ、第二王子か第三王子の婚約者にしようかと思ったのに」
「ちが「私が婚約者です。この白餅は私のです」
「焼くな焼くな。相手がいないなら、と思っていただけだ。奪うつもりはないよ」

なぜかベルトルドが婚約者になっていた。
それをなぜ本人が知らないのか。意味が分からない。
あと白餅っていうな。
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